リースバックとリバースモーゲージ|3つの違い

自宅に住み続けたい。でも、手元のお金も増やしたい。売却代金を受け取る案と、自宅を担保に借りる案を並べると、どちらも「家を使って資金を作る方法」に見えます。ところが、契約後の持ち物と支払いは別物です。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。宅地建物取引士として、当社は受取額だけで売却を勧めません。磐田市で自宅の売却を検討する方にも、売った後の住まいと、借りた後の返済を一枚に並べていただきたいと考えています。
住宅金融支援機構は2026年2月10日、リ・バース60とリースバックの違いを解説する動画の公開を発表しました。両者を混同するケースがあるためです。本稿では、一般的なリバースモーゲージとの違いも分け、所有権・毎月の支出・資金用途の3つで比較します。
違い1 売って借りるか、所有したまま借りるか
リースバックは自宅を売却し、賃貸借契約を結んで同じ家に住む方法です。リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りる仕組みです。生活する住所が同じでも、前者は借家、後者は借入の担保となる持ち家です。
売却代金を受け取りながら引っ越しを避けられる点は、リースバックの良さです。ただし、所有権は買主へ移ります。「家が残る」と「自分の所有で残る」は同じ意味ではありません。住める期間、家賃の改定、修繕費の負担は、売買代金とは別に契約で確認します。
自宅を所有しながら資金を調達できる点は、リバースモーゲージの良さです。一方で、借入元金を返す条件が残ります。家を売らずに借りられることと、将来も家を手放さずに済むことは分けて考えます。返済時期や相続人の対応を、利用予定の金融機関に確かめます。
当社は「住み続けられる」という説明だけで判断せず、契約後に何を所有し、どんな条件で住むのかを先に整理します。家賃と契約期間の読み方は、リースバックの家賃負担を確認する記事で詳しく扱っています。
違い2 毎月払うのは家賃か、借入の利息か
リースバックでは毎月の家賃、リバースモーゲージでは商品の条件に応じた利息などが支出になります。住宅金融支援機構の公式FAQも、この支払いの違いを比較表で示しています。月額が小さいだけで、総負担が小さいとは決まりません。
例えばリ・バース60は、毎月は利息を支払い、元金は契約者が亡くなったときなどに返す住宅ローンです。機構の2026年2月の資料では、相続人の自己資金等による一括返済か、担保物件の売却代金による返済が示されています。連帯債務の場合は、両方の債務者が亡くなったときと説明されています。
ここで見落としたくないのは、利息を払い続けても、その支払いで元金は減らない点です。家賃と利息の月額だけを見れば、借入の方が軽く見える場合があります。しかし、最後に返すお金を計算から外すと、比較が崩れます。
変動金利の商品では、金利の見直しで支払額が変わる可能性があります。リースバックの家賃も、契約に応じて見直される場合があります。国民生活センターの2025年5月21日付資料も、家賃を払い続けられるかの確認を促しています。
当社は、月額のほかに「支払いが増えた場合」と「予定より長く住む場合」の欄を作ります。年金などの収入から住居費を払った後、生活費をどれだけ残せるかを見るためです。固定資産税、保険、修繕、契約費用も、誰が負担するかをそれぞれの見積書で確認します。
違い3 生活費に使えるか、住宅関連に限るか
一般的なリバースモーゲージとリ・バース60は、使えるお金の目的を分けて確認します。住宅金融支援機構のFAQでは、一般的な商品は生活資金などにも利用できる一方、リ・バース60は住宅関連の用途に限ると説明しています。
リ・バース60には、住宅のリフォーム、建替え、購入、住宅ローンの借換えなどの使途があります。名前が似ていても、日々の食費や自由な生活費のために借りる商品として一括りにはできません。利用したい商品名を出し、「この支出に使えるか」と金融機関へ確認する必要があります。
リースバックで受け取るのは売却代金です。ただし、売却価格がそのまま使える現金になるとは限りません。既存の住宅ローンの返済、登記や契約の費用、仲介手数料が生じる取引ならその費用、税金の見込みを分けて引きます。家賃のために残す資金も、生活費と分けておきます。
借入も、承認された限度額と今日使える現金は別です。一括受取か、必要なときに借りる形かで資金計画が変わります。対象地域や担保の条件なども商品ごとに違います。自宅の住所と資金用途を伝え、利用可能な条件を書面で受け取ってから比較します。
当社は、最初に「何のために、いつ、いくら必要か」を尋ねる方針です。修繕費の一時的な不足なのか、毎月の生活費の不足なのか。この答えが違えば、同じ売却価格でも判断は変わります。
