国土法の届出は売主も必要?2026年の変更

まとまった土地を売ろうとして、「国土法の届出が要る」と聞いた。売主も役所へ行くのか。法人に売ると書類が増えるのか。売却代金の相談とは別に、契約前に整理しておきたい話です。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。宅地建物取引士として、今回は静岡県内の土地売買を前提に説明します。国土利用計画法の事後届出は買主側の手続きですが、売主が何も準備しなくてよい、という話ではありません。
国土法の届出義務者は、売主ではなく買主
国土利用計画法第23条第1項に基づく土地取引の事後届出は、土地の権利を取得する人が行います。通常の売買なら買主です。静岡県の案内では、2026年10月16日確認時点で県内全域が事後届出制の区域です。
売主と買主が連名で同じ義務を負う制度ではありません。売主が法人であることだけで、売主側に今回の追加事項を届け出る義務が生じるわけでもありません。まず「誰が取得する取引か」を分けて考えます。
期限は契約締結日を含めて2週間以内です。代金を受け取る決済日や、土地を引き渡した日が起点ではありません。静岡県は、2週間目が土日・祝日など行政機関の休日なら、次の開庁日が期限になると案内しています。
提出先は土地のある市役所・町役場の担当窓口です。県の案内には、磐田市・掛川市などは各市の取扱いを確認するよう記載があります。提出方法や添付書類は、所在地の窓口で確認してください。
私の判断は、届出義務と実務の手伝いを分けることです。「買主の義務だから」で契約の打合せを終えたくありません。誰が書類を準備し、誰が提出し、いつ受付を確認するか。仲介会社が支援する場合も、その分担を契約前に言葉にしておくべきだと考えます。
面積は2,000・5,000・10,000㎡で確認する
静岡県の案内では、届出の面積要件は都市計画の区域によって3段階です。「以上」なので、基準と同じ面積も対象になります。土地の用途や見た目ではなく、区域と面積を照合します。
| 土地がある区域 | 届出が必要になる面積 |
|---|---|
| 市街化区域 | 2,000㎡以上 |
| 市街化調整区域・非線引きの都市計画区域 | 5,000㎡以上 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡以上 |
面積要件の出典:静岡県「国土利用計画法に基づく土地取引の届出」(2026年4月1日更新、2026年10月16日確認)。二つの区域にまたがる場合は、県の案内では表の上段にある区分の面積で判断します。具体的な該当性は所在地の窓口に確認してください。
意外に見落としやすいのは、売る土地が1件で基準未満でも、届出が必要になる場合があることです。県は、買主が取得する土地の合計で基準以上になる「買いの一団」を示しています。自分の土地の面積だけでは、買主側の取得計画まで分かりません。
例えば、市街化区域の隣接する1,200㎡と900㎡を、同じ買主が一体で利用するために取得する仮の例を考えます。合計は2,100㎡です。各契約が2,000㎡未満でも、それだけで届出不要とは判断できません。一団の土地への該当性を確認する場面です。
売主が土地を分筆したことと、買主の取得計画を分けて考える必要もあります。区画を小さくしただけで届出がなくなる、と販売計画に織り込まないこと。測量費や造成費を含めた売り方の比較は、土地売却は一括か分筆か、手取りで比べる3項目で整理しています。
掛川市の区域と用途地域の違いは、掛川市の不動産売却と非線引きの用途地域も参照してください。所在地ごとの売却相談の入口は掛川市の不動産売却です。市名だけで面積基準を決めず、対象地の区域を確認します。
2026年4月の変更は法人取得時の事項と様式
2026年4月1日の変更は、法人が土地の権利を取得する場合の届出事項の追加と様式の変更です。売主に届出義務を移したり、先ほどの面積基準を引き下げたりした変更ではありません。
国土交通省の2026年2月2日発表は、法人が権利取得者となる場合について、次の3事項を追加すると説明しています。
- 代表者の国籍等。
- 同一の国籍等を有する者が役員の過半数を占める場合の、その国籍等。
- 同一の国籍等を有する者が議決権の過半数を占める場合の、その国籍等。
代表者の欄が増えるだけ、とは読まないほうがよい改正です。役員や議決権についても、該当条件を確認する内容です。法人の設立準拠法国は2025年の改正で追加済みと国土交通省は説明しています。2026年の追加事項と混同しないようにします。
静岡県の2026年4月1日更新ページは、4月1日以降の届出には新様式を使うと案内しています。契約日が2026年3月31日以前でも、届出日が4月1日以降なら新様式です。売主にとっては、買主や仲介会社が保管していた古い書式を使わないか、確認する材料になります。
私は、取得する法人の情報を詳しく把握する趣旨は理解できます。届出に何を書くかが具体化されれば、買主側も準備を分担しやすくなります。売主にも、契約後に必要な作業を見通せる利点があります。
その上で、私は書式変更の説明だけでは足りないと考えます。法人内部の確認を誰が担うのかまで決めないと、契約後の2週間を準備に使ってしまいます。売主が買主の国籍等を推測して記入する話ではありません。買主側が正しい情報を用意する分担を確認したいところです。
売主は地番・面積・契約日を先に揃える
広い土地を売る前の売主側の準備は、土地の資料を揃え、買主側の届出日程とつなぐことです。売却を決める前でも、地番と面積の一覧は作れます。届出書の記入を先に始める必要はありません。
