インスペクションと耐震診断の違い|売主の3比較

築年数の経った自宅を売る前に、インスペクションと耐震診断の見積もりを見て迷う。どちらも家を調べるのなら、片方だけで済ませたい。その気持ちは、売却後の手取りを考えれば自然です。ただ、答えてくれる問いが違います。
大石浩之(磐田市/不動産業)として、私は調査名より「何を知ったら売り方を決められるか」を先に整理します。磐田市の不動産売却でも、調査費だけでなく、報告後に必要になる確認まで見て判断したいと考えています。
国土交通省の2026年9月4日発表によると、住生活月間は2026年10月1日から31日までです。住宅の調査を見直す入口として、この記事では築年数の経った戸建てを売る方に向け、目的・分かる範囲・費用を比べます。情報確認日は2026年10月10日です。
比較1|傷みを調べるのか、地震への強さを評価するのか
インスペクションと耐震診断の違いは、家の劣化・不具合を調べることと、耐震性能を評価することです。本記事では、インスペクションのうち、宅地建物取引業法に基づく「建物状況調査」を比較対象にします。
国土交通省「改正宅地建物取引業法に関するQ&A」のQ1-1は、建物状況調査を目視や計測などで劣化・不具合を確認する調査と説明しています。一方、同省「耐震改修の進め方」は、予備調査と現地調査をもとに専門家が耐震性能を評価する流れを示しています。
| 比べる項目 | 建物状況調査 | 耐震診断 |
|---|---|---|
| 目的 | 調査時点の劣化・不具合の把握 | 建物の地震に対する強さの評価 |
| 分かる範囲 | 対象部位を目視・計測等で確認した結果。見られない部分は残る | 資料と現地調査を踏まえ、採用する診断方法で評価した耐震性能 |
| 費用の比べ方 | 基本調査・追加調査・報告書等の見積範囲を確認 | 診断・改修計画・設計・工事等を分けて見積範囲を確認 |
意外かもしれませんが、「ホームインスペクション」という商品名だけでは、法に基づく建物状況調査か分かりません。同Q&AのQ1-13は、サービスの内容と要件を提供者に確認するよう案内しています。見積もりの名称だけで、同じ調査だと扱わないことです。
私は、雨漏り跡や床の傾きなどを売却時にどう説明するかと、地震への強さを確かめたいという希望を分けます。目的が違えば、安い方を選んでも知りたい答えが得られないことがあります。依頼する調査が決まった後の段取りは、インスペクションを頼む時期の3つの選択肢で整理できます。
比較2|調査済みでも、分からない部分は残る
建物状況調査の報告書と耐震診断の報告書は、互いの代わりにはなりません。傷みについての確認結果を、そのまま地震への安全性の判定として説明することは避けます。
国土交通省Q&AのQ2-5では、点検口や家具の状況で見られない部分は、報告書などに調査できなかった旨が記載されるとしています。「調査できなかった」と「調査して不具合が見つからなかった」は別です。売主が報告書を読む際にも、この区別を残します。
耐震診断では、国土交通省の案内に沿うと、建築時や増改築時の情報を集め、現地の状態を確認して評価へ進みます。設計図書や増改築の資料が手元にあるなら、依頼前に一覧にして診断者へ伝えてください。足りない資料がある場合の調査方法は、診断者への確認事項です。
私は、調査結果の良い点は、売主と買主が同じ資料を見て話せることだと考えます。口頭の「古いけれど大丈夫だと思う」から、調査日・対象・結果のある説明へ進められます。耐震診断も、住み継ぐ計画を考えるための判断材料になります。
その上で注文したいのは、報告書の表紙だけで安心を売らないことです。調査できなかった箇所と追加確認の要否まで説明して、初めて資料が役に立ちます。費用をかけた売主側に不利な結果が出る可能性も、依頼前から販売計画に入れておきたいところです。
検査済証を探している場合も、調査を申し込む話と、交付記録を調べる話を分けます。検査済証がない家の売却前にそろえる資料を確認し、手元にない書類を列挙してください。今回の2つの調査を頼めば、失った書類の問題まで解消するとは考えません。
比較3|料金の安さより、何の費用が含まれるかを見る
調査費を比較するときは、同じ住宅情報を渡し、依頼範囲と追加費用をそろえます。「インスペクションの方が安い」「耐震診断なら高い」と名称だけで順番を付けると、別の仕事を比べてしまいます。
国土交通省Q&AのQ1-7には、建物状況調査の費用について基準の設定はなく、実施者によって異なるとあります。また、「耐震改修の進め方」では、耐震診断の後に改修計画、設計、工事費の見積もり、工事が続きます。診断を頼むことと、改修工事を発注することは同じ段階ではありません。
当社は、次の項目を見積書への質問として提案します。両方の調査を同時に依頼する場合も、成果物がそれぞれ何かを分けて確認します。共通の現地確認があるなら、重複作業を減らせるかも聞けますが、値引きを前提に予算は組みません。
- 基本料金の対象:建物の構造・面積・増築部分を含め、どこまで調べる見積もりか。
- 追加になる条件:床下・小屋裏の確認方法、資料不足時の対応、再訪問の費用はどうなるか。
