共有者が行方不明の不動産売却|相談前の3準備

家全体を売りたいのに、共有名義の一人に連絡がつかない。査定を頼んでよいのか、先に弁護士へ行くべきか。入口で止まった売主の方は、手元の資料を「登記」「探索」「資金」の3つに分けるところから始められます。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。宅地建物取引士として、当社は法律相談へ持ち込む物件資料と、売却の計画をつなぎます。磐田市の不動産売却相談でも、売出価格だけを先に決める進め方は勧めません。この記事は2026年10月11日に確認した制度をもとに、相談前の準備を説明します。
全体を売る道はある。ただし残る共有者全員の譲渡が条件
共有者の所在が不明でも、裁判所の手続を経て、その人の持分を含む不動産全体を第三者へ売れる場合があります。所在が分からない人を除いて、勝手に売却を決めてよいという制度ではありません。
国土交通省『所有者不明土地ガイドブック』本文23頁は、2023年4月1日施行の共有制度の見直しを説明しています。持分に応じた金銭を供託し、裁判所の決定を得て、全体を第三者へ譲渡する道が設けられました。2026年に始まった新制度の速報ではなく、すでにある制度の使い方の話です。
東京地方裁判所の案内にある正式な手続名は「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立て」です。不明者以外の共有者全員が、同じ第三者に持分全部を譲渡することが条件です。「持分」とは、共有している所有権の割合を指します。自分の持分だけを売る相談とは分けて考えます。
私は、所在不明という理由だけで全体売却を諦めずに済む道がある点を評価します。家の管理を続ける負担と、売却へ進む負担を比べられるからです。そのうえで、制度名を伝えるだけでは売主の判断材料として足りません。誰の合意があり、誰が資料を集め、誰が先にお金を用意するのか。そこまで並べるのが当社の役割だと考えます。
準備1|土地・建物の登記と、共有者の意思を分けて整理する
登記の準備では、売りたい土地と建物を別々に確認し、名義人・持分・相続の有無を書き出します。登記事項証明書は権利関係を確かめる資料ですが、そこに載る氏名だけで現在の関係者を確定できるとは限りません。
まず手元の登記事項証明書や固定資産税の課税明細を並べます。土地は地番、建物は家屋番号で照合します。取り方で迷う場合は、登記事項証明書を取得する前の3手順を確認してください。私道の持分など、売却に関係する別の不動産がないかも相談事項にします。
東京地方裁判所の案内では、遺産分割をすべき相続財産に属する持分について、相続開始から10年以上の経過が必要とされています。「共有者が行方不明になって10年」ではありません。相続で得た不動産すべてに、一律で10年待つ義務があるという意味でもありません。
亡くなった名義人がいる場合は、死亡日が分かる資料、手元にある戸籍、遺産分割協議書などの有無を整理します。登記が済んでいない場合の別の課題は、相続登記の義務化と期限も参照してください。10年の条件と相続登記の手続は同じ話ではなく、個別の関係は弁護士・司法書士に確認します。
当社からの準備の提案は、連絡できる共有者について「全体売却に賛成」「条件次第」「未確認」を分けてメモすることです。希望する価格と時期も一人ずつ記録します。所在不明者の問題を解決しても、ほかの共有者の意思がそろわなければ、この制度による全体売却の条件は整いません。
準備2|探した日・方法・結果を、資料と一緒に残す
探索の準備では、「連絡がつかない」という説明を、いつ何を調べたか分かる記録に直します。手元の記録を整理することと、裁判所が求める調査を尽くしたかの判断は別です。
東京地方裁判所は、探索等に関する報告書と、所在不明を裏付ける資料を案内しています。例として住民票、戸籍、返却された郵便物、捜索願、ほかの共有者から話を聞いた書面などが挙げられています。全員が同じ資料一式をそろえれば足りる、という一覧ではありません。
| 整理するもの | メモする内容 | 相談時の確認 |
|---|---|---|
| 登記上・最後に分かった住所 | 出典の書類名と取得日 | 住所のつながりを調べる必要があるか |
| 返送された郵便物 | 発送日、宛先、返送理由 | 封筒を含めた保管方法 |
| 電話・親族等への確認 | 確認日、相手、分かったこと | 追加で確認する対象と方法 |
| 未着手・取得できなかった資料 | 不足している資料と理由 | 誰がどの権限で取得するか |
当社は、資料の出所と日付が混ざらない整理を勧めます。封筒は捨てず、口頭で聞いた内容は「誰から聞いたか」を添えます。自分の推測と確認できた事実も分けます。個人情報を無断で集めたり、取得権限のない資料を無理に取ったりせず、追加調査は弁護士に相談してください。
返事が来ないことと、所在が分からないことも同じではありません。住所が分かり、売却への反対が示されているなら、その事情を隠さず伝えます。家族が本人に代わって同意した扱いにせず、通常の取引での確認も不動産売却の本人確認で整理できます。
準備3|供託資金と最終的な手取りを、別の表にする
