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売り出し価格の決め方|金利3.29%と値下げの時期

この記事の結論売り出し価格を決めるのは売主様です。査定額は出発点にすぎず、上限を決めているのは買主が借りられる額のほう。フラット35の最も多い金利は2026年8月で年3.290%、1年前は年1.870%でした。同じ月々の返済額で借りられる元本は約573万円縮んでいます。上乗せ幅と下げる日を、売り出す前に決めておいてください。

査定書は受け取った。数字も見た。それでも「では、いくらで売り出しましょうか」と聞かれた瞬間に手が止まる。戸建ての売却でつまずきやすいのは、査定額を見たあとのこの場面だと私は考えています。

売り出し価格を決めるのは、不動産会社ではなく売主様です。この記事では、その決め方を、査定額との距離・買主が借りられる額・下げる日の決め方、の3つに分けて整理します。

売り出し価格は、査定額そのままでなくていい

結論を先に書きます。売り出し価格は査定額と同じ金額にしなくてかまいません。査定額は、不動産会社が「この条件なら、この期間で売れると見込む」として出した意見であって、売主様を縛る数字ではありません。

宅地建物取引業法第34条の2第2項に、こう定められています。宅地建物取引業者が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。根拠を示すのは業者側の義務です。ですから「なぜこの金額なのか」を聞くのは、遠慮の要る質問ではありません。

聞き方は2つで足ります。比較に使った成約事例はどれか。その事例と自分の家とで、何を足して何を引いたのか。この2点が説明されれば、査定額がどれくらいの幅を持った数字なのかが見えてきます。逆に、根拠が「相場です」で止まるなら、その数字を出発点にするのは早いと思います。

当社は、売り出し価格を当社の側で決めることをしません。そのかわりにやることを決めています。査定価格の根拠、つまり比較した事例と調整した項目を紙で示す。そのうえで高めに出す案と早さを取る案の2つを並べ、それぞれで手元にいくら残るかを出す。決めるのは売主様で、材料をそろえるのが当社の仕事だと考えています(手取り額で考えるページ)。

上限を決めているのは、買主が借りられる額(2026年8月は年3.290%)

売り出し価格の上限は、売主様の希望額ではなく、買主が住宅ローンでいくら借りられるかで決まります。2026年に入ってから、その額が目に見えて縮みました。

住宅金融支援機構の金利情報によると、【フラット35】で取扱金融機関の最も多い金利は、2026年8月資金受取分で年3.290%です。条件は借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き。同じ条件の1年前、2025年8月分は年1.870%でした。日本経済新聞は2026年8月3日付の記事で、この3.290%が現行制度になった2017年10月以降で最高だと伝えています。

この差を、買主の家計に翻訳します。借入3,000万円・返済期間35年・元利均等返済・ボーナス返済なしで計算すると、年1.870%なら月97,389円、年3.290%なら月120,365円。毎月の返済額で22,976円、35年間の総返済額では約965万円の差になります。

売り出し価格を考えるうえでは、こちらの見方のほうが直接効きます。月97,389円という同じ返済額で借りられる元本は、年3.290%だと約2,427万円です。3,000万円との差は約573万円。1年前と同じ月々の負担で買える家が、1年で約573万円ぶん小さくなったという計算になります。

※ 試算の前提:借入額3,000万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし。上記の金利をそのまま当てはめた概算で、諸費用・税金・火災保険料・繰上返済は含みません。実際に借りられる額は、買主の収入・ほかの借入・金融機関の審査で変わります。金利は2026年8月23日に確認した数値です。

ここからは私の考えです。この573万円は、売主様の家の値打ちが下がったという話ではありません。買える人の財布のほうが小さくなったという話です。ただ、売り出し価格を決める場面では、どちらも同じ形で目の前に現れます。1年前の成約事例をそのまま根拠に価格を置くと、その事例を買った人と同じ収入の買主が、今年は同じ金額を出せない。私は、査定額の紙と一緒にこの借入可能額の試算を並べてお見せするのがよいと考えています。

上乗せ幅は「1回で下げられる幅」から逆算する

査定額に少し上乗せして売り出すこと自体は、珍しい選択ではありません。決めどころは幅のほうです。当社が幅を見るときの基準は、上乗せ額そのものではなく、その幅を1回の値下げで動かしたときに買主の見え方が変わるかどうかです。

買主は物件を価格帯で探します。2,000万円、2,500万円といったきりのいい数字が、探すときの区切りになる。上乗せしたせいでこの区切りを1つまたいでしまうと、本来なら条件に合っていた買主の目に入らないまま時間が過ぎます。反対に、値下げのときに区切りを1つまたげる幅を残しておけば、1回の見直しで見てくれる層が入れ替わります。