- 受け取る書類:結果の概要、報告書、写真、説明の機会は料金に含まれるか。
- 次の段階:原因を詳しく調べる作業、補修、耐震改修計画や設計は別契約か。
- 支払いと日程:税込総額、費用負担者、報告書の納期、追加依頼の承諾方法をどう決めるか。
この一覧は全国共通の料金表ではなく、当社が提案する比較の物差しです。耐震診断の補助を検討するなら、建物所在地の窓口へ、対象住宅・対象診断・申請と契約の順序を先に確認します。補助が使える前提で自己負担額を小さく書かず、確認できるまで総額と補助見込みを分けます。
売却時に瑕疵保険も検討しているなら、調査と保険の費用を混ぜないでください。瑕疵保険を付ける前の3比較で、検査や補修を含む負担を整理できます。調査代を払ったから、保険まで手配済みと扱うことは避けたいところです。
売却前にどちらを頼むかは、答えが必要な問いで選ぶ
売却前の調査は、家の状態を説明する材料が必要か、耐震性能を評価する材料が必要かで選びます。両方の問いが残るなら両方の見積もりを取り、先に必要な結果と予算を建築士へ相談します。
私の考えは、安心という言葉にまとめて二つの調査を買わない、というものです。調査代は売主様の財布から出ます。必要な答えを決めないまま項目を足しても、売り方が決まるとは限りません。何が分かれば次へ進めるのかを一行にし、その答えに費用を払う。私は、この順番を勧めます。
正直に言うと、売却前にどこまで調べるかは私も迷います。資料が増えれば説明しやすくなる一方、調査費や待つ日数が増えるからです。建物を使ってもらう販売案と、使い方を買主に委ねる案では、必要な情報の時期も変わります。ただし、売却の都合で居住中の耐震への不安を後回しにする判断はしません。建築士へ切り分けを相談します。
当社は、調査をしただけで査定額が上がるとは案内しません。そのかわり、調査費・追加確認費・修理する場合の費用を、販売計画の別欄に置きます。成約価格の見込みから仲介手数料などの売却費用も引き、手元に残る額と開始日を比べます。調査費に見合う値上がり額は、この段階では分かりません。
当社は買主にならず、買取・買取保証を率先して行いません。買取や買取保証という方法自体は否定しませんが、調査結果が気になることだけを理由に売り方を急いで決めず、引渡し条件と手取りを並べる立場です。早く買い取るより、1円でも多く売主様の手元へ。そのためにも、要らない調査を足さない判断が要ります。
今日の確認は、見積もりを頼む前の一枚から
今日できる準備は、家について知りたいこと、手元の資料、結果が必要な日を一枚に書くことです。調査の予約や売却の決断より先に、依頼内容を具体的にできます。
- 「雨漏り跡を説明したい」「耐震性能を知りたい」など、解決したい問いを書く。
- 図面、増改築の記録、過去の調査報告書を探し、ないものも記録する。
- 調査者へ「この依頼で何が分かり、何は分からないか」を聞く。
- 報告書の納期と税込総額を受け取り、販売開始予定に重ねる。
売り出し日が未定なら、そのまま伝えて構いません。報告を受けた後、補修するか、現状を説明して売るかを考える時間も取ります。私は、調査名を選んだことではなく、売主様が次の判断に使える答えを得られることを、依頼の基準にします。
出典(2026年10月10日確認):国土交通省「10月は『住生活月間』です」(2026年9月4日発表)、「改正宅地建物取引業法に関するQ&A」(2018年2月1日現在、Q1-1・Q1-7・Q1-13・Q2-5。調査の定義・費用・範囲の確認に使用)、「耐震改修の進め方」(更新日の表示なし)。
制度・料金・調査方法は変更される場合があります。本記事は個別住宅の安全性や売却価格を判定するものではありません。建物の状態、耐震性能、必要な調査は建築士・調査実施者へ、売買時の説明と契約条件は担当の宅地建物取引士や弁護士へ確認してください。
よくある質問
インスペクションで問題がなければ、耐震診断は不要ですか?
建物状況調査の結果だけで、耐震性能の評価まで済んだとは扱えません。劣化・不具合の確認と、地震への強さの評価は目的が違います。耐震性能を知りたい理由を建築士へ伝え、手元の図面や過去の診断結果も見せて、追加で必要な調査を確認してください。見られなかった部分は、確認済みと区別します。
インスペクションと耐震診断は、どちらが安いですか?
名称だけでは比較できません。国土交通省Q&Aは、建物状況調査の費用に基準の設定はなく実施者ごとに異なると説明しています。両方とも同じ住宅情報を渡し、基本料金、追加調査、報告書、再訪問の扱いを確認してください。耐震診断後の改修計画・設計・工事の費用も、診断料と分けて見積もります。
古い家を売る前に、両方とも依頼した方がよいですか?
築年数だけで両方の発注を決めず、売却時に何を説明したいかを分けます。傷みの把握と耐震性能の評価の両方が必要なら、調査者へ範囲と順序を相談してください。報告後の追加確認、費用、納期も販売計画に入れます。居住中の地震への不安がある場合は、売却の予定とは分けて建築士へ相談してください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。