中古住宅は売れない?2026年5月販売量

中古戸建の査定書を受け取ったあと、「古い家だから、そもそも売れないのでは」と販売開始を迷うことがあります。全国の販売量が下がったという数字まで目に入れば、査定を頼んだこと自体が早かったようにも感じます。
しかし、全国統計が下がったことと、目の前の一戸が売れないことは同じではありません。2026年5月の4つの数字を読み分け、販売を始める前に何を決め、始めたあとに何を数えるかまで整理します。
全国3.5%減と中部1.8%増は、どちらも住宅合計
国土交通省の2026年5月分は、全国合計が前月比3.5%減、中部合計が1.8%増です。ただし、どちらも戸建住宅とマンションを合わせた数字で、中古戸建だけの増減ではありません。
国土交通省は「既存住宅販売量指数 令和8年5月分を公表(試験運用)」を2026年8月31日に公表しました。主要な数値は2010年平均を100とした季節調整値の確報値です。販売戸数そのものではなく、2025年5月との比較でもありません。
| 地域・住宅種別 | 指数 | 前月比 | この数字に含むもの |
|---|---|---|---|
| 全国・合計 | 125.0 | 3.5%減 | 戸建住宅とマンション |
| 中部・合計 | 137.1 | 1.8%増 | 戸建住宅とマンション |
| 全国・戸建住宅 | 124.6 | 3.4%減 | 戸建住宅 |
| 中部・戸建住宅 | 137.8 | 1.1%減 | 戸建住宅 |
出典:国土交通省「既存住宅販売量指数 令和8年5月分」1頁・4頁。中部は長野県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県。数値は季節調整値・確報値で、2026年9月8日に確認しました。
意外なのは、同じ2026年5月でも「中部合計は1.8%増」と「中部の戸建住宅は1.1%減」が同時に成り立つことです。合計だけ見れば地域の動きは上向き、戸建てだけに絞れば前月を下回ります。数字を一つだけ抜き出すと、正反対の印象を作れます。
既存の中古戸建売却相場と2026年5月指数を比べた記事では、指数を査定額へ掛けない理由を説明しています。本記事では、その数字を販売開始の判断へどう使うかに絞ります。
販売量指数では、個別の家が売れる確率は分からない
既存住宅販売量指数は市場全体の取引量を追う資料であり、一戸の成約率、売却価格、販売日数を示す資料ではありません。
指数の基礎は、建物売買を原因とする所有権移転登記です。そのうち個人が取得した住宅から、既存住宅取引ではないものを除いて推計します。別荘、セカンドハウス、投資用物件なども対象に含まれます。
したがって、このPDFだけでは次の4点に答えられません。
- 売り出し中の中古住宅のうち、何割が成約したか
- 静岡県内の中古戸建が何戸売れたか
- 築年、土地面積、接道条件ごとの売れ方に差があるか
- 売り出しから契約まで何日かかったか
公表日は2026年8月31日で、対象月は2026年5月です。販売開始を考える日に見えている競合物件や、直近の問い合わせ状況を表す速報でもありません。市場の大きな動きを後から確かめる資料と位置づけるのが安全です。
言い切ります。全国合計が1か月前より3.5%下がっただけで、「この中古住宅は売れない」と決めるのは早すぎます。数字は売り止めの札ではありません。販売後に何を確認するかを決める材料です。
国土交通省の資料は、増減の原因まで示していません。価格、金利、供給、季節、物件状態のどれが動かしたかを、この1本から断定することもできません。「下がったから需要がない」と理由まで補うと、一次情報を越えた推測になります。
統計の良い点を使い、個別物件への当てはめには線を引く
既存住宅販売量指数の良い点は、登記情報を基に、全国と地方、戸建住宅とマンションを同じ物差しで月ごとに比べられることです。
全国合計だけなら3.5%減で終わるところを、中部合計は1.8%増、戸建住宅は全国3.4%減、中部1.1%減まで分けられます。「全国の中古住宅が下がった」という粗い理解から一段進み、地域と住宅種別を混ぜずに担当者へ質問できます。
近隣の価格を確かめる役割は別の資料が担います。所在地、面積、築年、取引時期が近い事例は、不動産情報ライブラリで成約価格を見る手順で探せます。全国指数は市場の向き、成約事例は価格の根拠と、置き場所を分けます。
そのうえで注文したい点があります。中部は5県の合計で、静岡県単独でも市町単独でもありません。2010年平均を100とする指数137.8は、現在の戸数が137.8戸という意味でも、個別の家が2010年より37.8%高く売れるという意味でもありません。
私は、この指数を査定後の説明に入れるべきか迷います。市場が止まっていないことを示す材料にはなります。一方、数字だけが残れば、「中部は増えているから売れる」「戸建ては減ったから売れない」と都合よく読めてしまいます。使うなら4つの数値と限界を同じ紙に載せる。そこまで書けないなら、個別査定の根拠には使わないほうが誤解がありません。
私はこう考えます。「中古だから」を売れない理由に置くのは、調べる順番が逆です。先に見るのは、近隣で条件の近い成約事例、現在競合している売出し物件、接道・境界・修繕履歴です。家ごとの条件を確認してから、統計を補助線として添えます。
