800万円以下の空き家の仲介手数料|33万円の特例と手取り比較

築40年を超えた実家が空いたまま残っている。値段を聞いてみたら数百万円で、「この価格帯なら仲介より買取では」と言われた。売却の入口でいちばん判断が難しいのは、この場面だと私は考えています。金額が小さいほど、手数料の重みが効いてくるからです。
この記事では、売買価格が800万円以下の家を仲介で売るときに手数料がいくらになるのか、そして手数料を払ってなお仲介のほうが手元に残るのはどこまでか、を数字で並べます。
800万円以下なら、仲介手数料の上限は税込33万円になった
売買価格が800万円以下の宅地・建物については、仲介手数料の上限が税込33万円です。2024年7月1日に施行された報酬告示の改正によるもので、原則の計算式で出る金額を超えて受け取ってよい、という特例が置かれました。
根拠は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号)の第七、低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例です。条文は「当該依頼者から受ける報酬の額は三十万円の一・一倍に相当する金額を超えてはならない」と書いています。30万円の1.1倍で33万円、という組み立てです。
原則の上限は、売買価格を200万円以下の部分に5.5%、200万円を超え400万円以下の部分に4.4%、400万円を超える部分に3.3%を掛けて合計した金額です(同告示第二・消費税等相当額を含む)。特例と並べると、こうなります。
| 売買価格 | 原則の上限 | 特例の上限 | 差 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 15万4,000円 | 33万円 | 17万6,000円 |
| 400万円 | 19万8,000円 | 33万円 | 13万2,000円 |
| 500万円 | 23万1,000円 | 33万円 | 9万9,000円 |
| 600万円 | 26万4,000円 | 33万円 | 6万6,000円 |
| 800万円 | 33万円 | 33万円 | 0円 |
※ 売買価格は消費税等相当額を含まない金額です。手数料はいずれも消費税等相当額を含む上限額で、実際にお支払いいただく額は媒介契約の前に決めます。国土交通省告示(最終改正 令和6年6月21日)第二・第七の規定から計算しました。2026年8月24日確認。
私がいつも目を留めるのは、表のいちばん下の段です。売買価格が800万円ちょうどのとき、原則の上限も33万円になります。この特例は800万円という線を境に手数料を上げたのではなく、800万円以下の帯を、どこも同じ33万円まで引き上げて平らにしたものです。300万円の家も600万円の家も、上限は同じ33万円になりました。
「空家等」という名前だが、住んでいる家でも使える
「低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例」という名前が付いていますが、対象は空き家に限りません。国土交通省が2024年7月1日施行で改正した「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)の説明資料は、売買・交換の特例に係る低廉な空家等について「価格800万円以下の宅地・建物について、使用の状態は不問」と明記しています。使用の状態が問われないということは、居住中の宅地でも、入居者のいる建物でも、価格が800万円以下であれば対象になるということです。
誤解が起きやすいところです。名前に「空家」と付いているので、今住んでいる家や貸している家は関係ないと読んでしまう。実際には、価格が800万円以下であればそれだけで対象になります。賃貸借の「長期の空家等」の特例は別の規定(同告示第九)で、そちらは使われていない期間が問われます。
改正前との違いも押さえておいてください。公益財団法人不動産流通推進センターの解説によると、2018年1月1日施行の旧特例は、対象が400万円以下、上限は18万円と消費税、受け取れる相手は売主のみ、しかも現地調査等の費用を要するものに限られていました。2024年の改正で、価格の線が800万円に、上限が33万円に上がり、買主からも受け取れるようになりました。
売主の側から見れば、これは負担が増える方向の改正です。正直に書きます。この改正は、売主のためというより、私たち仲介業者が数百万円の空き家を扱っても採算が合うようにするための改正です。国土交通省の資料も「宅建業者が空き家等を取り扱うにはビジネス上の課題があることから、報酬の上限について見直し」と、その狙いをそのまま書いています。
33万円は上限であって、定価ではない
33万円は上限額です。請求できる金額として決まっているのではなく、媒介契約を結ぶ前に金額を説明して合意する手順が要ります。国土交通省の通達改正の説明資料は「媒介・代理契約の締結に際し、あらかじめ、特例で定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることに、特に留意」と書いています。
標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号、最終改正 令和6年4月1日国土交通省告示第34号)の第8条第2項は、もっと端的です。「前項の報酬の額は、国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」。甲が売主、乙が不動産会社です。手数料は限度額の範囲で協議して決めるものであって、上限額がそのまま請求額になるわけではありません。
当社は買取・買取保証を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そのかわりにやることを決めています。媒介契約の前に、原則の計算で出る金額と、特例を使った場合の金額の両方を紙に書いてお出しする。特例を使うのであれば、その差額で何をするのか(現地調査、境界と越境の確認、残置物の量の把握、写真と販売資料の作成、掲載先の設計)を項目で書く。読んだうえで決めるのは売主様です。
迷いも書いておきます。数百万円の空き家に手数料33万円をいただくのが妥当かどうか、私はまだ一律の答えを持っていません。300万円の家で17万6,000円の上乗せは、売主様にとって小さくない額です。かといって、境界が確定しておらず残置物も残ったままの家を、15万4,000円で引き受けて最後まで走れるかというと、そちらも楽ではありません。物件ごとに金額の中身を説明して、合意できたときだけ特例を使う。今の当社のやり方はそこまでです。
手取りで比べる|分かれ目は「市場価格マイナス33万円」
