不動産売却のハザードマップ告知|防災週間に確認する3図

浸水想定区域にある家を売ろうとすると、「色が付いていることを自分から言うと、値段が下がるのでは」と迷います。地図上の想定と、実際に起きた浸水を一緒にしてしまうと、その迷いは深くなります。
2026年の防災週間は8月30日から9月5日までです。この機会に確認したいのは、水防法に基づく洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類。宅地建物取引業者が行う所在地説明と、売主が伝える過去の被害履歴を分けて整理します。
内閣府の2026年度資料は、ハザードマップなどに示された地域の災害リスクを踏まえて訓練すること、指定緊急避難場所と指定避難所の位置や経路を把握することを挙げています。売却のためだけに見る資料ではありません。住み続ける間の避難にも使う図だからこそ、売るか迷っている段階で開く意味があります。
ハザードマップの説明は宅建業者の仕事、被害履歴は別の話
2020年8月28日から、宅地建物取引業者は契約前の重要事項説明で、水害ハザードマップ上の物件所在地を示すことになりました。この改正が、売主へ一律の「区域内告知義務」を新設したわけではありません。
国土交通省が示す対象は、水防法に基づいて市町村が提供する洪水・雨水出水・高潮の地図です。2026年9月3日時点で入手できる市町村公開の図を使い、対象物件のおおむねの位置を示します。地図に書かれた内容を細部まで説明することまでは、宅地建物取引業者へ義務付けられていません。
一方、過去に床上浸水した、床下へ水が入った、雨漏りを補修したという事実は、将来の想定を示す地図では代替できません。売主しか分からない履歴は、告知書と写真、修繕資料で仲介担当へ渡す話です。個別にどこまで伝えるべきかは、契約内容や判明している事実で変わります。
地図の色と、実際の被害歴は、同じ「水」の話でも別々に説明します。区域外だから浸水しないとも、区域内だから浸水したとも言い切れません。この二つを分けることが、売主の説明を余計に重くしない出発点です。
確認する3図は洪水・内水・高潮
売却前に確認するのは、洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類です。自治体によっては作成されていない種類があり、3枚の紙がそろうという意味ではありません。1枚の地図に複数の種類が載る場合もあります。
| 確認する図 | 主に見る水の来方 | 売主が残すメモ |
|---|---|---|
| 洪水 | 河川の氾濫 | 対象河川、想定浸水深、家のおおむねの位置 |
| 雨水出水(内水) | 下水道などで排水しきれない雨水 | 区域の有無、浸水深、地図の公表日 |
| 高潮 | 台風などによる海面上昇 | 区域の有無、浸水深、地図の公表日 |
最初に、国土交通省と国土地理院の「重ねるハザードマップ」で3種類を切り替えます。次に、市町村の地図で凡例と公表日を確認します。市町村の地図が未作成なら、空白を「安全」と読まず、未作成であることをそのまま記録します。
洪水は川から水が広がる想定、雨水出水は短時間の強い雨などを排水しきれない想定、高潮は海面が上がる想定です。同じ青色でも、原因と避難の方向は同じではありません。図ごとに想定条件と色の凡例が違うため、画像だけを切り抜かず、凡例が見えるページを残します。
土砂災害や津波の図も、地域によっては売却判断に関わります。ただし、2020年の改正で水害ハザードマップとして所在地説明の対象になった3種類とは分けて整理します。対象外という言葉を「買主に見せなくてよい」という意味には使いません。物件に関係する公的な図は、販売資料の別項目として確認します。
意外なのは、物件を含む河川別の洪水地図が複数ある場合、国土交通省のQ&Aではそれぞれを使って説明するとしている点です。「洪水図を1枚見た」で終わらないことがあります。天竜川と地域の中小河川では、想定の前提も水の来方も違います。
磐田市の不動産売却ページで扱う地域でも、磐田原台地、天竜川沿い、遠州灘に近い地区では地形が異なります。市町全体を一つの数字で表す火災保険の水災等地と、家のおおむねの位置を見る3図は、混同しないでください。
良い点は契約前に同じ図を見られること、注文は早く出すこと
所在地説明の良い点は、売主・買主・仲介担当が同じ公的な図を見て話せることです。「川から遠いから大丈夫」という感覚の説明から、図の名称、公表日、凡例、位置をそろえた説明へ変えられます。
ただし、契約直前の重要事項説明で初めて色を見せる順番には、私は賛成できません。買主がそこで初めて知れば、持ち帰って保険や住宅ローンを調べ直すことになります。説明が正しくても、遅ければ「伏せられていた」という受け止めになりかねません。
ここからは私の意見です。色が付いた家ほど、隠すより先に出したほうが値段を守れます。地図の色そのものより、後出しで生まれる疑いのほうが値引き交渉を大きくするからです。査定額を下げる前に、3図と被害履歴を分けて出す。これが当社の順番です。
もっとも、どの段階でどの資料を見せると買主の理解が進むかは、私にも迷いがあります。地図だけを広告に大きく載せると、想定条件を読まず色だけが一人歩きします。だから当社は、図の切り抜きだけでなく、出典名と確認日、凡例が読める状態を一緒に渡します。