- 売却候補の土地を地番ごとに一覧にする。面積、共有の有無、隣接する土地を整理し、公図と登記事項証明書を照合します。
- 都市計画の区域を確認する。所在地の窓口で、どの面積基準を使うか、区域にまたがるかを聞きます。
- 買主側の取得計画を確認する。周辺の取得と合わせて一団の土地になる可能性を、仲介会社を通じて確認します。
- 契約前に提出担当と期限を共有する。契約日、提出予定日、最新様式、必要資料、受付確認の担当を一枚に書きます。
地番を探すところから始める方は、公図の取り方と土地売却前の3手順を参照してください。公図だけで正確な境界や面積を確定できるとは限りません。資料同士に違いがあれば、その違いを窓口や専門家への質問にします。
共有地も、持分に応じて面積を割ればよいとは限りません。静岡県は原則として共有地全体の面積で判断し、マンション売買等には例外があると説明しています。持分だけの売却なら、その取引条件を伝えて面積の扱いを確認してください。
私は、買主の取得計画が未定の段階で、どこまで資料を先に作るかは迷います。不要な測量や追加調査に売主のお金を使いたくないからです。まず手元の公図と登記の資料で対象地を整理し、不足が分かってから費用を掛ける。この順番を取りたいと考えています。
届出を理由に売り方を急いで変えない
国土法の届出の要否と、仲介で売るか買取を選ぶかは、別々に判断する話です。静岡県は届出価格について指導・勧告等を行わないと案内しています。届出があるから希望価格が認められない、と受け取る必要はありません。
ただし、届出が済めば希望する建物を建てられる、という意味でもありません。県は土地の利用目的を審査すると説明しています。開発や建築などの個別手続きの要否は、それぞれ別に確認します。届出、利用可能性、価格の見込みを一つの答えにまとめないことです。
私はこう考えます。「売主の義務ではない」で話を切ると、売主の段取りは残ったままです。誰が、いつ、何を出すのかまで決めて、初めて売却の準備になります。制度名を覚えることより、契約後に書類を探し回らない状態を作るほうが、持ち主の方の役に立ちます。
当社は、届出の話だけを理由に買取へ売り方を誘導しません。当社が買主になることはなく、買取・買取保証を率先して行いません。そのかわり、地番・区域・取得計画の確認事項を整理し、買主側の担当と提出日程を共有する進め方を取ります。
買取や買取保証という方法そのものを否定する考えではありません。期限や管理負担を優先して選ぶ余地はあります。その場合も、届出が必要かどうかと、売却費用を差し引いて手元に残る額を分けて比較します。国土法の届出だけから、買取のほうが有利とは判断できません。
今日できる確認は一つです。売却候補の地番と面積を一枚に並べ、所在地の窓口に「この区域では何㎡から対象ですか」と聞く。買主が決まっていなければ、その段階だと伝えます。まだ売ると決めていなくても、土地を判断する材料は増やせます。
出典(いずれも2026年10月16日確認):国土交通省「大規模な土地取引の際の届出事項に法人代表者の国籍等を追加」(2026年2月2日発表)/静岡県「国土利用計画法に基づく土地取引の届出」(2026年4月1日更新)。制度・区域・様式は変わることがあります。本稿は静岡県内の通常の土地売買の事後届出を扱う一般情報です。個別の届出要否・一団の土地・提出期限は所在地の市町窓口へ、契約上の個別判断は宅地建物取引士や弁護士など専門家へ確認してください。
よくある質問
売主も国土法の届出書を提出するのですか。
通常の売買の事後届出義務者は、土地の権利を取得する買主です。売主が法人でも、それだけで売主に今回の追加事項の届出義務が生じるわけではありません。ただし、買主側の届出に使う地番・面積などの確認は売主側とも関わります。契約前に準備と提出の担当を共有し、個別の要否は所在地の市町窓口で確認してください。
基準より小さく分筆して売れば、届出は不要ですか。
分筆後の各区画が基準未満という理由だけでは判断できません。静岡県は、買主が取得する土地の合計で面積基準を満たす「買いの一団」も届出対象としています。周辺の土地の取得計画、一体利用の予定、区域と面積を確認する必要があります。自分の土地だけの面積で決めず、具体的な取引条件を市町窓口に伝えて確認してください。
2026年4月の新様式は、契約日で使い分けますか。
静岡県では届出日で判断します。2026年4月1日以降の届出は、契約日が3月31日以前でも新様式での提出が必要です。法人取得時は代表者の国籍等に加え、条件に該当する役員や議決権の国籍等も追加されました。契約日を含め2週間以内の提出に向け、買主側で最新様式と記載事項を確認してください。
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早く売る方法ではなく、
多く残す方法から考えます。
無料で相談する →査定・初回相談は無料です。売却をお約束いただく必要もありません。当社が買主になることはありません(買取をお選びの場合は、複数社の見積もりを比較してご提示します)。

文責:大石浩之(富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士 静岡県知事 第027186号)
静岡県磐田市で不動産業を営んでいます。売却のご相談はかんたん入力のフォームから。
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