両手仲介とは|売主が知る3つの論点

Q:同じ会社が買主も仲介すると、私の売却にどう影響する?
売却の依頼先を選ぶとき、「買いたい人も当社で探します」と説明されることがあります。窓口が一つなら話は進めやすそうです。一方で、売主は高く売りたい、買主は支出を抑えたい。両方を仲介する会社の報酬と、自分に戻るお金の関係が気になるところです。
両手仲介とは、同じ不動産会社が一つの売買で売主・買主の双方を仲介し、双方から仲介手数料を受ける形を指します。売主側と買主側を別の会社が仲介する形は、片手仲介と呼ばれます。これは報酬の受け方を表す実務上の呼び方で、専任媒介などの契約の種類とは別の軸です。
この記事では、報酬、紹介機会、売主の手取りの順に分けます。同じ会社が関わることだけで良し悪しを決めず、売却依頼前に何を説明してもらうかまで整理します。
論点1:双方から報酬を受けても、売主の手数料は2倍にならない
両手仲介では、売主が払う仲介手数料と買主が払う仲介手数料は別です。同じ会社が双方から受け取るからといって、買主分まで売主に上乗せする仕組みではありません。
国土交通省の「不動産取引に関するお知らせ」は、売買の仲介手数料の上限を「依頼者の一方」ごとに示しています。金額は上限の範囲内で、媒介契約を結ぶ際に合意するものです。上限額が、そのままどの契約でも請求される定額という意味ではありません。
例えば、個人の売主が消費税のかからない土地を2,000万円で売り、消費税の課税事業者である仲介会社へ依頼するとします。通常の上限計算では、売主側の税込仲介手数料は(2,000万円×3%+6万円)×1.1=72万6,000円です。買主側も同じ上限額で合意した場合、双方分の合計は145万2,000円となります。
計算は売買価格2,000万円、仲介手数料にかかる消費税率10%、売主・買主とも上限額で合意した仮定です。国土交通省の通常の段階別料率から算出しました。物件価格800万円以下には別の特例があるため、この式だけを低価格物件へ当てはめないでください。2026年10月6日確認。
| 同じ2,000万円の売買 | 売主の支払い | 売主側の会社が受ける報酬 |
|---|---|---|
| 片手仲介 | 72万6,000円 | 売主分72万6,000円 |
| 両手仲介 | 72万6,000円 | 双方分145万2,000円 |
上表は双方とも通常の上限額で合意し、売買価格も同じ場合の比較です。片手仲介の買主側報酬は買主側の別会社が受けます。実際の手数料、成約価格や成約を保証する表ではありません。
私は、ここを曖昧にしたまま「売主に有利です」と説明するのは違うと考えます。会社の収入が増えること自体は、売主の損失と同義ではありません。ただし、会社が受け取る金額と売主の負担を同じ紙に書けば、報酬の仕組みを隠さずに話せます。
専任媒介を選ぶと両手仲介になる、一般媒介なら片手仲介になる、という対応関係もありません。依頼できる社数や報告のルールは、専任媒介と一般媒介の違いで分けて確認してください。
論点2:見るのは両手という名前より、買主への紹介機会
売主が確かめたいのは、自分が希望する範囲で購入希望者へ物件が紹介されるかです。同じ会社から買主が見つかることと、別の窓口からの紹介を止めることは、別の問題です。
双方の相談窓口が同じなら、内覧日程や引渡し条件を一つの窓口で調整できる利点があります。売主の希望条件と買主の資金計画が合えば、連絡の往復を整理しやすい形です。両手仲介という名前だけで、その買主との商談を断る理由にはなりません。
一方で、売主が望む紹介機会を減らしてまで双方の報酬を優先するなら、別の論点になります。国土交通省の2024年12月24日公表資料は、双方の媒介を目的に、売主の意向に反して物件紹介を止める行為を「囲い込み」と説明しています。両手仲介と囲い込みを一括りにすると、確認すべき行為が見えなくなります。
同資料では、2025年1月1日からレインズへの取引状況登録が義務化されたことも確認できます。専属専任媒介・専任媒介の売り出し物件について、売主専用画面で「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3種類を確認する仕組みです。一般媒介すべてに同じ登録義務がある、という説明ではありません。
私は、売主自身が状態を確認できる仕組みは良いと考えます。会社からの口頭説明と、登録された状態を照らし合わせられるからです。ただ、画面の表示だけで、問い合わせへの返答や内覧の調整まで全部わかるわけではありません。登録確認と販売活動の報告は、両方が要ります。
当社は、当社で買主を見つけることだけを優先して紹介機会を絞る説明はしません。そのかわり、公開範囲や紹介を止める条件を売主様と整理し、売主様の意向に沿う販売計画を説明します。居住中で内覧可能日が限られるなど、紹介に条件を付ける場合も、理由と期間を分けて残す考え方です。
覚えのない紹介停止が表示されたら、理由、開始日、再開予定日を依頼先に確認してください。操作の詳しい手順は、レインズ登録証明書で取引状況を確認する方法へ委ねます。
論点3:会社の報酬より、売主の手取りと条件を比べる
