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行動経済学

売り出し価格が判断を縛る

プロスペクト理論とアンカリング効果が売り出し価格の決定に及ぼす影響

富士ヶ丘サービス株式会社代表取締役 大石 浩之初出 2026.08.23

要旨

本稿の問いは、売り出し価格という一つの数字が、その後の売却プロセス全体をどこまで規定するのかである。標準的な経済学は、価格を需要と供給が出会う結果として扱う。しかし実務で観察されるのは逆の順序である。最初に置かれた数字が、売主自身の期待、値下げの可否、買主の評価、そして最終的な手取りまでを縛っていく。

この現象を説明する枠組みとして、本稿はカーネマン=トベルスキー(1979)のプロスペクト理論と、トベルスキー=カーネマン(1974)が定式化したアンカリングと調整のヒューリスティクスを用いる。前者は、人が到達した水準そのものではなく参照点からの変化として損得を評価し、同じ幅の損失を利得より重く感じることを示した。後者は、判断の出発点として与えられた数字から人が十分に離れられないことを示した。

この二つを重ねると、売り出し価格の問題は次のように再構成される。売主はまず何らかの経路で参照点を得る。購入時の価格、相続税評価額、近隣の噂、そして最初に見た査定額である。この参照点より下の価格はすべて損失として符号化され、値下げは合理的な調整ではなく損失の確定として経験される。本稿は、この構造を分解したうえで、参照点の置き方そのものを設計する手順を示す。

プロスペクト理論アンカリング参照点損失回避売り出し価格査定額

1. はじめに——問題の所在

不動産の売却において、最初に決めなければならないのは価格である。より正確に言えば、売り出し価格という一つの数字を紙の上に置くことである。標準的な経済学の教科書では、価格は需要と供給が出会った結果として事後的に決まる。ところが実務の順序はこれと逆になっている。数字が先に置かれ、そこから需要が探索される。売り出し価格は結果ではなく出発点である。

この順序の逆転は、単なる手続き上の都合ではない。出発点として置かれた数字は、その後の判断のすべてに影響を及ぼす。売主はその数字を基準に自分の資産の価値を認識するようになる。値下げの提案は、その基準からの後退として経験される。買主は掲示された数字を見て物件の質を推測する。仲介業者は、その数字が動かないことを前提に販売戦略を組む。一つの数字が、以後の数か月を規定する。

本稿の問いは、この規定力がどこから来るのかである。もし人が完全に合理的であれば、売り出し価格は単なる交渉上の申し出にすぎず、情報が更新されれば速やかに修正されるはずである。市場からの反応が乏しければ価格は下がり、反応が過剰であれば上がる。売主にとって重要なのは最終的な手取りだけであり、途中に掲げた数字に愛着を持つ理由はない。しかし現実にはそうならない。

最初の数字
判断の基準
その後の選択
売り出し価格は交渉の出発点であると同時に、売主自身の判断の基準になる。この二重の役割が、価格を動かしにくくする。

1.1 本稿の方法

本稿は、この現象を行動経済学の二つの概念によって説明する。第一はカーネマン=トベルスキー(1979)のプロスペクト理論である。彼らが示したのは、人が選択肢を最終的な富の水準そのものとしてではなく、ある参照点からの変化として評価するということ、そして同じ幅の損失が同じ幅の利得より重く感じられるということであった。第二はトベルスキー=カーネマン(1974)が定式化したアンカリングと調整のヒューリスティクスである。数量的な判断を求められたとき、人は手近な数字を出発点とし、そこから調整するが、その調整は多くの場合不十分に終わる。

この二つを重ねると、売り出し価格の問題は次のように書き換えられる。売主はまず何らかの経路で参照点を手に入れる。その参照点より下の金額はすべて損失として符号化される。値下げは情報に基づく合理的な修正ではなく、損失の確定として経験される。そして参照点そのものは、売主が熟慮の末に選んだものではなく、たまたま最初に目にした数字であることが多い。

1.2 本稿が扱わないこと

あらかじめ範囲を限定しておく。本稿は、売主が非合理であるから損をしている、という主張をしない。プロスペクト理論が明らかにしたのは、人間の判断が特定の方向に系統的に偏るということであって、その偏りが個人の努力や意志の強さで消えるということではない。後述するノースクラフト=ニール(1987)の研究は、不動産の専門家であってもアンカーの影響を受けたことを報告している。対処すべきは人ではなく手順である。