仲介と買取のどちらが多く残るかは、手数料の額ではなく手元に残る額で比べます。手数料だけを見るなら、分かれ目は単純です。買取価格が「市場価格マイナス33万円」を超えるなら買取、超えないなら仲介のほうが手元に残ります。
例を1つ置きます。磐田市内、築40年超、土地と建物を合わせた市場価格が500万円と見込まれる戸建て。当サイトの試算で使っている想定にならい、買取価格は市場価格の75%とします。
- 仲介:500万円 − 仲介手数料33万円 = 467万円
- 買取:375万円(買取会社が直接の買主であれば仲介手数料はかかりません)= 375万円
この例では約92万円の差が出ます。裏返せば、買取価格が467万円、つまり市場価格の93.4%を超えてくるなら、仲介より買取のほうが多く残る計算になります。市場価格300万円の家なら89.0%、800万円の家なら95.9%が分かれ目です。
※ 試算の前提:磐田市内・築40年超の戸建て、市場価格500万円(消費税等相当額を含まない)、買取価格は市場価格の75%と想定、仲介手数料は特例の上限である33万円。譲渡所得税、登記費用、残置物の処分費、引き渡しまでの維持費は含んでいません。買取価格の水準は会社と物件によって変わるため、この比率がそのまま当てはまるものではありません。
数字を、もう一段だけ商売の感覚に翻訳します。93.4%という分かれ目は、率で見ると高い壁です。ところが金額に直せば33万円で、築40年の家の残置物を処分して境界の立会いを一度おこなえば、それだけで近い額になります。仲介を選べばこの33万円は不動産会社の取り分になり、買取を選べば125万円の値引きという形で買主の取り分になる。同じ「手元に残らない金額」でも、桁がひとつ違います。当社が仲介を先に置いているのは、この差を見ているからです(手取り額で考える)。
仲介には、売れるまでの時間と、売れない可能性があります。手数料は成功報酬で、売買契約が成立しなければ発生しません(標準媒介契約約款第8条第1項)。そのかわり、売れない期間の固定資産税と管理の手間は売主様に残ります。時間の値段も、金額と並べて見てください。
それでも買取を選ぶときと、今日できる確認
期限があって買取を選ぶ判断は、十分に合理的です。当社は買取という売り方そのものを否定していません。当社が買主にならないというだけです。買取をお選びの場合は、複数の買取会社に同じ条件で見積もりを出してもらい、比べられる形にしてお出しします(それでも買取を選ぶ場合、当社がすること)。このとき当社は媒介として動くため仲介手数料が発生しますので、その費用を差し引いた手取り額でご説明します。
今日できる確認を1つ挙げます。買取の提案を受けているなら、提案してきた会社に「御社はこの取引で買主ですか、仲介ですか」と聞いてください。買主であれば、その査定額は御社が支払う金額です。仲介であれば、800万円以下の物件では御社が受け取れる手数料の上限も33万円です。どちらなのかで、同じ金額の意味が変わります(「買い取ります」と言われたら、先に確認したい3つのこと)。
手元に媒介契約書の案があるなら、報酬額の欄も見てください。特例を使う契約であれば、金額が原則の計算と違うはずです。違う理由の説明を受けていないなら、そこは聞いてよい場所です。
今日のうちに仲介か買取かを決める必要はありません。価格の帯が800万円以下かどうかで手数料の考え方が変わること、上限は33万円で、そこは協議して決める余地があること。この2つを持ち帰っていただければ、今日は十分だと思います。磐田市の物件については磐田市の不動産売却のページに地区ごとの事情をまとめました。森町のように土地の単価が磐田市街地より下がる地域での空き家の出し方は、森町の空き家を売るで整理しています。手数料まで含めた手取りの試算をご希望でしたら、かんたん入力のフォームからお声がけください。売却をお約束いただく必要はありません。
※ 出典(いずれも2026年8月24日確認):国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号/最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号)第二・第七・第九/国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(通達)の改正」(令和6年7月1日施行)/国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」(平成2年建設省告示第115号/最終改正 令和6年4月1日国土交通省告示第34号)第8条/公益財団法人不動産流通推進センター「低廉な空家等の売買等の媒介報酬の特例(改正)」。制度と金額は変わることがあります。試算は前提を置いた概算で、特定の物件での結果を示すものではありません。譲渡所得税・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。
よくある質問
800万円以下なら、仲介手数料は33万円になるのですか?
33万円は上限で、請求額として決まっている金額ではありません。国土交通省の通達では、媒介契約の締結時に、特例で定める上限の範囲内で報酬額を依頼者へ説明し、合意する手順としています。標準媒介契約約款第8条第2項も「限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」と書いています。当社は原則の計算による金額と特例による金額を並べ、差額で何をするのかを項目で示してからご相談します。
今も住んでいる家ですが、「低廉な空家等」の特例は使えますか?
売買価格が800万円以下であれば対象になります。国土交通省が2024年7月1日施行で改正した「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の説明資料は、売買・交換の特例について「価格800万円以下の宅地・建物について、使用の状態は不問」としています。使用の状態が問われないため、居住中の宅地でも、入居者のいる建物でも、価格が条件に収まれば対象になります。空き家であることは条件ではありません。
手数料が上がるなら、買取のほうが手元に残るのではありませんか?
価格によって変わりますので、手元に残る額に直して比べてください。手数料だけを見た場合の分かれ目は「市場価格マイナス33万円」です。市場価格500万円の戸建てで買取価格を市場価格の75%と想定した例では、仲介が467万円、買取が375万円で、約92万円の差が出ました。買取価格が市場価格の93.4%を超えてくるなら、買取のほうが多く残る計算になります。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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