不動産売却のマイナンバー|求められる理由と3疑問

法人への自宅売却を検討していて、必要書類の一覧に「マイナンバー」とあった。価格や引渡し日は相談してきたのに、番号を何に使うかは分からない。そんなときは、カードの画像を送る前に、書類の名前と提出先を確かめてください。
売買の本人確認と、税務書類に番号を書く手続きは目的が違います。この記事では、国内に住む個人が自宅を売る通常の取引を中心に、誰への売却が対象か、誰に渡すか、提供できないときはどう考えるかを整理します。一次情報の確認日は2026年10月2日です。
求められる理由は、買主側の税務書類
不動産売却でマイナンバーを求められる理由の一つは、買主側が税務署へ提出する「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を作るためです。支払調書とは、誰にどのような対価を支払ったかを報告する税務書類です。
国税庁のNo.7442は、税務署へ出す支払調書に、代金を受け取る人などの個人番号または法人番号を記載すると説明しています。売主が個人なら、ここでいう個人番号がマイナンバーです。番号を求められた事実だけで、不自然な要求と決めつける必要はありません。
一方、番号の必要性があることと、届いた依頼が正しいことは別です。当社は「税務で必要です」の一言で提出を急がせません。どの法人の、どの支払調書のためかを確認し、売主が説明を受け取れる状態にする。その順番で案内します。
2026年8月については、国税庁のF1-5に、税務署提出用の法定調書の書面様式を変更した案内があります。書面で提出する際は掲載中の最新様式を使うという内容です。2026年8月から、家を売る全員に新しい番号提出義務ができたという案内ではありません。
私は、様式変更の案内を見て新旧を確認できる点はよいと考えます。ただ、売主に伝えるときは「書面の変更」と「自分の取引が対象か」を分けたい。更新年月だけを見せて書類を急がせても、持ち主の疑問は解けないからです。
疑問1・誰への売却でも必要なのか
この支払調書の対象は、対価を支払う法人と一定の個人不動産業者です。通常の提出範囲は、同じ売主に対するその年の支払合計が100万円を超える場合です。国税庁No.7442は2026年4月1日現在の法令等に基づいて説明しています。
個人不動産業者でも、主として建物の賃貸借の代理・仲介を営む場合は提出義務の対象から除かれます。したがって、「買主が個人」という情報だけで判断せず、不動産業者としての購入か、通常の個人の住宅購入かを分けて確かめます。
| 売却相手 | 通常の取引で確認すること |
|---|---|
| 法人 | 支払合計と支払調書の作成担当、番号の提出窓口 |
| 個人の不動産業者 | 提出義務のある事業者に該当するか |
| 不動産業者ではない個人 | この支払調書の提出義務者には該当しない。番号依頼があれば別の利用目的を確認 |
100万円は「売却益」や「売主の手取り額」の線ではありません。通常は同一人への年間支払合計で見る基準です。仲介手数料や購入時の費用を引いて、100万円以下かを考える話ではない、と読み分けてください。
国税庁No.7442による基準です。消費税等は原則として含めますが、明確に区分されていれば除いて判断しても差し支えないとされています。公共事業に伴う法律上の買取り等には別の提出範囲・時期があります。本記事の通常の売買と同じ基準では判定しません。
当社は、仲介で売るか買取を選ぶかという呼び方だけでは番号の要否を判断しません。仲介による売却でも、買主が法人なら対象になり得るからです。売り方と買主の属性を別々に見ると、説明が整理できます。
疑問2・誰に、どの方法で渡すのか
売主が確認する提出窓口は、支払調書を作る買主側の担当者、または委託関係が確認できる窓口です。支払調書そのものの提出先である税務署と、売主が番号を渡す相手を分けて把握します。
国税庁「本人確認に関するFAQ」Q1-1は、番号の提供を受ける際に番号確認と身元確認が必要と説明しています。正しい番号か、その番号の持ち主か、という二つの確認です。カードを持っていない場合にも、個人番号入りの住民票の写しと運転免許証などの組合せが示されています。
取引時の本人確認のためにカードを見せることと、支払調書のために個人番号を提供することは同じではありません。IC情報の照合など、売買時の確認については不動産売却の本人確認と2027年4月の変更で分けて説明しています。
私からの提案は、次の質問への回答を受け取ってから、指定された方法で提出することです。これは体験談ではなく、売主の手元で確認できる順序についての考えです。
- 利用目的は「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の作成ですか。
- 支払者となる法人名と、受領する窓口名を教えてください。
- 別の会社が受け取る場合、誰から何を委託されていますか。
- 必要な書類、本人確認の方法、提出期限、保管・廃棄の扱いを教えてください。