また本稿は、売り出し価格を高くすべきか低くすべきかという一般論を出さない。適切な水準は物件と市場の状況によって異なる。本稿が問うのは水準ではなく、その水準が何によって決まったのかという由来である。由来が管理されていなければ、水準の議論には意味がない。

以下の構成を述べる。第2節でプロスペクト理論の構造を数式を用いずに再構成する。第3節で参照点がどこから来るのかを、不動産に固有の四つの経路に分けて検討する。第4節でアンカリング効果を扱い、第5節で複数社の査定額のばらつきが参照点を揺らす構造を論じる。第6節で予想される反論に応答し、第7節で売主の実務に落とす。第8節で限界と残された課題を述べる。

なお筆者は静岡県磐田市で不動産の媒介を業とする者である。自社で買い取る事業を持たないため、当社が提示する査定額は当社が支払う金額ではなく、市場で目指す金額である。この立場の違いが査定額という数字の性格をどう変えるかは、第5節で扱う。立場を隠して中立を装うことはしない。

2. プロスペクト理論の構造

カーネマン=トベルスキーが1979年に提示したプロスペクト理論を、数式を使わずに再構成しておく。ここを曖昧にしたまま「人は損を嫌うものだ」と述べても、なぜ売り出し価格が動かないのかを説明したことにはならない。理論の要点は三つある。参照点、価値関数の形状、そして確率の歪みである。

2.1 参照点——人は水準ではなく変化を評価する

第一の要点は、評価の対象が結果そのものではなく、参照点からの変化だという点である。それ以前の期待効用理論は、選択の帰結を最終的な富の水準で評価すると想定していた。二千万円を手にする、という事実だけが問題であって、そこに至る経緯は評価に影響しないはずであった。

プロスペクト理論はこれを退ける。同じ二千万円でも、二千五百万円を期待していた人にとっては五百万円の損失であり、千五百万円を覚悟していた人にとっては五百万円の利得である。人が感じるのは水準ではなく差分である。そして差分を測る原点、すなわち参照点は、外から与えられたり、過去の経験から持ち越されたり、他人の状況との比較から生まれたりする。参照点は固定された物理量ではなく、状況によって動く。

この点が不動産売却において決定的な意味を持つのは、参照点が売却の成否よりも先に、しかも半ば偶然に決まってしまうからである。第3節で見るとおり、売主の参照点は購入時の価格や相続税評価額など、市場の現在の需給とは無関係な数字から立ち上がることが多い。にもかかわらず、以後のあらゆる価格はその原点からの距離として体験される。

2.2 価値関数の形状——損失は利得より重い

第二の要点は、参照点からの変化を評価する関数の形である。カーネマン=トベルスキーは三つの特徴を指摘した。原点で折れ曲がること、利得の側も損失の側も逓減すること、そして損失側の傾きが利得側より急であることである。

損失側の傾きが急であるという性質は、損失回避と呼ばれる。同じ幅の変化であっても、失うほうが得るよりも強く感じられる。この非対称は、売却の場面では次のように現れる。二千万円で売り出した物件が二千百万円で売れたときの喜びと、千九百万円に下げざるを得なかったときの痛みは、金額の幅が等しくても釣り合わない。後者のほうが重い。したがって売主は、期待値としては同等の選択肢のうち、損失側に踏み込む選択を避けようとする。

利得の側
参照点
損失の側
価値関数は参照点で折れ曲がり、損失側の傾きが利得側より急になる。同じ幅でも、失うほうが強く感じられる。

逓減という性質も見逃せない。参照点の近くでは小さな変化が敏感に感じられるが、参照点から遠ざかるほど感度は鈍る。売り出し価格から百万円下げることには強い抵抗があるが、すでに三百万円下げたあとの追加の百万円は、相対的に軽く感じられる。値下げが一度始まると加速しやすいのは、この形状から説明できる。

2.3 確率の歪み——小さな可能性を重く見る

第三の要点は、確率の扱いである。プロスペクト理論では、人は確率をそのまま用いず、決定の重みへと変換する。その変換では、小さな確率が過大に、中程度から大きな確率が過小に評価される傾向があるとされる。

売却の文脈では、この歪みは次のように働く。「高く買ってくれる買主がどこかにいるかもしれない」という低い可能性が、実際の見込み以上に重く評価される。一方で「このまま売れずに一年が過ぎる」という、実務的にはかなり起こりやすい事態の確率は、割り引いて受け取られる。結果として、高い売り出し価格を維持する判断が主観的には合理的に見えてしまう。

