自宅を売るか貸すか|手取りで比べる3項目

住み替え先が決まり、今の家を売るか貸すかで迷う。家賃の見込みを聞くと、売って手放すのが惜しくなることもあるでしょう。ただ、毎月の入金と、最後に手元へ残るお金は別です。ここでは同じ5年間を区切り、持ち続ける支出まで並べます。
統計は選択の参考、利益の答えではない
国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査では、従前住宅の売却も賃貸も確認できます。ただし、この割合だけでは自宅をどちらに回すと得かはわかりません。
2026年7月17日公表の報告書94頁・問18では、注文住宅取得世帯のうち、持家から住み替えた世帯(建て替えを除く)の全国集計で、「売却した」が43.4%、「他人に賃貸している」が14.2%でした。調査対象は2024年4月〜2025年3月の住み替え等です。すべての住宅所有者を分母にした割合ではありません。
出典:国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」報告書94頁(2026年9月16日確認)。公表年と、実際に住み替えた時期は異なります。
私は、売却以外の選択も数字で見える点を評価します。家を残して家賃を得る選択には意味があります。一方、この調査はそれぞれの家の修繕費や税引き後の利益を比べたものではありません。選んだ人の割合を、そのまま自分の家の収益率に置き換えることはできません。
先に決めるのは比較の終点です。例えば2026年9月から2031年9月までの5年間と置きます。「今売る案」と「5年間貸してから売る案」で、いつ現金が入り、いつ出るかを揃えます。新居への支払いが先にある方は、売り先行・買い先行の資金計画も一緒に確認してください。
①修繕費と売却費用を先に引く
売るか貸すかの比較では、最初に出る支出と保有中の支出を分けます。売却査定額も家賃査定額も、持ち主の手取りそのものではありません。
今売る案は、売却代金から仲介手数料、登記関係費用、契約書の印紙代、必要な測量・片付け等の費用、ローン残債、譲渡にかかる税金を引きます。当社の仲介手数料も支出です。査定額だけを見せ、当社へ支払う費用を比較から外すことはしません。
貸す案は、募集前の修繕と保有中の修繕を分けます。給湯器、雨漏り、設備の故障、退去時の工事などを、点検結果と見積もりで記入します。税・保険・管理委託料に加え、マンションなら管理費や修繕積立金も確認します。預かった敷金のうち返すお金は、使える利益に数えません。
次の計算は相場や実例ではなく、比較方法を示す架空の戸建てです。借入はなく、今の売却額を2,000万円、売却諸費用を100万円と仮定します。譲渡税を差し引く前の残額は1,900万円です。100万円は仲介手数料などを含む仮の総額で、料金の提示ではありません。
賃貸募集前の修繕は80万円、5年間の追加修繕は60万円と仮定します。ここを「家賃が入ったら払う」で済ませないことです。募集前の80万円は、最初の家賃より先に必要です。設備の年式や点検記録がない家なら、修繕見積もりが出るまで賃貸の利益は未確定と扱います。
②空室を差し引いた5年間の実収支
賃貸の実収支は、満室なら得られる家賃から、空室による未収入と持ち主が払う費用を引いて計算します。家賃月8万円でも、毎年96万円が残る計算にはなりません。
架空の例を続けます。家賃は月8万円で据え置き、5年間60か月のうち合計6か月が空室、家賃を受け取る期間は54か月とします。管理料は受取家賃の5%、税・保険は年15万円、募集・契約関係の費用は5年間で計20万円と仮定します。金額は税込支出の想定です。
| 5年間の項目 | 架空の計算 |
|---|---|
| 満室を前提とした家賃 | 8万円×60か月=480万円 |
| 空室による未収入 | 8万円×6か月=48万円 |
| 受取家賃 | 480万円−48万円=432万円 |
| 管理料 | 432万円×5%=21.6万円 |
| 税・保険/募集・契約関係 | 75万円/20万円 |
| 募集前/保有中の修繕 | 80万円/60万円 |
| 所得税・住民税を引く前の賃貸残額 | 432−21.6−75−20−80−60=175.4万円 |
借入なし、滞納なし、家賃改定なしの仮定です。賃貸所得にかかる所得税・住民税は未算入で、最終手取りではありません。追加の工事や費用が発生すれば残額は減ります。
この例の175.4万円を60か月で割ると、月あたり約2.9万円です。月8万円という入口の数字と、費用を払った後の見え方は変わります。ただし平均が黒字でも、募集前の修繕や空室中の支払いが続く月には持ち出しが出ます。年ごとの合計に加え、修繕する月の預金残高も見ます。
家賃は手取りではありません。修繕と空室を引かずに「貸した方が得」とは決めません。私は、入金の大きさより、持ち主が途中で払えるかを先に見ます。大石浩之(磐田市/不動産業)としての意見です。磐田市の自宅の売却相談でも、賃貸を選ぶ余地があれば同じ期間の支出表で考えます。
借入がある場合は、月々の元金と利息の返済も現金支出に入れます。税務上の経費と現金の支出は一致しません。減価償却を含む税金の計算は税理士へ依頼し、資金表と分けて作ります。売却時に返す残高は、住宅ローン残債がある家の売却手順で整理できます。