「売れないかも」を、販売開始後の3回の確認へ翻訳する
中古住宅が売れない不安は、販売前、公開14日後、公開30日後の3回に分け、確認する数字と次の行動を決めると販売計画になります。
| 確認日 | 確認するもの | 次に決めること |
|---|---|---|
| 販売前 | 近隣成約事例、競合、接道・境界・修繕履歴 | 売出し価格、見せ方、告知事項 |
| 公開14日後 | 掲載状況、問い合わせ数、内覧予約数 | 写真、説明、公開条件の修正 |
| 公開30日後 | 問い合わせ数、内覧数、申込み、断られた理由 | 価格・条件を維持するか見直すか |
14日と30日は販売計画を作るための目安です。成約を見込める期限ではありません。媒介契約の種類、物件、地域、売主様の期限に応じて確認日は変えます。
問い合わせが0件なら、価格だけでなく、検索条件に表示されているか、写真と説明で状態が伝わるかを確認します。問い合わせはあるのに内覧が0件なら、日程、残置物、駐車、修繕情報など、見に行く前の障壁を聞き取ります。内覧後に申込みが0件なら、競合との価格差と、現地で初めて分かった条件を分けて記録します。
査定書が机上の情報だけなら、販売前に机上査定と訪問査定の違いを確認します。接道、間口、高低差、境界、建物状態が未確認のままでは、反響がない理由を価格だけに寄せやすくなります。
公開後に価格を動かす可能性があるなら、幅より先に日付を置きます。問い合わせと内覧を何日分見て判断するかは、売り出し価格と値下げ時期の決め方で整理しています。販売期間全体は、平均100.1日から3期限を組む方法と切り分けてください。
当社がやらないことは、全国の販売量が1か月下がったことだけを理由に、販売開始を急がせたり止めたりすることです。そのかわり、成約事例、競合、物件固有の条件を確認し、公開14日後と30日後に反響を点検する日を販売計画へ書きます。査定額だけでなく、費用を引いた見込み手取りも同じ表に置きます。
期限を優先するなら、買取や買取保証を比べる場面はあります。当社は買主にならず、買取を率先して行いません。選ぶ場合は、仲介を続ける案と複数の買取条件について、引渡し日、価格、当社への仲介手数料を含む費用、見込み手取りを同じ条件で示します。
今日決めるのは売却ではなく、30日後の確認日
販売開始を迷っている段階で今日決めることは、売却の承諾ではありません。査定を出した担当者へ、販売前の根拠と、公開30日後に確認する項目を1枚で出してもらうことです。
次の5問を、そのまま使えます。
- 査定で使った近隣成約事例は、所在地・築年・面積・接道のどこが似ていますか。
- 同じ価格帯で、現在競合する中古戸建は何件ありますか。
- 広告はどこへ掲載し、売主側ではどう確認できますか。
- 公開14日後と30日後に、問い合わせ・内覧・申込みを何件ずつ報告しますか。
- 反響が想定を下回ったとき、写真・条件・価格のどの順で見直しますか。
たとえば2026年9月8日に公開するなら、中間確認を2026年9月22日、初回判断を2026年10月8日と書きます。数字が想定を下回っても、そこで直ちに売却方法を一つへ絞る必要はありません。原因を分け、維持する条件と変える条件を選び直せます。
「中古住宅は売れないか」という問いに、全国指数だけで答えることはできません。答えを作るのは、販売前の個別条件と、販売後の反響記録です。まだ売ると決めなくても、この2つを確認すれば、販売を始める案と見送る案を同じ材料で比べられます。
出典(2026年9月8日確認・HTTP 200):国土交通省 不動産・建設経済局 不動産市場整備課「既存住宅販売量指数 令和8年5月分を公表(試験運用)」(2026年8月31日公表)1頁・2頁・4頁。統計や取引実務は変わることがあります。個別の価格、税務、登記、相続は、担当の宅地建物取引士、税理士、司法書士など各分野の専門家へご確認ください。
よくある質問
中古住宅は、新築住宅より売れにくいですか?
中古という区分だけでは判断できません。2026年5月の既存住宅販売量指数は取引量の動きで、個別物件の成約率ではありません。近隣の成約事例、現在の競合、接道、境界、築年、修繕履歴を査定書で確認し、公開14日後と30日後の問い合わせ・内覧・申込みを記録して判断します。
中部の販売量が1.8%増なら、静岡県の中古戸建も売れていますか?
1.8%増は、長野・静岡・岐阜・愛知・三重の戸建住宅とマンションを合わせた前月比です。静岡県や戸建て単独の成約率ではありません。同じ資料で中部の戸建住宅は前月比1.1%減でした。地域合計は市場の向きを見る補助線とし、個別判断には近隣成約事例と競合を使います。
販売開始から30日たって反響が0件なら、値下げすべきですか?
直ちに価格だけを下げるとは決めません。広告が公開されているか、検索条件に入るか、写真と説明で状態が伝わるか、内覧日程に障壁がないかを確認します。そのうえで競合との価格差を見ます。販売前に確認日と見直す順番を決め、担当者から問い合わせ数と内覧数を書面で受け取ってください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。