届いたメールにそのまま返信する前に、既に把握している連絡先で窓口を照合します。当社への通常の相談フォームには、番号やカードの画像を記入・添付しないでください。まず依頼の内容だけを知らせていただけば、誰に確認する話かを整理できます。
意外に感じるかもしれませんが、国税庁は、受取人へ交付する支払調書の写しには個人番号を記載できないと説明しています。税務署へ出すものには記載し、売主へ渡す写しには載せない。自分の控えに番号が見当たらなくても、それだけで記載漏れとは判断できません。
疑問3・断ったら売却できないのか
番号を提供できない場合の税務上の扱いと、売買契約を履行できるかという判断は分けます。国税庁の法定調書FAQだけを根拠に、番号がなければ売却不能とも、断っても取引に影響しないとも言い切れません。
国税庁「法定調書に関するFAQ」Q1-2は、番号の記載が法定の義務であることを伝えて提供を求めるよう、提出する側に案内しています。得られなかった場合は経過等の記録・保存を勧め、番号がない書類も収受する扱いを示しています。記録・保存自体は法令上の義務ではないとの注記もあります。
私は、この扱いを「だから出さなくてよい」と売主へ案内することには賛成しません。一方で、利用目的や受領者が分からない段階で番号だけ先に送るのも違うと考えます。説明を求め、確認できた窓口へ協力する。その途中で不明点があれば、内容を残して税務署や税理士へ確かめます。
正直に言えば、個々の契約書も提出依頼も見ずに、どこまで待ってよいと線を引くことには迷いがあります。決済日が近いのか、まだ条件交渉中なのかでも、調整の仕方は変わります。分からない部分は「番号を出さない自由」で片づけず、依頼の期限と契約上の扱いを別々に確認したいのです。
支払調書は売主自身の確定申告を済ませる書類でもありません。手取りの見通しを立てるには、売却代金だけでなく購入時の費用を確かめる作業が残ります。資料の探し方は不動産売却の取得費の調べ方を参照し、申告の要否や税額は税理士へ相談してください。
番号の準備と、売却先の判断を分ける
法人へ売るかどうかは、番号提出の手間だけで決めず、売却価格、費用を引いた手取り、引渡し条件をそろえて比較します。番号の利用目的を確認したことは、売却先を決めたことを意味しません。
私は、番号を渡す準備を、売る決断の代わりにしてほしくありません。「ここまで書類をそろえたから、この相手に売らないと悪い」と考える必要はない。契約前なら条件を見比べる時間を残し、契約後なら合意済みの内容に沿って段取りを確認する。持ち主が今どの段階にいるかを先に確かめます。
当社は買主にならず、買取・買取保証を率先して行いません。そのかわり、買取を希望する場合も価格と条件を比較する材料を整えます。買取という選択自体は否定しません。当社の媒介で売却が成立すれば仲介手数料が発生するため、その費用も手取りの比較に入れます。
法人への売却条件を見直す際は、「買い取ります」と言われたら先に確認したい3つのことも使えます。番号の管理への納得と、価格への納得は別々に確認して構いません。
今日することは、依頼元へ「書類名・受領者・提出方法を教えてください」と一通送ることです。番号そのものはその質問に添えません。当社は、返ってきた説明を整理し、売主が次に何を確認するかを案内します。税務上の対象判定は税務署・税理士へ、契約の個別判断は弁護士などの専門家へご確認ください。
出典(2026年10月2日確認):国税庁「F1-5 不動産等の譲受けの対価の支払調書(同合計表)」、「No.7442 提出範囲等」(2026年4月1日現在法令等)、「法定調書に関するFAQ」Q1-1・Q1-2、「本人確認に関するFAQ」Q1-1。制度・様式・取扱いは変更されることがあります。非居住者への支払いなどを含む個別の税務判断は、税務署または税理士へご確認ください。
よくある質問
個人の買主に家を売る場合もマイナンバーは必要ですか。
不動産業者ではない個人が買う通常の売買では、買主はこの支払調書の提出義務者に当たりません。ただし、個人の不動産業者には対象となる場合があります。「個人だから不要」と一括りにせず、番号を求められたら書類名と利用目的を聞いてください。ほかの税務手続きでの要否とは別に確認します。
マイナンバーカードを持っていないと提出できませんか。
カードがなくても、番号確認と身元確認を別の書類で行う方法があります。国税庁は、個人番号が記載された住民票の写しと運転免許証などの組合せを示しています。必要書類と提出方法は、買主側の確認済みの窓口へ先に聞いてください。番号を知らせることと、カードの画像を誰にでも送ることは別です。
売主に渡された支払調書の写しに番号がなくてもよいですか。
国税庁は、受取人に交付する支払調書の写しには個人番号を記載できないと説明しています。税務署へ出す支払調書には記載するため、両者を混同しないでください。売主の写しに番号がないことだけで不備とは判断できません。記載内容に疑問があれば、支払者の担当窓口へ確認します。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。