売主が用意するのは「3図+履歴」の一組
売主が2026年9月3日に用意する資料は、3図の確認記録と、過去の被害・修繕履歴を分けた一組です。スマートフォンの画面だけで終えず、確認日とURLを付けたPDFか印刷物にすると、売り出し後も同じ資料を使えます。
- 洪水・雨水出水・高潮を切り替え、家のおおむねの位置を確認する
- 自治体版の図で、公表日、凡例、想定浸水深、指定避難所を確認する
- 実際の浸水、雨漏り、修繕、保険申請の有無を年表にする
- 写真、調査報告書、見積書、請求書、保証書を年表と結び付ける
「この家で浸水はなかった」と家族が記憶していても、将来の無被害を保証する文にはしません。「所有期間中に把握している浸水はない」と期間と認識の範囲を区切ります。分からない年代は、分からないまま残します。
資料の順番も決めておきます。1ページ目に家の位置と3種類の確認結果、2ページ目に想定浸水深と凡例、3ページ目以降に実際の被害・修繕履歴を置きます。想定と実績が混ざらない並びなら、買主は「地図では区域内だが、この所有期間中に把握した被害はどうか」を分けて質問できます。
被害歴がある家では、直した事実だけでなく、どこまで直したかを書きます。床を張り替えたのか、壁内の乾燥や電気設備の点検までしたのかで、買主が追加調査へ見込む費用は変わります。売主が分からない工事範囲を、仲介担当が推測で埋めてはいけません。
台風後の雨漏りや修理記録は、雨漏り告知に残す4資料の形でそろえられます。都市計画の区域や接道は別の調査です。磐田市で売る場合は、市街化調整区域の家を売る前の3確認と同じ物件表に載せても、項目は混ぜないほうが買主へ伝わります。
当社は浸水想定を買取の理由にせず、販売計画へ入れる
当社は、ハザードマップに色が付いていることを理由に買取を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そのかわり、3図、被害履歴、保険資料を査定時に分け、仲介で売る場合の価格と日程へ落とします。
確認する数字は、想定浸水深だけではありません。同じ条件に近い成約事例、査定日時点の売り出し物件、火災保険の見積り、修繕済みならその費用も並べます。地図の色を一律の値引き率へ置き換える根拠はないため、当社は「区域内だから何%下げる」という査定をしません。
販売計画では、売り出し時に資料を開示する日、問い合わせへの回答記録を残す場所、買主側が保険見積りを取る期間を決めます。内覧後に初めて調べ始めるのではなく、買主が検討に使う時間まで日程へ入れる。早く見せることは、安く売ることではありません。
買取を選ぶ事情があるときは、複数の買取会社へ同じ資料を渡して見積り条件をそろえます。当社は媒介として関与するため、仲介手数料を含めた手取り額で比べます。買取という選択を否定せず、地図を急がせる道具にしないという線引きです。
2026年9月3日に売るかどうかを決めなくてもかまいません。防災週間のうちに3種類の図を開き、公表日と自宅位置を一枚のメモへ残してください。売る、住み続ける、貸す。どの選択でも使える資料が一つ増えれば、9月3日の作業は終わりです。
出典(いずれも2026年9月3日確認):内閣府「令和8年度『防災週間』及び『火山防災の日』について」(2026年7月31日中央防災会議決定)/国土交通省「水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明について」/国土交通省「水害ハザードマップに係る重要事項説明について(Q&A)」。地図や制度は更新されることがあります。個別物件の告知範囲や契約上の責任は、担当の宅地建物取引士や弁護士などの専門家へご確認ください。
よくある質問
ハザードマップで浸水想定区域に入る家は、売主にも告知義務がありますか?
2020年8月28日施行の改正で義務を負うのは宅地建物取引業者です。契約前に、水防法に基づく水害ハザードマップ上で物件のおおむねの所在地を示します。売主に一律の区域内告知義務を新設した改正ではありません。ただし、実際の浸水や修繕など売主しか分からない履歴は別です。告知書で仲介担当へ具体的に共有し、個別の範囲は専門家へご確認ください。
売却前に確認するハザードマップは何ですか?
水防法に基づく洪水・雨水出水(内水)・高潮の3種類です。自治体によって未作成の種類があり、紙が3枚あるとは限りません。国の重ねるハザードマップで入口を確認し、市町村が公表する最新の図で、物件位置、凡例、想定浸水深、公表日を記録します。区域外や未作成を、水害リスクがないという意味には置き換えません。
浸水想定区域に入っていると、売り出し価格を下げるべきですか?
区域内という事実だけで一律に何%下げる根拠はありません。当社は地図の色を値引き率へ置き換えず、近い条件の成約事例、現在の競合、想定浸水深、被害・修繕履歴、保険料の見積りを分けて査定します。地図と履歴を売り出し時から示し、買主が費用と条件を確認できる販売資料にするほうが、後出しによる値引き交渉を避けやすくなります。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。