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売れない土地は国庫帰属か売却か|取下げ1102件の中身

記事内容をもとに生成したイメージ:売れない土地は国庫帰属か売却か|取下げ1102件の中身
記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。
この記事の結論相続した土地は、先に売れるかどうかを試してから国庫帰属を考える順番をおすすめします。法務省の統計(令和8年7月31日現在)では、取下げ1,102件のうち571件が「有効活用の見込みが生じた」ことを理由としています。審査手数料は一筆14,000円で、取下げても返還されません。標準処理期間は8か月です。

相続した山林や畑を前に、「これは売れないから、国に引き取ってもらうしかない」とおっしゃる方がいます。相続土地国庫帰属制度のことです。2023年(令和5年)4月27日に始まり、法務省が件数を公表しています。

この記事では、その公表数字を売主様の側に翻訳して、国庫帰属と売却のどちらを先に試すのかを、費用と時間の順に並べます。制度の是非ではなく、順番の話です。

令和8年7月31日現在、申請5,863件・帰属3,008件

法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」によると、令和8年7月31日現在の累計は、申請5,863件、国庫帰属3,008件、却下85件、不承認96件、取下げ1,102件です(ページの更新日は令和8年8月21日。2026年8月25日に確認しました)。

申請の地目別は、田・畑2,278件、宅地2,040件、山林893件、その他652件。帰属した土地の区分別は、宅地1,115件、農用地964件、森林199件、その他730件です。申請では田・畑が最も多く、帰属では宅地が最も多い、という並びになっています。

帰属3,008件を申請5,863件で割ると51.3%になりますが、これを合格率として読むことはできません。申請から結論が出るまでには時間がかかり、7月31日の時点で審査の途中にある件も申請件数に入っているからです。帰属・却下・不承認・取下げを足すと4,291件で、申請との差は1,572件。この1,572件が審査中などにあたる計算になります(当社の引き算による概算です)。

山林の申請893件に対して、森林として帰属したのは199件。ただし申請側の地目区分(山林)と帰属側の区分(森林)は集計の切り口が違い、申請と結論の間には時間差もあります。差がどこで生じているかは、公表されている統計からは読み取れませんでした。

先に良い点を書いておきます。相続した土地を手放す正面の窓口が国にできたこと自体を、当社は前向きに見ています。買い手が見つからない土地に、市場の外側の出口が1本増えました。そのうえで、使う順番には注文があります。

取下げ1,102件のうち571件は「有効活用の見込みが生じた」

相続土地国庫帰属制度でいちばん実務的な数字は、取下げの理由の内訳です。法務省の同じ統計によると、取下げ1,102件の理由は、有効活用の見込みが生じた571件、却下・不承認であることが判明392件、その他139件となっています。

571件は取下げ全体のおよそ52%。過半数が「他に使い道か売り先が見つかったので、やめた」という理由です。

私はこの571件を、制度の評価ではなく順番の問題として読んでいます。申請して結論を待っている間に、売り先や使い道が見つかった方が半分いた、ということです。だとすれば、先に売れるかどうかを試してから申請したほうが、順番として無駄が少ない。当社はそう考えて案内しています。国に引き取ってもらう話は、市場に出して反応を見たあとでも消えません。

もう一方の392件(およそ36%)は、申請したあとで要件に当たらないと分かった件です。審査手数料は土地一筆当たり14,000円で、法務省のよくある質問(Q&A)は、取下げ・却下・不承認のいずれの場合も返還されないとしています。1件が1筆だったと仮定してざっくり計算すると、取下げ1,102件で約1,543万円。戻ってこないお金です。

※ 1,543万円は「1件=1筆」と置いた概算です。実際には複数筆をまとめた申請もあるため、この額より大きくなる可能性があります。

建物と境界で、入口の前に落ちる

国庫帰属で断られる条件は、売却で手が止まる条件とかなり重なります。法務省が挙げる却下要件は、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定された土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地です。

不承認要件のほうは、一定の勾配・高さの崖があって管理に過分な費用・労力がかかる土地、管理や処分を阻害する有体物が地上にある土地、除去しなければいけない有体物が地下にある土地、隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地などです。

実家を相続した方が最初につまずくのは、たいてい1つ目です。建物があるままでは申請できません。つまり国庫帰属を選ぶなら、解体費を先に出すことになります。磐田市には空き家の解体に対する補助がありますが、対象になる条件は絞られています(磐田市の空き家解体補助金|上限50万円と外れやすい条件)。

境界も同じです。境界が明らかでなければ国は受け取りませんし、買主も同じところで止まります。私は査定額を先に出す前に、道路と境界と名義を見ます。どちらの出口を選ぶにしても、確認する場所は変わりません。

