火災保険の水災料率は地域で5区分|売る家の等地確認

古い戸建てを売りに出すとき、内覧で「ここ、水に浸かりますか」と聞かれることがあります。川から離れていますよ、では答えになりません。買主はその先の、火災保険がいくらになるかまで見ています。
火災保険の水災に関する料率は、2023年6月の改定で全国一律をやめ、建物のある市区町村ごとに5つの区分に分かれました。この記事では、その5区分(水災等地)の中身と、磐田市周辺が何等地なのか、売主が売り出す前に自分で確認できることを整理します。
水災の料率は、2023年6月に全国一律をやめた
火災保険の水災に関する料率は、建物が所在する市区町村ごとに1等地から5等地までの5区分に分かれています。それ以前は、全国どこでも同じ料率でした。
変えたのは損害保険料率算出機構です。同機構は2023年6月21日に火災保険参考純率の改定を金融庁長官へ届け出て、同年6月28日に、損害保険料率算出団体に関する法律第8条に適合しているとの通知を受領しています。内容は2点。住宅総合保険の参考純率を全国平均で13.0%引き上げること、そして「水災に関する料率を地域のリスクに応じて5区分に細分化します」(同機構「火災保険参考純率改定のご案内」)ということです。細分化する単位は市区町村別と明記されています。
参考純率は、各社が保険料を出すときの土台になる数値で、契約者が払う保険料そのものではありません。同機構の資料にも「販売時期は保険会社が決定します。」とあります。実際には大手各社が2024年10月1日以降を始期とする契約から反映しています(各社の告知による)。
※ 2026年8月27日に同機構の火災保険参考純率のページで改定履歴を確認したところ、2023年6月21日の届出が最新でした。今の水災等地は、そのときの区分が使われています。
磐田市・袋井市・森町は5等地、掛川市は3等地
自分の市町が何等地かは、損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で調べられます。都道府県と市区町村を選ぶだけです。2026年8月27日に当社の対応エリアを引いた結果が次の表です。
| 市町 | 水災等地(5段階) |
|---|---|
| 磐田市 | 5等地(最も高い区分) |
| 袋井市 | 5等地 |
| 周智郡森町 | 5等地 |
| 掛川市 | 3等地 |
※ 2026年8月27日に「水災等地検索」で確認した値です。同ページには「検索結果は、当機構で算出した参考純率上の住宅物件における水災等地になります。各保険会社の取り扱いは異なる場合がございます」との注記があり、「基礎データの更新状況等を踏まえ、適宜見直しを行います」とも書かれています。区分は将来変わることがあります。
この並びは、地元で商売をしている私にも意外でした。磐田市・袋井市・森町が、5段階のうち最も高い区分でそろう。すぐ東の掛川市は3等地です。市の境をまたいだだけで2段階違います。
ただし5等地は、「この市はいずれ浸水する」という意味ではありません。同機構は水災等地について、こう説明しています。「水災等地は自身の居住地の相対的な水災リスクレベルを表したものであるため、水災リスクがないということではありません。どの等地でも水害は発生しています。」全国の市区町村を相対的に並べたときの位置であって、個別の家の危険度ではありません。
いくら違うのか、木造戸建ての数字に割り戻す
等地の差を金額で見ます。損害保険料率算出機構は改定の届出とあわせて、都道府県別・等地別の改定率の例を公表しています。木造戸建てが該当するH構造、静岡県の数値は次のとおりです。
| 静岡県・H構造(木造など) | 参考純率の改定率 |
|---|---|
| 水災料率を細分化しない場合 | +9.1% |
| 1等地 | +2.1% |
| 2等地 | +6.0% |
| 3等地(掛川市) | +10.5% |
| 4等地 | +15.4% |
| 5等地(磐田市・袋井市・森町) | +20.8% |
※ 同機構「2023年6月届出 火災保険参考純率改定 都道府県別等地別の改定率の例(H構造)」より(2026年8月27日確認)。前提は「保険金額:建物2,000万円 家財1,000万円、築10年以上の例」です。同資料の数値は参考純率における改定率であり、契約する保険会社の商品の改定率とは異なります。
不動産屋の癖で、これを1軒あたりの金額に割り戻します。この例では、改定前の年間保険料が5万円だった契約を仮に置きます。1等地なら51,050円、5等地なら60,400円。差は年9,350円です。10年で約9万4千円、35年で約33万円になります。
比べる相手を置くと、金額の位置がはっきりします。当社が売り出し価格の決め方|金利3.29%と値下げの時期で書いたとおり、住宅ローン金利が1年で年1.870%から年3.290%へ上がったことで、同じ月々の負担で買主が借りられる元本は約573万円縮みました。等地の差が35年で約33万円、金利1年ぶんの差が573万円。桁が2つ違います。
ここからは私の考えです。水災等地は、売り出し価格を下げる理由になりません。買主が負担する金額としては、価格を数十万円動かすほどの差ではないからです。ただ、金額ではなく気持ちのほうには効きます。「磐田市は5等地」という一語だけを検索で拾った買主が、説明のないまま内覧に来る。効くのは差額ではなく、数字だけが先に届くことのほうだと私は見ています。だから当社は、売り出しの資料に等地を先に書きます。
等地とハザードマップは別物。売り出す前に見ておける3つ
水災等地は、洪水ハザードマップの色分けを写したものではありません。ここを取り違えると、売主も買主も判断を誤ります。
同機構によると、等地の設定では外水氾濫だけでなく、内水氾濫や土砂災害などの水災リスクも含めて評価しています。そのため洪水ハザードマップのような一般のリスク情報とは一致しない場合があります。同機構が示す水災被害額の構成比は、川があふれる外水氾濫が56.2%、それ以外が43.8%(国土交通省の水害統計、2011年から2020年の合計)。被害額の約4割は、洪水ハザードマップだけを見ても出てこない水災です。
