不動産売却の固定資産税精算金|年越し前の3疑問

2026年の秋に売り出し、契約は12月、引渡しは2027年1月。その予定表を見て、「もう売るのに、次の固定資産税も払うのか」と気になった売主様へ。売却代金の横に精算金が足されても、その全額を住み替えに回してよいとは限りません。
この記事は個人が土地・建物を売る場面を中心に、納税、契約の精算、売却後の税金を分けます。大石浩之(磐田市/不動産業)として、磐田市の不動産売却でも、この三つを別の欄に置いて判断することを提案します。
疑問1:年明けに売ると、誰が納税する?
固定資産税・都市計画税は、原則としてその年度の初日の属する年の1月1日の所有者が納税義務を負います。国税庁の清算金に関する質疑応答は、年の途中で所有者が変わっても、その賦課期日を基準とする納税義務は買主へ移らないと説明しています。
たとえば2027年1月1日時点でも売主が所有者なら、1月中に売却しても2027年度分の納税義務は売主側に残ります。2026年12月に売買契約を結んだ、という日付だけで判定するものではありません。年内の契約と、年内に所有者が変わることを分けて考えます。
家を手放した後にも、その年度の納税が残る。ここが最初に押さえたい事実です。売買契約書に「引渡し後は買主負担」と書いても、それは当事者間の負担の取り決めです。市町村に対する納税義務者を書き換える条項ではありません。
当社の提案は、販売予定表に「売買契約日」「所有権移転・引渡し予定日」「1月1日の所有者の確認」を別々に置くことです。契約後の融資や登記の準備もあります。全体の日程は売却期間を3つの期限から逆算する方法と合わせて確認してください。
根拠:国税庁「賃貸用アパートを購入した際に支払った固定資産税及び都市計画税相当額の清算金の取扱いについて」の回答要旨。2025年8月1日現在の法令・通達等に基づく説明を、2026年9月29日に確認しています。物件の納税義務者や登記の状況は、所在地の市町村と司法書士へ確認してください。
疑問2:精算金は何日分を受け取れる?
固定資産税精算金の対象期間や金額は、売主と買主の合意で決まります。国税庁の同じ質疑応答でも、清算金は買主自身の納税義務による支払いではなく、売買当事者の合意による支払いとされています。
私は、精算の良い点は、利用する期間に合わせた負担を当事者で具体的に決められることだと考えます。年の途中で引き渡すときにも、年額のうちどの部分を分けるか、計算書で共有できます。売主だけが負担を抱えるかどうかを、契約前に話せる仕組みです。
その上で注文したいのは、「日割りします」の一言で終えないことです。精算期間の初日、引渡し当日の負担者、基準にする年度と税額、端数の処理を紙に残します。1月1日を精算期間の初日とする案も、4月1日を初日とする案も、法定の納税義務とは別の契約条件として確認します。
年額14万6,000円、10月1日引渡しの仮定
計算方法だけを見るため、2026年1月1日から12月31日の365日を精算期間とします。固定資産税等の年額を14万6,000円、引渡し当日から買主負担と合意した仮定です。10月1日から12月31日までは92日なので、売主の受取精算金は14万6,000円÷365日×92日=3万6,800円です。
| この例の条件 | 計算・確認内容 |
|---|---|
| 1日分 | 14万6,000円÷365日=400円 |
| 買主負担分 | 400円×92日=3万6,800円 |
| 売主の実質負担分 | 14万6,000円−3万6,800円=10万9,200円 |
数字は実在物件の税額や地域の相場ではなく、計算用の仮定です。都市計画税が課される物件ではその分も確認します。精算期間や当日の扱いが違えば金額は変わります。この表は売主が年額を納付する前提で、譲渡所得への影響は含めていません。
年明けの引渡しで、精算に使いたい年度の税額がまだ分からない場合も想定します。当社なら、どの資料で仮計算するか、税額が分かった後に再精算するか、するなら誰がいつ連絡するかを契約前の確認事項に入れます。前年と同額と決めつけず、未確定の欄を残します。
疑問3:受け取った精算金は、そのまま手取り?