2.4 理論が予測すること

以上を売却に当てはめると、三つの予測が導かれる。第一に、売主は参照点を下回る価格の提示を、単なる情報ではなく損失として受け取る。第二に、値下げの決断は、期待される時間短縮の利益が大きくても先送りされやすい。第三に、参照点が高く置かれた売主ほど、高い売り出し価格を維持し、売却までの期間が長くなる。

第三の予測については、住宅市場の実データを用いた検証が行われている。ジェネソーヴ=メイヤー(2001)は、購入時の価格を下回る水準での売却に直面した売主が、そうでない売主より高い売り出し価格を設定し、成約に至る割合が低くなる傾向を報告した。参照点は心理の内部にとどまらず、市場に観測可能な痕跡を残す。

註:プロスペクト理論はその後、トベルスキー=カーネマン(1992)によって累積形式に拡張された。本稿では拡張版の技術的な差異には立ち入らず、参照点・損失回避・確率の歪みという三つの骨格のみを用いる。

3. 売主の参照点はどこから来るか

プロスペクト理論において参照点は理論の外側から与えられる。何がそれを決めるかは理論自身が答えない。したがって不動産に適用するには、売主の参照点が実際にどこから立ち上がるのかを、経験に即して特定しなければならない。本節では四つの経路に分けて検討する。

3.1 購入時の価格

最も強い参照点は、その物件を自分が買ったときの価格である。三十年前に二千五百万円で購入した家を、いま千二百万円で売ることになれば、売主はこれを千三百万円の損失として受け取る。会計上も税務上もそうした損失は認識されないし、三十年分の居住によって得た便益は帳消しにならない。それでも主観的には損失である。

この参照点の厄介さは、それが名目額で保存されている点にある。購入時と現在では貨幣の価値も金利環境も住宅の仕様も違うが、記憶に残るのは数字そのものである。ジェネソーヴ=メイヤー(2001)が住宅市場で見出したのも、この名目上の購入価格を下回る売却を避けようとする行動であった。物価や実質価値で調整した水準ではなく、契約書に書かれた数字が基準になる。

相続で取得した物件では、この経路は弱まる。相続人は自分で買っていないため、購入価格の記憶を持たないことが多い。ところが、その空白は別の数字によってただちに埋められる。

3.2 相続税評価額と固定資産税評価額

第二の経路は、税務上の評価額である。相続の手続きの中で、相続人は路線価に基づく相続税評価額を目にする。固定資産税の納税通知書には、毎年、固定資産税評価額が記載されている。これらは公的機関が示した数字であり、権威を帯びて見える。

しかしこれらの評価額は、市場で成立する価格とは目的も算定方法も異なる。相続税評価額は課税のための評価であり、路線価は地価公示価格の水準に対して一定の割合を目安として設定されていると国税庁が説明している。固定資産税評価額はさらに別の基準による。いずれも市場価格の代理指標としては設計されていない。

にもかかわらず、これらの数字は参照点として強力に機能する。理由は二つある。第一に、公的な文書に印字されているという形式が信頼性の印象を与える。第二に、売主が他に手がかりを持たない時点で、最初に目に入る数字だからである。これは次節で扱うアンカリングの典型的な作動条件である。

購入時の価格
税務上の評価額
近隣の話
売主の参照点は、現在の市場ではなく過去や周辺から立ち上がる。いずれも需給とは無関係な由来を持つ数字である。

3.3 近隣の事例と伝聞

第三の経路は、近所の家がいくらで売れたという話である。これは市場情報であるという点で、前の二つよりは関連性が高い。しかし伝わる過程で情報は劣化する。売り出し価格と成約価格が混同される。土地の面積や接道条件、建物の築年や状態の違いが落ちる。値引き交渉の有無が伝わらない。残るのは、桁と最初の二桁だけである。

さらに、伝わりやすい事例には偏りがある。予想外に高く売れた話は語られ、想定どおりに売れた話は語られない。近隣の伝聞から立ち上がる参照点は、この選択的な伝播によって系統的に上方へ偏る。売主に悪意はなく、語り手にも悪意はない。情報の伝わり方そのものが偏りを生む。

3.4 最初に見た査定額

第四の経路が、本稿の主題に直結する。売主が最初に依頼した不動産会社が提示した査定額である。多くの売主にとって、これは自分の物件について現在の市場を前提に示された、生涯で最初の数字である。

