不動産売買契約書の印紙税|軽減は2027年3月まで

売買契約の日取りが決まると、必要なものの一覧が届きます。実印、印鑑証明書、権利証、身分証。その最後のほうに「収入印紙」とあり、いくらのものを何枚買えばいいのかだけが空欄のままになっている。契約の1週間前によく聞かれるのが、この質問です。
この記事では、不動産売買契約書に貼る印紙がいくらになるのか、軽減措置がいつまで続くのか、契約書を何通作るかで金額がどう変わるのかを、売主の側から並べます。
印紙税がかかるのは売買代金ではなく、契約書という紙
印紙税は、売買代金にかかる税ではありません。契約書という文書を作ったことにかかります。国税庁の分類では、不動産売買契約書は「不動産の譲渡に関する契約書」(第1号の1文書)にあたります。だから、代金をいくら受け取ったかではなく、契約書に記載された契約金額がいくらかで税額が決まります。
納め方も他の税と違います。確定申告も納付書もありません。契約書に収入印紙を貼り、消印をする。それで納めたことになります。郵便局や法務局、金額の小さいものならコンビニエンスストアでも買えます。
金額の下限も決まっています。国税庁のタックスアンサーNo.7108によれば、契約金額が10万円以下のものは軽減措置の対象外で税額200円、1万円未満のものは非課税です。土地や家の売買でこの帯に入ることはまれですが、私道の持分だけを別契約にする場合は当てはまります。
2027年3月31日まで。売買代金別の税額はこの表になる
不動産譲渡契約書の印紙税には、本則の税率とは別に軽減された税率が定められています。国税庁は「平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される、次の2種類の契約書について印紙税の税額が軽減されます」と書いています。令和9年3月31日は、西暦では2027年3月31日です。
この期限は、令和6年度の税制改正で3年延ばされたものです。財務省の「令和6年度税制改正の大綱」には「不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を3年延長する」と書かれています。それ以前は令和6年3月31日までが期限でした。
| 契約書に記載された契約金額 | 本則の税額 | 軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 10万円超 50万円以下 | 400円 | 200円 |
| 50万円超 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
| 100万円超 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※ 出典:国税庁タックスアンサーNo.7108「不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例」、同No.7140「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」、および国税庁パンフレット「不動産譲渡契約書&建設工事請負契約書 印紙税の軽減措置の延長について」(2026年8月31日確認)。5億円を超える帯は売主の実務でまず出てこないため省略しました。契約金額の記載のないものは、軽減されず本則どおり200円です。軽減後の税額が適用されるのは、2027年3月31日までに作成される契約書です。
もうひとつ、記載金額の数え方に決まりがあります。国税庁タックスアンサーNo.7124によれば、消費税額等が区分記載されている場合、または税込価格と税抜価格の両方が記載されていて消費税額等が明らかな場合には、その消費税額等は記載金額に含めません。根拠は「消費税法の改正等に伴う印紙税の取扱いについて」(平元.3.10付間消3-2)という通達です。ただし「消費税額等10パーセントを含む」といった書き方では、金額が明らかとは言えず、含めない扱いにはなりません。売主が消費税の課税事業者で、建物に消費税が上乗せされる取引では、この書き分けだけで税額の帯が変わることがあります。
軽減の対象は不動産譲渡契約書だけではありません。建設工事請負契約書(第2号文書)も対象で、こちらは契約金額100万円超のものが軽減されます。売却前に修繕をする場合の請負契約書も、同じ期限の中にあります。
紙で契約するかどうかから迷っている場合は、電子契約と紙契約を選ぶ3基準で、事前承諾・書類保存・日程負担を先に比べてください。
契約書を2通作れば、印紙も2通分いる
売主の手元から出ていく金額を左右するのは、税率よりもむしろ契約書を何通作るかです。国税庁タックスアンサーNo.7120には「一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部の文書がそれぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象となります」と書かれています。売主と買主が1通ずつ原本を持つなら、印紙は2枚です。
ここで意外に思われるのが、コピーの扱いです。同じNo.7120には「契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名もしくは押印または証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません」とあります。つまり、原本を1通だけ作って買主が保管し、売主はコピーを持つ。この形なら印紙は1枚で済みます。売買代金2,000万円なら、1万円が浮く計算です。
当社は、この節約をすすめていません。売却のご相談で聞かれれば、そういう方法があることは説明します。ただ、当社からご提案することはしません。理由は単純で、原本を持たない側は、後で条件の解釈が食い違ったときに手元の紙で反論できないからです。売却は決済で終わりますが、境界や設備の話は決済のあとに出てくることがあります。1万円と、その紙が手元にあることを引き比べたときに、私は紙のほうを選びます。
そのかわりに当社がやることは決めています。媒介契約を結ぶ段階で、契約書を何通作るか、印紙は誰がいつ用意するかを先に決めて、書面でお伝えする。契約日の当日に「印紙、どちらが持ってきましたか」と部屋の中で確認し合う形にしない。決めておけば起きないことです。
迷いも書いておきます。売買代金が5,000万円を超えて印紙が3万円になる帯では、この判断は私の中でも揺れます。3万円は、測量の追加費用や残置物の処分費と同じ桁です。それでも原本を手放すべきではないと今のところ考えていますが、そう言い切れるだけの根拠を私は持っていません。
