家売却の適合証明書|10月からの電子交付と3手順

売り出す家の資料を探していたら、買主の住宅ローンに「適合証明書」が要ると分かった。検査済証とは違うのか、売主が先に費用を払うのか。ここを曖昧にしたまま取得だけ急ぐと、販売計画と支出がかみ合いません。
この記事では、長期固定金利の住宅ローン【フラット35】を使う買主も想定し、売主側で整理する順番を示します。扱うのは融資用の証明書の準備と受渡しです。家の状態を調べる検査全般や、売買契約の電子化とは分けて考えます。
2026年10月の電子交付で変わること
適合証明書は、2026年10月交付分から、適合証明機関が発行するものが原則PDFになります。住宅金融支援機構が2026年8月4日に公表した変更です。借入申込先の金融機関または同機構へ、電子メール等で提出する案内になっています。
出典:住宅金融支援機構「適合証明書の電子化に関するお知らせ」(2026年9月30日確認)。基準は申請月や売買契約月ではなく、交付分の月です。「原則」であり、個別の交付方法は申請先へ確認します。
適合証明書は、融資対象の住宅が住宅金融支援機構の技術基準に適合することを証明する書類です。中古住宅の案内では、物件検査に合格すると交付されます。一方、一定の要件を満たす住宅では、物件検査・適合証明手続を省略できる場合もあります。売る家すべてについて、新しく取得するという話ではありません。
私は電子交付を歓迎します。紙を手渡したり郵送したりする段取りが減り、離れている関係者へ渡しやすくなるからです。資金を受け取る前の書類の受渡しが軽くなる点は、売主にも買主にも意味があります。
ただし、私はPDFを送って終わりにしません。受領確認までを仕事に入れます。電子化したのは書類の交付と提出です。誰が送るか、誰が受け取るか、いつまでに受け付けてもらうかを人が決めなければ、販売計画は固まりません。便利な道具に段取りまで丸投げしない、というのが私の考えです。
手順1|申請先と手元資料を先に整理する
中古住宅の適合証明を準備する最初の仕事は、検査機関または適合証明技術者への相談です。住宅金融支援機構の中古住宅向け手続案内が示す申請先であり、借入れを申し込む金融機関とは役割が異なります。
同機構の案内では、物件検査の申請と借入申込みの順序は問いません。買主の申込みが済むまで何も調べられない、と決めつける必要はありません。ただし、売主が先に有料の申請をするかどうかは別の判断です。売り出す前は、次の確認から始めるのが私の提案です。
- 建築時の図面、確認済証・検査済証、増改築や修繕の記録など、手元にある資料の名称と有無を書き出す。
- 申請先へ所在地、住宅の種類、築年、増改築の有無を伝え、必要資料と検査対象を聞く。
- 手続省略に使える既存資料がないか、適用条件と金融機関へ示す資料を確認する。
上の資料は、相談を始めるための整理例です。すべての住宅に共通する申請書類一式を示したものではありません。不足資料をどこから取り寄せるかも含め、依頼先が示す一覧と照合します。図面がないというだけで、取得可否を売主側で決めつけないことです。
名称が似ていても、検査済証がそのまま融資用の適合証明書になるわけではありません。古い資料が見当たらない場合は、検査済証がない家を売る前の資料整理も確認してください。証明書の名前と目的を分けると、問い合わせ先を間違えにくくなります。
家の状態を把握するインスペクションを予定している場合も、「今回の依頼で適合証明まで扱えるか」と聞きます。別々に頼む前に、対象・費用・成果物を確認したいところです。検査の依頼時期そのものは、売却前のインスペクションを頼む3つの時期で整理しています。
手順2|費用の総額より先に、負担する範囲を決める
適合証明の費用は、売主が払うと先に決めず、見積条件と売主・買主の合意をそろえてから発注します。電子交付のお知らせだけでは、個別物件の料金も、売買当事者間の負担も決まりません。
私は「適合証明一式」という合計だけでは判断しません。初回の検査・証明に含まれる作業と、追加になり得る作業を分けます。次の表は当社が販売計画を組む際の確認案であり、機構が定めた一律の料金表ではありません。
| 見積書で分ける欄 | 依頼先へ聞くこと | 売主・買主で決めること |
|---|---|---|
| 検査・証明の費用 | 税込総額、資料調査や交付の費用を含むか | 依頼者、支払者、支払時期 |
| 追加調査・再検査 | 追加になる条件と、実施前の見積方法 | 誰の承諾があれば発注するか |
| 適合に向けた補修 | 必要な工事の範囲、費用、工期 | 売主負担の上限と、超えた場合の協議 |
| 売買が進まない場合 | 申請取消しや検査済みの場合の精算 | すでに払った費用をどう扱うか |
売主が検査費を出す案にも意味はあります。資料をそろえて販売条件を説明したい場合です。一方、買主の希望する融資が定まってから費用を協議する案もあります。どちらでも、補修費まで売主が無制限に引き受けるような曖昧な約束は避けます。