仮の1,000万円を、10年後まで並べてみる
売却と借入の比較は、最初の受取額、期間中の支払い、残る返済義務を別々に置くと整理できます。以下は計算の仕方を示す仮定です。実際の売却価格、融資条件、相場を示すものではありません。
リースバック側は諸費用等を引いた受取額を1,000万円、家賃を月8万円と仮定します。10年間家賃が変わらなければ、8万円×12か月×10年=960万円です。受取額から家賃だけを差し引くと40万円です。生活費などを使えば、手元の残額はさらに減ります。
借入側は元金1,000万円を一括で借り、年3%の利息を10年間払うと仮定します。金利も元金も変わらない単純計算なら、利息は年30万円、10年で300万円です。借入金から利息だけを引いた残額は700万円ですが、元金1,000万円の返済義務は別に残ります。
売却側の1,000万円は諸費用等控除後の仮定額、借入側は借入元金です。図では借入時の費用、双方の生活費・維持費、将来の家の価値や処分費用を含めていません。返済時期も10年後と決めつけていません。受取額からの差引残額は、資産全体の損得ではありません。
この例で「借入の方が660万円得」とは言えません。所有権と返済義務が違うからです。反対に、家賃が受取額に近づいたことだけで、リースバックを否定するのも早計です。その期間に住まいを確保する価値と、ほかの選択肢に必要な費用もあります。
当社は、手取り表に売却価格だけを書く方法を採りません。買取の提案を受けたときの確認事項と同じく、支払う費用と契約条件までそろえます。借入については金融機関の正式な返済見込みを使い、当社の仮定で利用可否を決めません。
決める前に、住みたい期間と必要額を一枚にする
売却を選ぶ前の最初の一歩は、必要な現金と住みたい期間を書き出すことです。そのうえで、売却後の手取りと家賃、借入後の支払いと元金の扱いを並べます。契約するかどうかは、その紙が埋まってからで構いません。
私はこう考えます。家を売れば当面の不安が軽くなる場合でも、その先の家賃まで納得していなければ、判断の材料はまだ足りません。逆に、所有を守りたい気持ちだけで借入を選び、返済時の負担を見ないことにも迷いがあります。引っ越さずに暮らせる価値を、金額だけで決めてよいとも思いません。
受取額の大きさだけでは、売却の答えは出しません。当社は買主にならず、買取や買取保証を率先して行いません。その代わり、売主様の条件に合わせ、仲介で売る場合を含む手取りと期限を整理します。当社が媒介する取引では仲介手数料が生じるため、その見積もりも比較に入れます。
今日書くのは「必要額・使い道・住みたい期間・毎月払える額」の4欄で十分です。転居も選択肢に入るなら、自宅を売るか貸すかの比較も判断材料になります。ただ、まずは住み続けたいという希望と、今回の2つの方法が合うかを確かめます。
出典・確認日:2026年10月22日。住宅金融支援機構・2026年2月10日発表(1〜2頁)、同機構の公式FAQ・Q&A4479、国民生活センター・2025年5月21日公表資料。
制度・商品条件・費用は変わる場合があります。融資の対象、資金用途、返済条件は利用予定の金融機関へ確認してください。個別の税務・登記・相続は税理士・司法書士などの専門家に、契約上の疑問は弁護士などに確認してください。
よくある質問
リバースモーゲージなら家を家族に残せますか?
自宅を担保に借りるため、利用しただけで所有権を売却するわけではありません。ただし元金の返済義務が残ります。リ・バース60では、死亡時に相続人の自己資金等か担保物件の売却代金で返す方法が示されています。家を残せるかは返済資金と契約条件によります。利用予定の金融機関と司法書士などに確認してください。
リ・バース60で生活費を借りられますか?
リ・バース60は住宅ローンで、住宅関連の用途に限られます。日々の食費などの生活費を自由に借りる商品とは異なります。住宅金融支援機構のFAQは、生活資金にも使える一般的なリバースモーゲージと区別しています。検討する商品名と具体的な使い道を金融機関へ伝え、資金用途の条件を確認してください。
受け取れる金額が多い方を選んでもよいですか?
受取額だけでは判断できません。売却は諸費用等を引いた手取りと家賃、借入は利用できる現金と利息、残る元金を分けて比べます。同じ期間でも、所有権と返済義務が違います。生活費や維持費も加え、必要額・使い道・住みたい期間・毎月払える額を書き出してから、見積書と契約条件をそろえると判断しやすくなります。
SELL WITH CONFIDENCE
早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
記事の内容は公開時点の一般的な情報です。税務・登記・相続の個別のご判断は、税理士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。