正直に書くと、何%上乗せするのが正解かは私にも言えません。家の状態も、近所で同時に売りに出ている物件も、その時期に動いている買主の数も違います。きりのいい数字が区切りになるというのも、私が現場で感じていることであって、統計で裏づけた話ではありません。私が言えるのは、上乗せ幅を気持ちの数字で決めず、下げるときの幅から逆算して決めておくと、あとで迷いにくい、という程度のことです。

値下げの時期は、売り出す前に日付で決めておく

値下げの判断は、反響が止まってから考え始めると遅くなります。売り出す前に「いつ、何を見て、どうするか」を決めておくほうが、結果として下げ幅は小さく収まります。

区切りは制度の側にも用意されています。宅地建物取引業法第34条の2第3項では、専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができないと定められています。更新できますが、更新のときから3か月までです。同条第9項では、業務の処理状況を報告する義務が業者側にあります。専任媒介なら2週間に1回以上。依頼者が自分で見つけた相手とも契約できない特約の付いた専属専任媒介なら、1週間に1回以上です。

報告は2週間ごとに来て、契約の見直しは3か月で来る。この2つの周期に自分の判断を先に載せておけば、値下げの時期は自然に決まります。当社は販売計画に、売り出し日・反響を数える日・価格を見直す日・最終判断の日を、日付で書き込んでからお渡ししています。期限から逆算する考え方は売却の流れで説明しているとおりです。

見る数字は、問い合わせの数と内覧の数を分けます。問い合わせが来ないなら、価格か、写真や間取りなど情報の出し方の問題。内覧まで来て決まらないなら、物の見え方か条件の問題。同じ「売れない」でも打つ手が変わるので、まとめて数えないほうがいいと考えています。

「買い取ります」と言われたときと、今日できること

売り出してしばらく経つと、買取の提案が届くことがあります。当社は買取・買取保証を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そのかわり、買取をお選びになる場合は、複数社から見積もりを取り、比べられる形にしてお出しします。このとき当社は媒介として動くため仲介手数料が発生しますので、その費用も含めた手取り額でご説明します。提案を受けた時点で確認しておきたいことは「買い取ります」と言われたら、先に確認したい3つのことにまとめました。

今日できることを1つ挙げるなら、査定書を出してきて、比較に使われた成約事例の所在・面積・築年・成約時期の4つを確認することです。成約時期が1年以上前の事例が中心になっている場合、その価格は年1.870%で買えた買主が支えた数字です。今の年3.290%と同じ土俵ではありません。担当者に「この事例より新しいものはありますか」と聞くところから始められます。

もう1つ、売り出す前の段取りとして、登記簿の住所と氏名が今の住民票と合っているかも見ておいてください。決済までの日程が読みやすくなります(住所変更登記が2026年4月から義務に|売る前の段取り)。価格の話と段取りの話は別々に進められるので、価格を決めきれない期間も手は止まりません。

今日のうちに売り出し価格を決める必要はありません。決めきれないのは、材料がまだそろっていないからです。査定額の根拠を聞き、買主がいくら借りられるかを一度計算し、下げるときの幅を先に決めておく。この3つがそろったところで決めれば十分です。決めるための材料が1つ増えた、というのが今日の成果でかまいません。査定と一緒にこの試算もお作りしますので、かんたん入力のフォームからお声がけください。売却をお約束いただく必要はありません。

※ 出典(いずれも2026年8月23日確認):住宅金融支援機構「最新の金利情報」(2026年8月資金受取分)/同ページの2025年8月分(インターネットアーカイブ保存版・2025年8月9日取得)/住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」/日本経済新聞2026年8月3日「フラット35、8月最低金利3.290%に上昇 現行制度で最高」/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2。金利と制度は変わることがあります。返済額の試算は概算であり、融資の可否や借入可能額を示すものではありません。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。

よくある質問

査定額より高い価格で売り出してもいいですか?

売り出し価格を決めるのは売主様ですので、査定額より高く出すことはできます。ただし上乗せ幅は、あとで1回値下げしたときに買主の見え方が変わる幅にしておくほうが動きやすくなります。当社は高めに出す案と早さを取る案を並べ、それぞれで手元に残る額を出したうえで、売主様に選んでいただいています。

値下げはどのタイミングで考えるものですか?

売り出す前に日付で決めておくことをおすすめします。宅地建物取引業法では専任媒介契約の有効期間は3か月を超えられず、業務の処理状況の報告も専任媒介なら2週間に1回以上と定められています。この2週間と3か月の区切りに、反響を数える日と価格を見直す日をあらかじめ載せておくと判断が遅れにくくなります。

金利が上がると、売り出し価格は下げるしかないのですか?

下げる以外の手もあります。金利上昇で縮むのは買主の借入可能額ですので、まず買主層と情報の出し方を見直す余地があります。そのうえで価格を動かす場合も、幅と時期を先に決めておけば下げ幅は小さく収まりやすくなります。当社は問い合わせ数と内覧数を分けて数え、どちらの問題かを切り分けてからご提案します。

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富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役・宅地建物取引士の大石浩之

文責:大石 浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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