売主が受け取った未経過固定資産税等相当額は、譲渡所得を計算する際の収入金額に含まれます。国税庁No.3214が示す取扱いです。「税金の分を返してもらった」という感覚だけで、売却の収入から外さないでください。
前節の仮定に、売買代金2,000万円という条件を加えます。ほかの受取金がなければ、代金と精算金の合計は2,003万6,800円です。手付金を先に受け取っている場合、その手付金は2,000万円の内数です。決済日の入金に加えて二重に数えないようにします。
ただし、2,003万6,800円の全額にそのまま税率を掛けるという意味ではありません。国税庁No.3202は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引く計算を示しています。特別控除の適用なども含め、最終的な課税額は個別に確認します。
当社が作る手取りの確認表では、入金と支出を次のように分けます。仲介手数料などを引く前の受取合計を、最終的に使える金額と混同しないためです。
| 分けて置く欄 | 確認する内容 |
|---|---|
| 取引全体の受取額 | 売買代金と受取精算金。先に受け取った手付金を重複させない |
| 売却に伴う現金支出 | 仲介手数料、登記関係費用、ローン返済など。支払済みか未払いかも分ける |
| 納税のために残す資金 | 未納付の固定資産税等と、売却に伴う所得税・住民税等の見込み |
| 税引後の見込み手取り | 受取額から、未反映の支出と納税資金を差し引いた金額 |
この表は現金の管理用であり、税務上の経費一覧ではありません。現金が出ていく項目をすべて譲渡費用にできるわけではなく、ローン返済額も譲渡所得の計算とは分けます。過去に払った税金をもう一度差し引かないよう、支払日も付けてください。
私は、受取額が増えただけで「手取りが増えた」とは言わないと考えます。3万6,800円を受け取っても、納税用にいくら残すのかが空欄なら、住み替えに使える額はまだ出ていません。数字を売主様の財布へ翻訳するなら、入金の説明と同じ重さで、後から払う金額も示すべきです。
取得費が分からず税額を置けないときは、不動産売却の取得費の調べ方から資料を集めます。精算書も売買契約書と一緒に保管し、申告の相談時に見せてください。
年内売却と年明け売却は、税額以外も並べる
年内と年明けの売却案は、固定資産税の納税義務だけで優劣を決めず、売買価格、精算条件、維持費、売却に伴う税金を同じ表で比べます。当社は年越しだけを理由に、売却を急がせる提案はしません。
たとえば「年内の引渡しに合わせるため価格を20万円下げる案」と「年明けまで待つ案」を比べるなら、20万円の値下げと、待つ間に増える支出を並べます。これは判断方法を示す仮定で、値下げの相場ではありません。翌年度の税額全額をそのまま待つ費用と置かず、合意する精算額も反映します。
私も、価格を守って待つべきか、期限を優先すべきかは、納税通知書だけでは決められません。買主の条件や維持費、家族の資金予定によって答えが変わるからです。分からない段階で「年内が得」とは言わず、両案の未確定額を見えるようにするのが当社の進め方です。
譲渡所得の長期・短期を分ける所有期間にも1月1日が出てきますが、固定資産税の納税義務者とは別の判定です。所有期間によって税率が変わる境目を確認し、年越しで変わる項目を一緒くたにしないでください。
今日確認するのは、通知書と契約の精算欄
今日できる確認は、固定資産税等の納税通知書・課税明細書と、売買契約書案の公租公課の精算欄を並べることです。まだ契約書案がなければ、仲介担当へ次の質問を渡してください。公租公課とは、ここでは固定資産税などの税負担を指します。
- 精算に使う税額は何年度分で、どの資料から取りますか。
- 精算期間の初日と末日はいつで、引渡し当日はどちらの負担ですか。
- 税額が未確定なら、仮計算と後日の再精算をどう決めますか。
- 売主が後から納める金額は、手取り表のどこに残していますか。
当社は買主にならず、買取・買取保証を率先して行いません。そのかわり、仲介での販売日程と精算条件、税引後の見込み手取りを合わせて示します。買取や買取保証が期限に合う場合も否定しません。当社の媒介で買取会社へ売る場合には仲介手数料も含め、同じ条件で比較します。
売るかどうかの結論を今日出さなくても、通知書の年度と年額を確かめることはできます。私は、まずその数字と未納付額を書き出し、年内・年明けの二案を作るよう案内します。最後は、納税義務や税額を市町村・税務署・税理士へ、所有権移転や登記を司法書士へ確認してください。
出典(2026年9月29日確認):国税庁「固定資産税及び都市計画税相当額の清算金の取扱い」(2025年8月1日現在法令等)、「No.3214 土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」、「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」(後二者は2026年4月1日現在法令等)。これらの日付は公表日ではなく法令等の基準日です。制度や数値の扱いは変わることがあります。個別の税務・登記判断は各専門家へご確認ください。
よくある質問
12月に売買契約を結べば、翌年度の固定資産税を払わなくて済みますか。
契約を結んだ日だけでは決まりません。固定資産税等の納税義務は、原則として1月1日の所有者にあります。年内に契約しても所有権移転が年明けなら、売主側に翌年度分が残る場合があります。契約日と移転日を分け、納税義務者は市町村へ、移転・登記の日程は司法書士へ確認してください。
固定資産税精算金は、売れば自動的に受け取れますか。
売却したという理由だけで自動的に受け取れるものではなく、売主と買主の合意によります。精算の有無、対象期間、引渡し当日の負担者、使う年度と税額を契約書で確認します。税額が未確定なら仮計算や再精算の条件も決めます。買主から精算金を受け取っても、市町村への納税義務は別に残ります。
受け取った精算金の全額に、売却の税率が掛かりますか。
受け取った未経過固定資産税等相当額は譲渡収入に含まれますが、それだけで税額は決まりません。売却全体の収入から取得費や譲渡費用を差し引き、特別控除の適用や所有期間などを確認します。精算金の入金額を、そのまま税引後の手取りとは扱わず、契約書と精算書を税務署か税理士へ見せてください。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。