正直に書くと、市区町村単位という区切りの粗さは、私にはまだ腑に落ちていません。磐田市には北側に磐田原台地があり、西端を天竜川が流れ、南は遠州灘に面しています。台地の上の家と低地の家とでは、水の来方がまるで違う。それでも等地は市全体で1つにまとまります。かといって、細かくすれば公平になるとも言い切れません。細かくするほど、同じ町内で保険料に差がつく話になるからです。どちらがよいのか、私はまだ答えを持っていません。
だから売主にできる確認は3つあります。どれも費用をかけずに、自分の手でできます。
1つ目は等地です。「水災等地検索」で都道府県と市区町村を選ぶと、1等地から5等地のどれかが出ます。磐田市周辺は上の表のとおりで、調べるのに1分もかかりません。
2つ目はハザードマップです。国土交通省の「重ねるハザードマップ」に住所を入れると、洪水・内水・土砂災害・高潮の想定を1つの画面に重ねて見られます。売る家の位置に色が付いているか、付いているなら想定の浸水深は何メートルか。この2点をメモしておくだけで、内覧の質問にその場で答えられます。
洪水・内水・高潮の3種類と、売主が伝える過去の被害履歴の分け方は、不動産売却のハザードマップ告知|防災週間に確認する3図に整理しました。
3つ目は保険証券です。今の火災保険に水災の補償を付けているか、いないか。付けていない場合、その理由が「台地の上だから外した」なのか「勧められなかっただけ」なのかで、買主への説明の仕方が変わります。
先に見ておく理由は、制度の側にもあります。国土交通省は2020年7月17日に宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令を公布し、同年8月28日から、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を説明することが重要事項説明の義務になりました。市町村が配る最新のハザードマップを示し、物件のおおよその位置を指す形です。買主は契約前にその図面を見ます。
5等地の地域で売るとき、当社がやらないこと
水災リスクを理由に買取をすすめる、という進め方を当社はしません。当社は買取・買取保証を率先して行いませんし、当社が買主になることもありません。「磐田市は5等地だから仲介では時間がかかる、うちが買います」という話の運び方をしない、ということです。
そのかわりにやることを決めています。査定の段階で、水災等地・ハザードマップ上の位置・想定浸水深を紙にしてお渡しする。売り出しの資料にも、隠さずその情報を載せる。買主から質問が来る前に出しておけば、あとから値引き交渉の材料として持ち出される展開を減らせます。伏せて売り出しても、重要事項説明でハザードマップは示されます。伏せて得することは何もありません。
それでも買取をお選びになる場合は、複数社から見積もりを取り、比べられる形にしてお出しします。このとき当社は媒介として動きますので、仲介手数料が発生します。その費用も引いた手取り額でご説明します。
今日のうちに売るかどうかを決める必要はありません。等地を1回引いて、重ねるハザードマップで自宅の位置を見て、保険証券の水災の欄を確認する。この3つは、売っても売らなくても手元に残る材料です。判断の材料が1つ増えた、というのが今日の成果でかまいません。査定と一緒にこの資料もお作りしますので、かんたん入力のフォームからお声がけください。売却をお約束いただく必要はありません。
※ 出典(いずれも2026年8月27日確認):損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」(2023年6月21日金融庁長官への届出、同年6月28日適合性審査結果通知受領)/同「(別紙)水災料率の細分化について」/同「水災等地検索」/同「都道府県別等地別の改定率の例(H構造)」/国土交通省2020年7月17日報道発表「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」/国土交通省「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」。料率・区分・各社の取扱いは変わることがあります。保険料の試算は仮の前提を置いた概算で、個別の契約の保険料を示すものではありません。保険の内容は保険会社または代理店に、税務・登記の個別のご判断は税理士・司法書士など専門家にご確認ください。
売却時の保険解約手続きについては、家売却の火災保険解約と引渡し前の3確認もあわせてご確認ください。
よくある質問
売る家の水災等地は、どこで調べられますか?
損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で、都道府県と市区町村を選ぶと1等地から5等地のいずれかが表示されます(2026年8月27日確認)。表示されるのは参考純率上の等地で、実際の契約で使われる区分や保険料は保険会社ごとに異なる場合があります。当社は査定のときに、この等地と洪水ハザードマップ上の位置をあわせてお伝えしています。
磐田市は5等地ですが、家は売れにくくなりますか?
一律に売れにくくなるとは言えません。損害保険料率算出機構が公表した静岡県・H構造(木造など)の改定率の例では、1等地が+2.1%、5等地が+20.8%です。改定前の年間保険料5万円を仮に置くと、差は年9,350円ほど。価格を大きく動かす金額ではありません。効くのは金額より、説明のないまま数字だけが買主に届くことだと私は考えています。
水害のことを、買主に自分から伝える必要がありますか?
伝えておくほうが、結果として話は早く進みます。国土交通省は2020年7月17日に宅地建物取引業法施行規則の改正を公布し、同年8月28日から水害ハザードマップにおける物件の所在地を重要事項説明で示すことが義務になりました。買主は契約前にその図面を見ます。過去の浸水歴をどこまで告知するかは個別の判断になりますので、担当の宅建士や専門家にご確認ください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。