ここは私も迷うところです。先に準備すれば話は進めやすい。しかし、買主が未定の段階で費用をかけても、その買主がフラット35を使うとは限りません。だから私は、まず相談と見積りを進め、有料の検査を頼む日を販売方針とセットで決める、と考えます。準備することと、お金を使うことを同じ日にしなくてもよいのです。
当社は、証明書を取れば売値が上がると約束しません。そのかわり、売主が負担する検査費・補修費を手取り表に置き、当社の仲介手数料など他の売却費用とあわせて確認します。費用をかける案とかけない案の差を見てから、販売条件を選ぶためです。
手順3|提出期限から逆算し、PDFの受領まで確認する
適合証明書の提出日は、引渡し当日を基準に決めず、借入申込先が指定する期限から逆算します。住宅金融支援機構の手続案内では、資金の受取り手続を始める前に提出が必要とされています。個別の締切日は、買主を通じて金融機関に確認します。
販売計画には、金融機関への提出期限、証明書の交付予定日、検査予定日を書きます。補修や再検査が必要なら、その予定も戻して入れます。公開資料から、どの物件でも交付まで何日と決めることはできません。検査の予約状況や資料の不足を依頼先へ確認して、実際の日付に置き換えます。
PDFの受渡しでは、私は次の確認欄を作るよう提案します。送付先は、買主側から伝わった情報だけで済ませず、金融機関が指定した窓口・方法と一致しているかを担当者間で照合します。
- 交付されたPDFを受け取る人と、その後に金融機関へ提出する人。
- 金融機関が指定する提出方法、宛先、提出期限。
- 提出したファイルの控え、提出日、金融機関の受領回答。
- 差替えが必要な場合の連絡先と、どのファイルが最終版か。
送信履歴が残っていても、金融機関が必要書類として受け付けたことまで確認できるとは限りません。メール等を送った担当者が、受領と不足の有無を確かめる。ここまで決めれば、売主も「書類待ち」の中身を把握できます。個人情報を含む書類なので、関係のない人へ一斉転送せず、指定された方法で渡します。
そして、物件検査に合格しても融資審査の結果は別です。証明書が届いたことだけで、売買代金の受取りを確定扱いにしません。融資の期限と契約解除の条件については、ローン特約で売主が確認する負担も読み、担当の宅地建物取引士へ契約内容を確認してください。
当社は、書類の取得を販売計画へ戻して考える
当社は、適合証明の申請先・費用負担・提出期限を、買主の融資を見据えた販売計画の一部として整理します。証明書の取得だけをゴールにせず、売主の手取りと引渡しまでの予定を一緒に見ます。
当社は買主にならず、買取や買取保証を率先して行いません。ただし、期限を優先してそれらを選ぶこと自体は否定しません。仲介で必要な準備を進める案と比べるときも、価格だけでなく、準備費用、仲介手数料、引渡し条件を並べます。1円でも多く売主様の手元へ残すには、費用の抜けをなくすことからです。
今日できるのは、手元資料の有無を一枚に書き、仲介担当者へ「申請先、費用の負担案、金融機関に確認する期限を並べてください」と伝えることです。買主がまだいなければ、提出期限は未定と書いて構いません。未定の欄を埋めたふりをせず、誰がいつ確認するかを決める。私はこの順番で案内します。
出典:住宅金融支援機構「【フラット35】中古住宅を購入する場合の融資手続・必要書類」。本記事の一次情報は2026年9月30日確認(2026年9月確認)。制度や提出方法は変更される場合があります。省略要件、費用、交付時期は検査機関・適合証明技術者へ、融資条件・提出期限は借入申込先へ確認してください。売買契約の個別判断は宅地建物取引士や弁護士などの専門家にご確認ください。
よくある質問
売主が売り出す前に適合証明書を取得する必要がありますか?
すべての家売却で先に取得する書類ではありません。フラット35を想定する場合も、一定の要件で物件検査・適合証明手続を省略できる住宅があります。まず手元資料をそろえ、検査機関または適合証明技術者に対象と必要資料を確認します。有料の申請時期は、買主の融資予定と販売計画に合わせて決めます。
適合証明書の費用は売主が負担しますか?
電子交付になることだけで、売主の負担が決まるわけではありません。検査・証明の見積りを取り、依頼者、支払者、支払時期を売主・買主で協議します。補修や再検査が必要な場合の追加費用、売買が進まなかった場合の精算も発注前に確認します。当社は売主負担分を仲介手数料などと分け、手取り表に置いて考えます。
PDFの適合証明書が届けば買主の融資は通りますか?
物件検査の合格と融資審査の結果は別です。住宅金融支援機構の案内でも、検査に合格しても審査結果によって融資希望に沿えない場合があるとされています。PDFは指定された方法で提出し、金融機関の受領と不足書類の有無を確認してください。資金受取りまでの予定や売買契約の融資期限も別に確認します。
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文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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