公簿売買と実測売買の違い|手取りの3比較

土地の売買契約書に「面積は公簿による」とある。登記には200㎡と書いてあるけれど、測ったら違うかもしれない。価格を先に固めたい気持ちと、少なく売ってしまいたくない気持ちがぶつかる場面です。
公簿売買と実測売買は、名前だけで損得を決められません。売主が比べたいのは、面積差の精算、測量費の負担、決済時期の3つです。売買代金から何が引かれ、いつ残額を受け取れるかまで、同じ条件にそろえて考えます。
公簿売買と実測売買の違いは、代金の決め方
公簿売買は登記上の面積をもとに代金を確定し、原則として実測との差を精算しない方式です。実測売買は、測量で確認した面積をもとに代金を確定します。どちらも、測量費の負担者や境界確認の約束まで名前だけで決まるものではありません。
一般財団法人不動産適正取引推進機構の「不動産のQ&A」Q3は、この区別を説明しています。同機構は個人の住宅地では双方の公平という点から実測売買を望ましいとしています。一方、公簿売買かどうかは契約条項で確認するものとし、面積不足が契約上の責任につながった事例にも触れています。
2026年9月25日確認。「公簿」と書けば面積をめぐる責任がすべてなくなる、という意味ではありません。面積について何を説明し、何を約束したかも関わります。契約条項と説明内容は宅地建物取引士に、紛争がある場合は弁護士に確認してください。
意外なのは、公的な調査も全国一律に完了しているわけではないことです。国土交通省「全国の地籍調査の実施状況」では、2025年度末の進捗率は全国53%、優先実施地域81%です。2026年6月調べと記載されています。公表日は同ページに記載がなく、6月を公表日とは扱いません。
53%は、国有林野や公有水面等を除いた調査対象地域の面積に対する進捗です。土地の件数の割合でも、残り47%の登記面積が誤っているという数字でもありません。優先実施地域は対象の取り方が異なるので、81%と単純には比較できません。
私は、この数字を個別の土地の安心材料にも不安材料にも使いません。調査の進み具合と、目の前の土地で使える資料は別だからです。まず登記事項証明書の取り方を確かめ、記載面積と手元の測量図の日付を並べます。登記面積だけで方式を決めるのは、その後です。
比較1・面積差は、増える場合と減る場合を並べる
実測売買の精算は、売主の受取額が増える方向にも減る方向にも働きます。増えた場合だけを試算せず、同じ単価で面積が減った案を並べると、契約前に必要な資金の余裕が見えてきます。
以下は仕組みを見るための架空例です。登記面積200㎡、基準代金2,000万円、合意した精算単価は1㎡当たり10万円とします。実測売買は差の全量を精算し、公簿売買は面積差の精算をしない前提です。実際の相場や成約実績ではありません。
| 実測面積 | 公簿売買の代金 | 実測売買の代金 | 実測方式の増減 |
|---|---|---|---|
| 195㎡ | 2,000万円 | 1,950万円 | 50万円減 |
| 200㎡ | 2,000万円 | 2,000万円 | 増減なし |
| 205㎡ | 2,000万円 | 2,050万円 | 50万円増 |
精算額=(実測面積−200㎡)×10万円。いずれも売買代金の比較で、最終的な手取り額ではありません。費用・借入返済・税金は、この表には含めていません。
公簿売買の良さは、面積差による代金の変動を原則として避け、資金計画を立てやすいことです。実測売買の良さは、合意した単価と測量結果を使い、増減の扱いを双方で共有できることです。私は、どちらも売主にとって意味のある利点だと考えます。
そのうえで当社は、精算単価を空欄にしたまま方式だけ選ぶことを勧めません。売買代金を面積で割った単価と、契約に定める精算単価が同じとは限らないからです。私道部分を精算面積に含めるか、端数をどう丸めるか、精算しない差の範囲を設けるかも、契約前の確認欄に入れます。
比較2・測量費を引かなければ、手取りの比較にならない
公簿売買でも、境界を確認して図面を渡す約束があれば、その作業費を見込む必要があります。実測売買でも、売主が費用を全額負担するとは名前だけでは決まりません。費用と成果品を、売買契約と測量の見積書で照合します。
私はこう考えます。面積が増えて50万円高く売れても、そのために売主が60万円余分に払うなら、手元では10万円減る。面積を正すことの価値と、売主に残る現金は分けて見ます。「測れば高くなる」で話を終えると、この10万円が消えてしまいます。数字は売買代金ではなく、持ち主の負担まで引き直す。それが今回の判断の軸です。
50万円と60万円は判断方法を示す仮定です。60万円は測量費の相場ではなく、公簿案に対する売主負担の追加額とします。他の費用が同額の場合に限る差額比較です。
手取りの比較表には「確定代金−測量関係費−仲介手数料−その他売却費用−借入返済」を記入します。さらに、税金の見込額を別枠で確保します。当社が受け取る仲介手数料も省きません。代金精算に伴って手数料の計算が変わる契約なら、測量後の額でも計算し直します。