この数字は、前三者と決定的に違う性質を持つ。それは、提示する側が水準を選べるという点である。購入時の価格は変えられない。税務上の評価額も、近隣の伝聞も、提示者が自由に動かせるものではない。ところが査定額は、算定の方法と前提の置き方によって幅を持つ。そして提示する側には、その幅の中でどこを選ぶかについての誘因が働いている。この誘因の構造は第5節で詳しく扱う。

参照点の由来何を反映しているか提示者が水準を選べるか売主への影響
購入時の価格過去の市場と当時の条件選べない名目額のまま強く残る
税務上の評価額課税のための評価基準選べない公的な形式が権威を与える
近隣の伝聞劣化した市場情報選べない選択的な伝播で上方に偏る
最初の査定額現在の市場と提示者の判断選べる以後の判断の起点になる

四つの経路に共通するのは、いずれも売主が意図して選んだものではないという点である。参照点は、選ばれるのではなく、たまたま最初に現れる。この偶然性こそが、次節で扱うアンカリング効果の本体である。

4. アンカリング——最初の数字が判断を縛る

トベルスキー=カーネマン(1974)は、不確実な状況での判断に用いられる代表的なヒューリスティクスを三つ挙げた。代表性、利用可能性、そしてアンカリングと調整である。本節が扱うのは三つめである。

4.1 アンカリングと調整のヒューリスティクス

数量を推定するよう求められたとき、人はまず何らかの出発点を置き、そこから修正を加えて答えに至る。この出発点をアンカーという。問題は二つある。第一に、アンカーは問題の内容と無関係な経路から与えられることがある。第二に、そこからの調整が不十分に終わる。結果として、最終的な答えはアンカーの近くにとどまる。

彼らが示した実験の形式は単純である。ある数量について推定を求める前に、被験者に無関係な数字を見せる。その後の推定値が、見せられた数字の方向に系統的に寄る。被験者は自分がその数字に影響されたとは考えていない。影響は意識の外側で作動する。

この効果は、判断者が答えに確信を持てない領域ほど強く現れるとされる。自分の物件が現在の市場でいくらになるのか、売主は確信を持てない。第3節で見たとおり、手がかりも乏しい。アンカリングが最も効きやすい条件が揃っている。

4.2 不動産の専門家も影響を受ける

アンカリング研究の中でも、不動産に直接関わる古典としてノースクラフト=ニール(1987)がある。彼らは、実際の住宅を対象として、不動産の実務家と一般の学生の双方に物件を見せ、価値を評価させた。このとき、示された売り出し価格の情報だけを変えた条件を用意した。

報告された結果は二点にまとめられる。第一に、学生だけでなく実務家の評価も、示された売り出し価格の方向へ寄った。第二に、実務家は、自分の評価がその数字に影響されたとは考えていなかった。専門知識はアンカーへの免疫を与えなかったのである。

提示された数字
評価の偏り
引きずられる判断
不動産の実務家を対象とした研究群は、示された売り出し価格の方向へ評価が寄ることを報告している。専門知識は免疫にならない。

この知見の含意は重い。第一に、売主が自力で努力すれば偏りを避けられる、という前提が崩れる。第二に、査定を行う側もまた、既存の売り出し価格や売主が口にした希望額に引きずられうる。売主が「二千五百万円を希望しています」と最初に述べた面談と、何も述べなかった面談とでは、提示される査定額が異なりうる。アンカーは売主から業者へも流れる。

4.3 売り出し価格が買主に対して果たす二つの役割

アンカーは売主の内部だけで働くのではない。掲示された売り出し価格は、買主に対しても二つの働きをする。

第一は、交渉の起点としての役割である。値引き交渉は売り出し価格からの割引として組み立てられ、買主が提示する金額もその数字を基準に決められる。高い売り出し価格は高い交渉起点を意味する。

第二は、品質の推定材料としての役割である。買主は物件の質を直接には検証できない。そこで価格を質の代理指標として読む。相場からかけ離れて高い価格は「売主が現実を見ていない」という推測を招き、相場から著しく低い価格は「何か問題があるのではないか」という警戒を招く。

この二つの役割は互いに逆を向く。交渉の起点としては高いほうが有利だが、品質の推定材料としては、相場から離れすぎることが不利に働く。売り出し価格の設計とは、この二つの力の折り合いをつける作業である。単に高く出せばよいのでも、単に安く出せばよいのでもない。

