相続登記の登録免許税|土地の持分で見る100万円の境目

固定資産税の明細を開くと、売るか迷っている土地の価格は240万円。登記事項証明書には、亡くなったお父さまの名前の横に「持分3分の1」とあります。この二つの数字があれば、名義を移す費用のうち、土地の登録免許税がかかるかを見積もれます。
ここでは、父が持っていた3分の1だけを子が一人で相続し、その持分を子に移す例で考えます。他の共有者の持分は今回の登記では動きません。土地は一筆、個人が相続し、2027年3月31日までに登記を受ける前提です。
明細から拾うのは、その土地一筆の「価格」
最初に見るのは、固定資産課税台帳に登録された土地の価格です。納税通知書に同封された課税明細書で、売却を考えている土地の地番を探し、その行の「価格」「評価額」などの欄を確認します。欄名だけで内容が分からなければ、地番を伝えて市町村の固定資産税の担当に尋ねてください。
同じ紙に固定資産税の課税標準額や年税額が載っていても、ここで使う数字とは役割が違います。売却査定書にある金額も別です。売却査定で示す価格と、登記の税をいくらとして計算するかは、同じ土地についての違う質問です。
共有地では、明細の金額が土地全体のものか、すでに持分を反映したものかも確認します。後者にもう一度3分の1を掛けると、税額の見積もりを小さくしてしまいます。価格の登録自体がない場合は、管轄の登記所に認定価額を確認してください。仮の査定額を入れて計算する必要はありません。
土地と家屋が同じ紙に並んでいたら、計算用のメモには地番と土地の価格だけを転記します。家屋の価格は別の行に残しておきます。書類の所在や名義から確かめたい方は、登記事項証明書の取り方も参照してください。
父の持分だけを移すなら、240万円×3分の1=80万円
土地の持分を相続で取得する場合、免税判定に使う価額は「土地全体の価額×取得する持分」です。津地方法務局の免税案内にもこの計算方法が明記されています。上の例では父の持分全部を移しても、土地全体から見れば移るのは3分の1です。
計算すると240万円×1/3=80万円。判定額が100万円以下なので、この例の土地持分の相続登記にかかる登録免許税は0円です。80万円は税額でも、子がその持分を売ったときの手取りでもありません。免税の条件と照合するための数字です。
手元で再現するなら、紙に「土地全体 240万円」「父の持分 1/3」「今回、子へ移す持分 土地全体の1/3」と書いてみてください。二番目と三番目が一致するのは、父の持分を丸ごと子一人が取得するという例だからです。相続人が三人いるというだけで、三番目の欄に1/3とは書けません。
一方、父が土地の全部を所有し、それを子一人が相続するなら、同じ240万円の土地でも判定額は240万円です。土地の場所も広さも同じで、登記によって動く権利の範囲が違います。共有者の数や売却代金の分け方から逆算せず、登記で誰から誰へどの持分が移るかを先に決めます。
判定額がちょうど100万円のとき、超えたとき
条件は「100万円以下」です。父の持分が同じ3分の1でも、土地全体の価額が300万円なら判定額は100万円ちょうどで、この免税措置の対象です。全体の価額が330万円なら110万円になり、この措置の対象から外れます。
後者の例で、ほかの特例がなく、一筆の土地の持分を相続で移すとします。本則税率は0.4%なので、110万円×0.004=4,400円です。100万円を引いた残りの10万円に税率を掛ける仕組みではありません。100万円は、税額計算の前に免税かどうかを分ける線です。
この計算をすると「免税が使えず100万円損する」という読み違いも解けます。家族への説明なら「この例で用意する登録免許税は4,400円」と伝えるほうが、手元から出る金額が分かります。建物があるとき、数筆の土地や複数の相続人を一緒に登記するときは、この一筆の例をそのまま見積書全体に広げず、申請内容を司法書士に見てもらってください。
見積書では、土地の税・建物の税・報酬を別の行に
土地持分の税が0円になったとき、売主が次に確かめたいのは、見積書のどの行にその結果が反映されたかです。今回扱っているのは土地に関する措置です。土地の上の家も相続で名義を移すなら、建物分の登録免許税は切り分けて計算します。
たとえば、土地は最初の80万円の例のままで、別に評価額200万円の建物全部を相続するとします。建物の所有権を相続で移す本則税率は0.4%ですから、この前提で建物分は8,000円です。土地分が0円でも、建物分と合わせると8,000円になります。証明書の取得費や司法書士へ依頼する場合の報酬は、この試算に含めていません。
私なら、見積書に「登記費用一式」とだけあったら、その総額を手取り表に写す前に一度手を止めます。どの土地をいくらで計算したか。建物の税はいくらで、依頼した仕事の報酬はいくらか。私が知りたいのは、売ると決める前に財布から出ていく金額です。土地の一行が0円でも、家族に「名義変更は無料だよ」とは言えません。
相談時には土地と家屋を分けた明細、持分の分かる登記事項証明書、相続で誰がどの権利を取得するか分かる資料をそろえます。「父の持分だけを移す場合で見積もっていますか」とひと言添えれば、相手も同じ条件で答えられます。資料が足りない箇所は空欄にして、概算と確定額を区別しておきましょう。
2027年3月31日は登記の免税期限。売り出す日は別に決める
期限の対象は相続による土地の登記です。売主がその日までに買い手を見つけて売買代金を受け取ることは、この免税の条件に含まれていません。相続登記そのものの申請義務とご自身の期限は、相続登記の義務化と申請期限で分けて確認できます。
免税のうちに登記を進めるかと、土地をいくらでいつ売り出すか。私は、家族でこの二つを同じ日に決める必要はないと考えます。当社は買取を率先して行いません。売却を考える段階では、登記の見積額と仲介で売るための費用を分け、査定から引渡しまでの流れに沿って、いつ何を支払うかを売主様と整理します。
出典(2026年11月5日確認):津地方法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」(少額の土地・注1)、国税庁「登録免許税の税額表」(土地の所有権の移転登記・建物の登記)、法務省「不動産を相続した方へ」。実際の持分や申請内容によって判断が変わるため、制度や税率は改正されることがあります。個別の登記は司法書士または管轄の法務局に確認してください。
よくある質問
売却査定が100万円を超えたら免税の対象外ですか。
査定額では判断できません。固定資産課税台帳に登録された価格がある場合、原則としてその価格を使います。売却査定書しか手元にないときは、まず地番を確認し、課税明細書などから土地全体の価格を調べましょう。持分取得の場合は、その価格に今回取得する持分を掛けて判定します。
相続人が三人なら、土地全体の価格を三等分しますか。
人数だけで三等分すると、登記で移る持分と合わないことがあります。記事の計算は、もともと父が土地全体の3分の1を持ち、その持分を子が一人で相続する前提です。被相続人の持分と今回登記する持分を資料で確認し、複数人で取得する場合は申請内容を司法書士に伝えて見積もってください。
土地が免税なら、家を含めた名義変更の見積額も0円ですか。
この免税措置の対象は土地です。家の名義も移すなら建物分の登録免許税を別に計算し、証明書などの実費や司法書士に依頼した場合の報酬も分けて見積もります。土地が免税と分かった段階では、見積書の「土地の登録免許税」の行だけに0円を入れると、ほかの支出を見落とさずに済みます。
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文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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