見積書で見たいのは、現地の測量だけか、隣地との立会い・境界確認、境界標の設置、図面の作成まで含むかです。登記面積を直す地積更正登記が必要な場合は、その業務も含むかを確認します。立会いが追加になった場合と、売却を見送った場合に残る支払いも聞いておきます。
費用の資料と依頼前の段取りは、土地の境界確定測量の費用に整理しています。今回の比較では、一般的な目安をそのまま入れず、その土地の見積額と負担者を書き込んでください。
比較3・決済時期は、方式名より測量の完了条件で比べる
決済時期は、公簿売買か実測売買かだけでは決まりません。代金を精算しない公簿売買でも、境界確認や図面交付が決済の条件なら、その完了が日程に関わります。実測売買でも契約前に測量が済んでいれば、契約後に面積確定を待つ段取りとは異なります。
当社は、残代金を受け取りたい日から逆に、測量依頼日、立会いの調整、図面の受領、精算額の合意を並べます。「測量が終わったら決済」とだけ書かず、何を受け取ったら完了とするか、書面上の期限を具体的な年月日にします。買主の融資日程との整合も担当者に確認します。
期限までに境界確認が整わない場合には、延長を協議するのか、どの条件で解除できるのかを契約前に整理します。支払い済みの測量費や追加作業費を誰が負担するかも残ります。ここは一律のひな形で答えず、土地の状態と契約条項に合わせて確認する部分です。
待つ時間も現金に直します。仮に決済が2か月延び、その間の売主負担が月2万円増えるなら、追加支出は4万円です。これは期間の予測でも地域相場でもありません。維持費などを実際の支出で置き換えるための例です。借入元金の返済を費用として二重に引かないよう、返済予定表も分けて見ます。
売出しから契約までと、契約から決済までは別の期間です。全体の計画は不動産の売却期間と3つの期限も使い、測量だけでなく転居・融資・残代金の受領日を同じ予定表に置いてください。
私は、方式を選ぶ前に3欄の比較表を作ります
公簿案と実測案は、精算の増減、売主負担の総額、決済条件の3欄を埋めてから選びます。売主の希望だけで決めるものではなく、買主との合意が必要です。土地の資料が足りない段階で、どちらが得かを断定することはできません。
正直に言えば、私は代金を早く固める安心と、面積を確かめてから約束する安心の間で迷います。期限のある売主なら前者が役に立つ一方、買主が求める図面や境界の条件を残せば、代金だけ固めても決済の予定は固まりません。だから私は、測量を省けるという期待を公簿売買に乗せず、書面で残る義務から順に見ます。これは個別の体験談ではなく、私の判断方針です。
当社は買取・買取保証を率先して行いません。当社が買主になることもありません。そのかわり、売主側で代金・費用・期限の条件をそろえ、手元に残る額を比較します。買取という方法を否定する話ではありません。買取を選ぶ場合でも、公簿か実測か、測量費と期限をどう扱うかの確認は残ります。
今日できることは、手元の契約書案に「精算単価」「測量の負担者と成果品」「完了期限と未了時の扱い」の3欄を作ることです。空欄があれば、担当者へそのまま渡せます。私は、売主が負担する額と受領できる日を説明できる状態にしてから、方式を選ぶよう案内します。
出典:国土交通省「全国の地籍調査の実施状況」(2025年度末・2026年6月調べ)、一般財団法人不動産適正取引推進機構「不動産のQ&A・その他Q3」。いずれも2026年9月25日確認。制度・統計・費用は変わることがあります。測量と地積更正登記は土地家屋調査士、契約内容は宅地建物取引士、法的紛争は弁護士、税務や権利の登記は税理士・司法書士など専門家に確認してください。
よくある質問
公簿売買なら、測量をしなくても売れますか?
公簿売買は原則として面積差を精算しない方式で、測量をしないという意味ではありません。売買契約で境界確認や図面の交付を約束すれば、その作業と費用が残ります。既存の測量図、現地の境界標、買主が求める条件を整理し、測量の要否は土地家屋調査士、契約上の義務は担当の宅地建物取引士に確認してください。
実測面積が増えれば、売主の手取りも増えますか?
面積が増えても、追加の測量費や仲介手数料などによって手取りの増加が小さくなったり、逆に減ったりします。仮に代金が50万円増え、売主の追加負担が60万円なら、他の条件が同じ場合の残額は10万円減ります。これは相場ではなく架空例です。精算単価と面積の範囲、費用の負担者を契約書と見積書で確認します。
測量が決済の期限に間に合わない場合はどうなりますか?
期限の延長や解除ができるかは、売買契約の条項と個別事情によります。公簿売買でも境界確認が決済条件なら日程に影響します。契約前に成果品、完了期限、未了時の協議方法、解除条件、支払い済み費用の扱いを確認してください。担当の宅地建物取引士と土地家屋調査士で日程を照合し、法的な争いは弁護士へ相談します。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。