4.4 検索の遮断という不可逆な損失

高すぎる売り出し価格には、交渉上の不利とは別の種類の損失が伴う。買主の検索から外れるという損失である。買主は物件情報を価格帯で絞り込んで探す。上限を二千万円と設定している買主の画面には、二千百万円の物件は表示されない。値引きの余地があるかどうか以前に、存在を知られない。

この損失が厄介なのは、あとから取り返しにくい点にある。価格を下げれば検索には表示されるようになるが、そのときにはすでに掲載期間が長期化しており、売れ残りという情報が付随している。第2節で述べた確率の歪みは、ここでも働く。「いま探していない誰かが将来現れる」という小さな可能性が過大に評価され、「最初の数週間で最も濃い買主層を逃す」という高い確率の事態が過小に評価される。

売り出し直後の期間は、新着として表示され、条件に合う買主が最も多く目にする時期である。この時期を高すぎる価格で消費することは、時間の損失であると同時に、機会の損失でもある。参照点に忠実であろうとする判断が、参照点の実現可能性そのものを削っていく。

5. 査定額のばらつきが参照点を揺らす

複数の不動産会社に査定を依頼すると、多くの場合、示される金額は一致しない。売主はこのばらつきを前にして、どの数字を信じるべきかという問題に直面する。本節では、このばらつきがなぜ生じるのか、そして売主の参照点にどう作用するのかを分解する。

5.1 ばらつきの三つの源泉

第一の源泉は、評価の技術的な幅である。取引事例比較法は、比較対象として選ぶ事例と、面積・接道・築年・設備などについて加える補正の置き方によって結果が動く。原価法における減価修正の見方も一様ではない。同一物件は世界に一つしかないため、評価は本質的に推定であり、推定である以上、幅を持つ。技術的に誠実な評価であっても、担当者によって数字は違う。

第二の源泉は、前提の違いである。三か月で売り切ることを前提とした金額と、一年かけてよいとした金額は同じにならない。更地にしてから売る前提か、現況のまま売る前提かでも変わる。前提が明示されなければ、二つの数字は比較できない。前提の異なる数字を並べることは、単位の異なる量を並べることに等しい。

第三の源泉が、誘因である。媒介契約を獲得したい会社にとって、高い査定額を示すことは受注の確率を高める。売主は数字の妥当性を独立に検証する手段を持たないため、比較の基準として金額そのものを用いやすい。この構造のもとでは、最も高い数字を示した会社が選ばれやすくなる。技術的な誠実さが報われにくい競争になっている。

複数社の査定
ばらつき
どれが基準か
査定額のばらつきは技術的な幅、前提の違い、受注の誘因という三つから生じる。由来を分けなければ比較にならない。

5.2 売主は最も高い数字を参照点にする

複数の数字を示されたとき、それらが参照点にどう変換されるかが問題である。理論的には、複数の推定値が与えられたなら、中心的な値を採るか、根拠の質で重みをつけるのが妥当だろう。しかし実際には、最も高い数字が参照点として残りやすい。

理由はプロスペクト理論から説明できる。いったん高い数字を見てしまうと、それより低い金額はすべて損失の領域に入る。中位の査定額を採用することは、高い査定額との差額を自ら手放す決定として体験される。損失回避が働く以上、この決定には抵抗が生じる。数字の妥当性を判断しているのではなく、損失を確定させることを避けているのである。

ここに、査定額の競争が持つ非対称な効果が現れる。高い数字は一度示されれば参照点として残り、後から撤回しても心理的な効果は消えない。低い数字は、より高い数字が存在する限り採用されにくい。市場に一つでも高い数字が投入されれば、売主の参照点はそちらへ動く。

5.3 査定額という語が指すもの

さらに、査定額という同じ語が、提示者の立場によって異なる意味を持つ点に注意しなければならない。媒介を前提とする査定額は、市場で目指す目標額である。この場合、低く見積もることに提示者の利益はない。一方、自社が買主となる買取の査定額は、自社が支払う金額である。この場合は、低く見積もるほど提示者の利益が増える。

誘因の向きが正反対であるにもかかわらず、売主が受け取る言葉はどちらも査定額である。売主が最初にすべきことは、金額の比較ではなく、その数字がどちらの意味なのかを確かめることである。当社は自社で買い取る事業を持たないため、当社の査定額は前者の意味しか持たない。買取という売り方そのものを否定してはいない。事情によっては買取が最も合理的な選択になることもある。当社が率先して行わないのは、その取引の買主を自ら務めることである。