売主にとっての比較は、会社の報酬合計ではなく、成約価格から自分の費用を引いた金額と、引渡し条件で行います。片手か両手かだけでは、売主の最終的な手取りは決まりません。
手取りを考える際は、仲介手数料のほか、契約書の印紙、測量、残置物の処分、登記に関する費用など、自分の案件で必要な項目を拾います。住宅ローンが残っていれば返済額も別欄へ置きます。全部の物件に同じ費用がかかるわけではなく、未確定額は未確定と残すほうが比較を誤りません。
仲介手数料だけに絞ると、前の仮定の2,000万円の売買では、差し引き額は1,927万4,000円です。1,900万円に値下げし、同じ上限計算で売る場合は手数料69万3,000円、差し引き額は1,830万7,000円。価格差100万円に対し、売主に残る差は96万7,000円になります。
これは土地売買の仮定で、2,000万円と1,900万円に通常の税込上限手数料を適用した比較です。その他の費用、税金、ローン返済は差し引いていないため、最終手取り額ではありません。実際の値下げ効果や成約可能性を示す数字でもありません。
私はこう考えます。会社の報酬が増える話と、売主の手取りが増える話は別です。片手・両手の名前を安心材料にするより、「値下げを受けた場合、何円残るのか」を売主の紙に戻したい。100万円の値下げを検討する場面なら、手数料の減少だけでなく、差し引き額が96万7,000円減るところまで見る。それが私の判断の軸です。
ただ、私も価格だけで答えを出せるとは考えていません。引渡しを急ぐ事情があれば、待つ間の維持費や日程の確実性にも価値があります。どれだけ待てるかがわからない段階で、最高額の申込みが最適だと言い切ることには迷いがあります。だから申込価格、費用、引渡し日、条件を横に並べます。
別払いの広告費を提案された場合は、内容と合意の範囲も確認します。仲介手数料と混ぜず、不動産売却の広告費が別払いになる理由を踏まえて、手取り計算の費用欄に入れてください。
依頼前に、報酬・紹介方針・手取り見込みを1枚にする
売却依頼を決める前に、手数料の合意額、物件の紹介方針、費用を引いた見込み額の3点を、書面やメールで説明してもらうと判断材料が揃います。両手仲介を認めるかだけを先に決める必要はありません。
- 報酬:売主が払う税込額と支払時期。同じ会社が買主を仲介する場合も売主側の条件が変わるか。
- 紹介:別の仲介窓口からの問い合わせと内覧をどう扱うか。紹介を止める場合、誰の意向で、いつまで止めるか。
- 手取り:成約価格の案ごとに、確定した費用と未確定の費用を分ける。引渡し時期と申込みの条件も記載する。
購入申込みが複数あれば、売主へ届く比較表に買主の紹介元も添えると、判断の経緯を確認しやすくなります。当社は、報酬の仕組みを説明したうえで、価格と条件を分けて売主様に示す考え方です。売主様の了承の範囲も記録し、当社の取り分を含めて比較します。
当社が買主になることはありません。買取・買取保証を率先して行いませんが、その売り方自体を否定する立場でもありません。期限を優先して買取を選ぶなら、買取の見積もりを比較する際の当社の説明を確認し、当社が媒介する場合に発生する仲介手数料も含めて比べます。
今日できる確認は、依頼候補へこの3点の説明を求めることです。回答が揃うまで、売却依頼の結論を保留して構いません。「早く買い取るより、1円でも多く売主様の手元へ」を、価格だけの掛け声にしない。報酬と紹介機会を見える形にしてから決めるのが、当社の立ち位置です。
出典:国土交通省「レインズの機能強化に関する売主向け資料」(2024年12月24日公表、1〜2ページ)/国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」(仲介手数料)。いずれも2026年10月6日確認。制度・料率は変更される場合があります。金額例は条件を置いた試算です。税務・登記などの個別判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家に確認してください。
よくある質問
両手仲介は違法なのですか?
同じ不動産会社が売主・買主の双方を仲介し、双方から報酬を受ける形だけで違法とはなりません。国土交通省が説明する囲い込みは、双方の媒介を目的に、売主の意向に反して紹介を止める行為です。報酬額の合意と上限、売主の意向に沿う紹介、購入申込みや条件の説明を分けて確認してください。
両手仲介だと、売主が払う仲介手数料は2倍ですか?
売主と買主の仲介手数料は別です。両手仲介になっただけで売主の支払いが自動で2倍になる仕組みではありません。消費税のかからない土地を2,000万円で売り、課税事業者へ通常の上限額で依頼する例なら、売主側の税込上限は72万6,000円です。実際の合意額と支払時期は媒介契約前に確認します。
レインズが公開中なら、紹介機会は十分と考えてよいですか?
公開中の表示は取引状況を確かめる材料ですが、問い合わせへの対応や内覧調整の全容を示すものではありません。販売活動の報告もあわせて確認します。専属専任・専任媒介では売主専用画面の状態と自分の意向を照らし、覚えのない紹介停止なら、理由、開始日、再開予定日の説明を依頼先へ求めてください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。