資金の準備では、売却後に残る金額だけでなく、売却代金を受け取る前に用意するお金を確認します。供託とは、所在不明の共有者のために、定められた金銭を供託所に預ける手続です。
東京地方裁判所の案内では、不動産全体の時価相当額や所在不明者の持分割合などを考慮し、裁判所が供託額を定めます。不動産価格の資料も必要です。添付資料として鑑定書・簡易鑑定書・固定資産税評価証明書等が挙げられています。当社の売却査定だけで提出資料が足りるかは、事前に確認が必要です。
売れた後にいくら残るかと、売れる前にいくら用意するかは別の話です。私は、ここを一枚の「手取り表」に押し込めると判断を誤ると考えます。家計から先に出せる資金が分からないまま、売却益があるから進めようとは言えません。書類をそろえる作業と一緒に、資金の出し手と支払時期を決める必要があります。
私は相談準備を考えるとき、机の上に「支払時期の表」と「最終精算の表」を並べたいと思います。早く売却へ進めたい気持ちと、家計を手続費用で圧迫したくない気持ちの間で、判断に迷う部分です。だから、ここでは価格を上げれば解決するとは考えません。未確定の金額は空欄のまま残し、弁護士に確認する順番をつけます。これは実際の相談事例ではなく、私の進め方に対する考えです。
当社が提案する支払時期の表には、供託金、法律相談・依頼費用、申立てに伴う費用、価格資料の取得費用を分けて置きます。金額未定でも「誰が見積もるか」「いつまでに用意するか」は書けます。最終精算の表には、共有者ごとの帰属額、立替金の精算、当社の仲介手数料、登記費用、税金などを並べます。供託した金額を再度引くような二重計上にも注意します。
供託額や総費用は物件ごとに異なるため、この記事で一律の金額は置きません。東京地方裁判所の案内に載る申立費用を、そのまま別の裁判所や2026年の必要額として転記することもしません。相談先で最新の額を確かめ、資金の調達方法まで含めて検討します。
法律相談と販売計画は、引渡しまでの順序でつなぐ
弁護士への相談では、制度を使えるかに加え、供託・裁判・買主への譲渡をどの順番で進めるか確認します。販売計画は、その手続の見通しに合わせて組みます。
非訟事件手続法第88条第3項では、権限付与の裁判の効力が生じた後、2か月以内に持分譲渡の効力が生じなければ、裁判は効力を失うとされています。裁判所による期間の伸長は可能です。「決定が出てから期限を考えればよい」とは言えない仕組みです。
当社は、買主候補の資金計画、売買条件、登記の準備を、弁護士・司法書士と確認する売却日程につなぎます。裁判の結果や必要期間を当社で決めつけ、引渡日を約束することはしません。そのかわり、査定の根拠と販売条件を整理し、どの段階で買主と何を合意するかを相談します。
当社は買主にならず、買取・買取保証を率先して行いません。早く買い取るより、1円でも多く売主様の手元へ残す立場から、手続費用も含めた売却計画を考えます。買取や買取保証そのものを否定する話ではありません。買取を選ぶ場合も、権限と条件の整理は必要で、当社が媒介する取引には仲介手数料が発生します。
今日できるのは、登記資料の保管場所、連絡を試みた記録、先に出せる資金の目安を一枚に書くことです。すべての資料が完成するまで相談を待つ必要はありません。当社は物件・価格の整理を担い、制度の利用可否や探索の十分さは弁護士へ、登記は司法書士へ確認する順番で案内します。
出典・確認日:2026年10月11日(2026年10月確認)。国土交通省『所有者不明土地ガイドブック』本文23頁(表紙2022年3月)、東京地方裁判所「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立てについて」1〜2頁(公表日表記なし)、e-Gov法令検索非訟事件手続法第88条。
制度・必要書類・費用は変更される場合があります。個別の申立てや契約は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士に確認してください。
よくある質問
電話や手紙に返事がないだけで、この制度を使えますか。
返事がないことだけで利用できるとは判断できません。共有者を知ることができない、または所在を知ることができない場合の手続です。住所が分かる、売却への反対があるなどの事情も分けて伝えます。連絡した日・方法・結果と裏付け資料を整理し、追加調査と利用可否を弁護士に確認してください。
相続開始から10年未満なら、全体売却はできませんか。
10年の条件は、この制度で対象にする持分が、共同相続人間で遺産分割をすべき相続財産に属する場合のものです。相続した不動産すべてを一律に10年間売れなくする規定ではありません。相続開始日、遺産分割の状況、名義と持分が分かる資料を持ち、利用できる手続を弁護士に確認してください。
供託金は売却代金が入ってから用意すればよいですか。
売却代金を受け取ってから用意する前提では進められません。手続の中で裁判所が定める額の供託が必要になるため、時期と資金の出し手を先に確認します。供託額を査定額だけで決めず、依頼費用や登記費用、仲介手数料も分けて資金計画を作ります。具体的な支払順序は弁護士と相談してください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。