手元にいくら残るかを、代金・手数料・税・登記費用を1枚に並べて考える理由は、手取り額で考えるページに書いたとおりです。印紙税はその表のいちばん小さい行ですが、行が抜けていると合計は合いません。
貼り忘れは3倍。ただし自分から申し出れば1.1倍
印紙を貼らなかった場合の扱いも、国税庁が明記しています。タックスアンサーNo.7131によれば「その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合にはその納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収される」とされています。売買代金2,000万円の契約なら、1万円が3万円になります。
逃げ道も同じページに書かれています。所轄税務署長に印紙税不納付事実申出書を提出し、その申出が調査を予知してされたものでないときは、納付すべき印紙税の額の1.1倍に軽減されます。気づいたら自分から言う。それが最も安い、という構造です。
見落としやすいのは、貼ったのに消印を忘れる場合です。同じNo.7131によれば、消印されていない印紙については、その額面金額に相当する金額の過怠税が徴収されます。貼って終わりではありません。過怠税は損金にも必要経費にも算入できないとされています。
私の商売感覚で言うと、印紙税の1万円は金額としては小さい部類です。売買代金2,000万円に対して0.05%、仲介手数料の上限額(税込72万6,000円)と比べても1.4%にあたります。ただ、この費用には他と違う性質が1つあります。出ていく日がいちばん早い。譲渡所得税は翌年の確定申告のとき、抵当権抹消の登録免許税は決済のとき。印紙だけは契約の当日に、現物として手元になければ話が止まります。
※ 試算の前提:磐田市内の中古戸建て、売買代金2,000万円(消費税等相当額を含まない)を想定した概算です。仲介手数料は国土交通省告示(昭和45年建設省告示第1552号/最終改正 令和6年6月21日)の上限額(2,000万円×3%+6万円+消費税10%)で計算しています。実際の額は物件と契約の条件で変わります。
なお、当社が買主になることはありません。買取・買取保証を率先して行わない理由は当社が買取・買取保証を率先して行わない理由に書いています。
契約日までに確認しておく3つのこと
売ると決めていない段階でも、契約の日取りが見えてきた段階でも、確かめておくと後が楽になることが3つあります。どれも費用はかかりません。
- 契約書を何通作るかを、媒介契約のときに決めておく。通数が決まれば、印紙の枚数と金額が確定します。誰がどこで買ってくるかも、そのときに決めます。
- 売り出し価格の帯が、税額の境目をまたいでいないか見る。1,000万円と5,000万円が境目です。たとえば1,050万円で売り出して1,000万円ちょうどで成約すれば、軽減後の税額は1万円ではなく5,000円になります。値付けの理由にはなりませんが、合計額が読めます。
- 他に契約当日に現金や現物が要るものがないかを、担当者に一度聞く。印紙、実印、印鑑証明書の有効期限。当社は一覧にしてお渡ししていますが、聞いていただいたほうが確実です。
決済の日にまとめて起こることの全体像は、住宅ローンの残債がある家を売る|抵当権抹消の3手順にまとめました。登記簿の住所が今の住民票と合っているかどうかは、住所変更登記が2026年4月から義務に|売る前の段取りのほうで扱っています。磐田市や周辺で売却をお考えの方は、磐田市の不動産売却のページに地域ごとの事情を書いています。
2027年3月31日という期限は、今日決まっている事実です。その先どうなるかは決まっていません。私は予測しませんし、期限を理由に契約を急ぐようご案内することもしません。ただ、印紙代がいくらで、誰がいつ用意するのかが分かっていれば、契約の日に考えることが1つ減ります。今日はそれで十分だと思っています。
※ 出典(いずれも2026年8月31日確認):国税庁「No.7108 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例」/同「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」/同「No.7124 消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額」/同「No.7120 契約書の写し、副本、謄本等」/同「No.7131 印紙税を納めなかったとき」/同「不動産譲渡契約書&建設工事請負契約書 印紙税の軽減措置の延長について」(PDF)/財務省「令和6年度税制改正の大綱」。制度・税額・期限は変わることがあります。試算は前提を置いた概算で、特定の物件での結果を示すものではありません。印紙税の課否や記載金額の判定など個別のご判断は、税務署または税理士にご確認ください。
よくある質問
印紙代は売主と買主のどちらが負担するのですか?
国税庁タックスアンサーNo.7120では、一つの契約について2通以上の文書が作成された場合であっても、その全部が契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべて印紙税の課税対象になるとされています。売主と買主が1通ずつ原本を持つなら、課税されるのは2通です。どちらがどの分を負担するかは当事者の取り決めによります。当社は媒介契約の段階で、通数と負担を決めてお伝えしています。
契約書のコピーにも印紙は要りますか?
国税庁タックスアンサーNo.7120に「契約書の正本を複写機でコピーしただけのもので、上記のような署名もしくは押印または証明のないものは、単なる写しにすぎませんから、課税対象とはなりません」と書かれています。ただし写しに署名押印や原本証明があれば課税対象です。原本を持たない側は後で条件の解釈が食い違ったときに手元の紙で示せないため、当社からこの方法をご提案することはしません。
2027年4月以降、印紙代はどうなりますか?
今決まっているのは、令和9年3月31日(2027年3月31日)までに作成される契約書に軽減後の税額が適用される、という点だけです。その先も延長されるかどうかは決まっていません。仮に本則の税額に戻ると、1,000万円超5,000万円以下は1万円から2万円へ、5,000万円超1億円以下は3万円から6万円へ上がります。当社は期限を理由に契約を急ぐご案内はしません。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。