③5年後の売却と税金で出口をそろえる
貸す案の比較額は、5年間の賃貸残額に、5年後の売却手取りを足します。将来の売却額が未確定なので、価格を変えた複数案で比較します。
先ほどの例で、5年後に1,800万円で売り、売却諸費用が100万円なら、売却残額は1,700万円です。賃貸分175.4万円を加えて1,875.4万円。今売る案の1,900万円より24.6万円少なくなります。いずれも譲渡税、賃貸所得にかかる税金、現金の運用益を除いた比較です。
5年後の売却額だけを1,900万円に変えれば、合計は1,975.4万円です。同じ仮定なら、今売る案を75.4万円上回ります。税金等を除いた計算上の分岐点は、5年後の売却額1,824.6万円です。これは相場予測ではなく、ほかの条件を固定した計算結果です。
この比較では、今売った1,900万円は5年間そのまま保有すると仮定しています。実際には新居の借入を減らし、利息負担を抑えられることもあります。その場合は減る利息を売却案へ反映します。逆に賃貸案では、修繕や退去の時期が重なった場合の資金も別に用意します。
税金も出口を変えます。国税庁は、以前住んでいた家の3,000万円特別控除について、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却を要件の一つとしています。例えば2026年9月に住まなくなり、そのまま5年後の2031年に売る案は、この期限を過ぎます。他の適用要件もあり、控除を前提にした資金計画は個別確認が必要です。
控除は売却代金から現金3,000万円が戻る仕組みではありません。譲渡所得からの控除です。自宅売却の3,000万円控除と買換え特例を参照し、今売る場合と貸した後に売る場合の税額を税理士に分けて確認してください。
私にも、売却だけを勧め切れない迷いがあります。戻って住む可能性や、家を残す安心は計算表だけでは決まりません。ただ、将来の売値は私にもわかりません。だから「家賃が取れる」という一点で保有を勧めず、売値が下がる案でも続けられるかを確かめたいのです。
今日そろえるのは3枚の見積もり
今日できる確認は、売却手取り、賃貸収支、修繕費の3枚を同じ期間で依頼することです。家を残す気持ちと、費用を払える条件を分ければ、結論を急がず比較できます。
- 売却担当者へ、今売る価格帯と諸費用の明細を依頼する。将来の価格は予測と区別して幅を持たせる。
- 賃貸管理担当者へ、家賃だけでなく募集期間、空室、管理料、退去時の負担を入れた収支表を依頼する。
- 工事担当者へ、貸す前に必要な工事と、5年間に見込む修繕を分けて見積もってもらう。
住宅ローンが残る方は、賃貸募集の前に借入先へ貸し出せる条件を確認します。また「5年後に売る予定」と「5年後に空室で引き渡せること」は同じではありません。賃貸契約の種類、終了の条件、入居中のまま売る案を、契約前に宅地建物取引士へ確認します。空室での売却価格を、入居中の家へそのまま当てはめません。
当社は買取を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そのかわりに、売却手取りと賃貸の実収支を、修繕・空室・将来売却まで同じ期間で比較します。期限が合う買取や買取保証を選ぶこと自体は否定しません。その場合も条件と費用を含めて比べます。
私は、家賃査定の数字だけで答えを出さず、3枚が揃うまで判断を保留するよう案内します。制度や数値は変わり得ます。最後は税理士・司法書士など専門家に確認を。融資条件は借入先、賃貸契約や売却条件は担当の宅地建物取引士へ確認してください。
出典(2026年9月16日確認):国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査の公表」「同報告書94頁・問18」、国税庁「No.3314 過去に居住していたマイホームを売ったとき」。試算は当社が比較方法を説明するために置いた仮定で、実際の査定・賃料・税額を示すものではありません。
よくある質問
家賃がローン返済を上回れば、貸した方がよいですか?
家賃とローン返済だけでは判断できません。空室、管理料、税・保険、修繕、募集時の費用を引き、税金も含めた収支を確認します。年間が黒字でも修繕月の現金が不足する場合があります。住宅ローンが残る場合は賃貸募集前に借入先へ条件を確認し、今売る場合の残債返済後の手取りと同じ期間で比べてください。
5年間貸してから売れば、家賃分だけ得になりますか?
家賃分がそのまま利益になるわけではありません。保有中の費用と将来の売却費用、残債、税金を引いて比較します。将来の売値や空室の期間は未確定です。以前住んだ家の3,000万円特別控除には売却期限などの要件もあります。売値が下がる案を含めて計算し、控除の適用と税額は税理士へ確認してください。
売るか貸すか、まだ決められない場合は何を調べますか?
売却手取り、賃貸収支、修繕費の3枚の見積もりを集めます。比較期間を例えば5年間にそろえ、空室期間と修繕の時期も記入してください。戻って住む予定がある場合は賃貸契約の終了条件も確認します。家賃査定だけで決めず、途中の支払いに使える預金と、将来売る場合の条件がそろってから家族で判断できます。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。