20万4千円と8か月。売却と並べて見る

国庫帰属には、承認されたあとに負担金がかかります。法務省のQ&Aでは20万円が基本で、市街化区域等の宅地・農地と森林は、土地の面積に応じて20万円以上になります。審査手数料14,000円と合わせると、山林1筆を手放すのに最低でも204,000円の持ち出しです。標準処理期間は8か月とされ、事案によってはこれを超えることもあると案内されています。

負担金の考え方は、法務省の説明では「国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額」です。20万円を10年で割れば、年2万円。国はその土地を10年持つ費用を年2万円と見積もって、前払いを求めている、という構造になります。持ち続ける側から見れば、毎年出ていく固定資産税と草刈りの費用を、10年分まとめて払って終わりにする選択です。

一方、売却で決まれば、お金は出ていくのではなく入ってきます。ただし当社の取り分である仲介手数料と、測量や残置物処分の実費はかかります。当社は、その物件でいくらの手数料になるのかを、媒介契約を結ぶ前に金額で示します。手数料を払ってでも仲介で売る意味が薄いと当社が判断した場合は、そう申し上げます。仲介と買取で手元に残る額の差は、前提つきの試算を手取り額で考えるページに置いています。

山林や農地が何筆も出てきた場合、まとめて1つの出口に流し込もうとすると、相手がいなくなります。地目ごとに出口を分けたほうが早いことは、森町の空き家を売る|仲介・空き家バンク・農地の分け方に書きました。森町(周智郡)の不動産売却のページには、地区ごとの目安と町の制度へのリンクをまとめています。なお国庫帰属では、隣接する2筆以上を1つの土地とみなして負担金を算定する申出もできますが、隣接する土地が同じ種目である場合に限られます。

当社がやらないこと、そのかわりにやること

当社は買取・買取保証を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そして、国庫帰属の承認申請書の作成代行も行いません。法務省が示すとおり、業務として申請書等の作成の代行ができるのは、弁護士、司法書士、行政書士に限られるからです。「うちが全部やります」とは申し上げられません。

そのかわりにやることは決めています。相続した土地を筆ごとに、地目・面積・接道・境界標の有無・農業振興地域の区分で一覧にします。そのうえで、市場に出して反応を見る価値がある筆と、出しても相手が見つかりにくい筆を分けてお出しします。後者について国庫帰属を検討されるなら、負担金と解体費の見込みを同じ紙に並べます。判断の材料をそろえるところまでが当社の仕事です。

ただ、この順番がいつでも正しいとは、私も思っていません。承認まで8か月かかる制度なので、先に売り出しに数か月使えば、その分だけ全体の着地が遅れます。ご高齢の相続人にとって、時間そのものが負担になる場合がある。そこは私も迷うところで、ご事情を聞いてから順番を決めています。

今日できる確認を1つ挙げます。固定資産税の課税明細書を出して、筆ごとの地目と面積、建物の有無を書き出してください。これは売却の相談でも、国庫帰属の相談でも、最初に必要になる同じ1枚です。すでに「買います」と声がかかっている土地がある方も、まずこの1枚をそろえてから、提案の中身を確かめてください。

今日のうちに結論を出す必要はありません。筆ごとの地目と面積、建物の有無、境界標の有無。この3つが紙になっていれば、半年後にどちらを選ぶにしても効いてきます。手取りの試算をご希望でしたらかんたん入力のフォームからどうぞ。売却をお約束いただく必要はありません。相続登記が済んでいない場合の段取り、申請の可否の最終的な判断、譲渡所得の扱いは、司法書士・税理士など各分野の専門家にご確認ください。

※ 出典(いずれも2026年8月25日確認・HTTP 200):法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年7月31日現在。ページ更新日 令和8年8月21日)/法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」/法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」/法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」/法務省「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」。制度・要件・金額は変わることがあります。

よくある質問

相続した山林でも、国庫帰属は使えますか?

対象になり得ます。法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」では、令和8年7月31日現在で山林の申請が893件、森林として国庫帰属したのが199件です(2026年8月25日確認)。ただし境界が明らかでない土地や、隣接地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地は対象外とされています。森林の負担金は面積に応じて20万円以上です。申請できるかどうかの判断は、管轄の法務局にご確認ください。

売りに出しながら、国庫帰属の申請も同時に進められますか?

法務省のQ&Aは、売却する相手が見つかった場合は売却前に法務局の担当者へ連絡し、承認申請を取り下げることになる、と案内しています。取下げの場合も審査手数料は返還されません。当社は、一筆14,000円を先に払うより、市場の反応を見てから申請する順番をご提案しています。時間の制約があって並行して進めたいご事情なら、そこも含めてご相談ください。

建物が建ったままでも申請できますか?

できません。法務省は「建物がある土地」を却下要件に挙げています。国庫帰属を選ぶなら、解体費を売主様が先に負担することになります。磐田市には空き家の解体に対する補助制度がありますが、対象になる条件は絞られています。当社は、解体してから手放す場合と、建物を残したまま売った場合の手取りを、同じ紙に並べてお出しします。

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富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役・宅地建物取引士の大石浩之

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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