5.4 法が求めているのは金額ではなく根拠である

この問題に対して、制度は一つの手当てを置いている。宅地建物取引業法第34条の2は、媒介契約に際して宅地建物取引業者が価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めている。金額の水準を規制しているのではなく、根拠の開示を義務づけている点が重要である。

この規定は、本節で述べた誘因の問題に対する制度的な対処として読める。金額そのものを比較する限り、高い数字が有利になる競争は避けられない。しかし根拠を並べて比較するなら、どの事例を採り、どのような補正を加え、どれだけの期間を前提としたかが見える。比較の対象を金額から根拠へ移すことが、法の趣旨に沿った使い方である。

註:根拠の明示義務は書面の交付までは求めていないが、売主の側から書面で示すよう求めることは妨げられない。口頭で示された数字は記録に残らず、後から前提を確認することもできない。

6. 予想される反論への応答

ここまでの議論に対しては、いくつかの反論が想定される。本節ではそれらを四つに整理し、順に応答する。反論はいずれも一定の説得力を持っており、退けきれない部分については、その旨を述べる。

6.1 「金額が大きいのだから、人は慎重に考えるはずだ」

第一の反論は、掛け金の大きさに関するものである。実験室でのアンカリング研究は、被験者にとって重要度の低い課題を用いることが多い。数千万円が動く判断であれば、人は熟慮し、偏りは消えるのではないか。

これに対する応答は二つある。第一に、ノースクラフト=ニール(1987)が用いたのは実際の住宅であり、被験者には実務家が含まれていた。職業上の判断としてなされた評価においても、アンカーの影響が観測されている。第二に、掛け金が大きいことは、判断の難しさをも意味する。難しく、確信が持てず、比較対象が乏しい判断ほど、人は手近な数字に頼る。掛け金の大きさが偏りを打ち消す方向に働くとは限らない。

ただし、この反論のうち退けきれない部分がある。実験と実務では、判断の回数も、他者からの助言も、修正の機会も異なる。掛け金の大きい実務における偏りの大きさが、実験室のそれと同程度であると主張する根拠は本稿にはない。本稿が主張するのは、偏りがゼロではないこと、そして偏りの方向が予測可能であることまでである。

6.2 「市場が最後に修正するのだから、初期値は問題にならない」

第二の反論は、市場の調整機能に関するものである。売り出し価格が高すぎれば売れず、売れなければ下げる。最終的には市場で成立する水準に収束するのだから、初期値の偏りは一時的なものにすぎないのではないか。

収束するという点は正しい。しかし収束の過程が無償ではないという点で、この反論は不十分である。収束には時間がかかり、その間に掲載期間が伸び、値下げの履歴が蓄積する。第4節で述べたとおり、売り出し直後の最も濃い買主層はすでに通り過ぎている。同じ価格でも、売り出し初日に掲示された場合と、三度の値下げの末に到達した場合とでは、買主が受け取る意味が違う。後者には売り急ぎの推測が付随する。

さらに、市場が薄い地域では調整そのものが働きにくい。年間の成約件数が少なければ、価格に対する反応の情報が集まるまでに時間がかかる。静岡県磐田市は人口およそ16万3千人(2026年7月末現在)の市であり、周辺の町ではさらに市場が薄い。反応が乏しいことが価格が高すぎるためなのか、そもそも買主の母数が小さいためなのかを切り分けるには、都市部より長い観測期間を要する。

根拠の明示
書面にする
検証できる形
偏りを個人の意志で消すことはできない。対処は手順の側に置く。根拠を書面で示させることが最初の一歩になる。

6.3 「高い売り出し価格には合理的な意味がある」

第三の反論は、より本格的なものである。売り出し価格を高めに置くことが、つねに偏りの産物であるとは限らない。物件に固有の価値を高く評価する買主が存在する可能性があるなら、その買主を待つために高い価格を掲げることは、探索の戦略として合理的でありうる。この考え方は探索理論の枠組みで定式化されており、留保価格を高く設定することの利益は理論的に説明できる。

本稿はこの反論を退けない。高い売り出し価格が常に誤りだとは述べていない。問題は水準ではなく由来である、というのが第1節で述べた本稿の立場であった。合理的な探索戦略としての高値と、参照点に縛られた結果としての高値は、外から見れば同じ数字に見える。両者を分けるのは、その価格を選んだ理由が言葉にできるかどうか、そして条件が変わったときに変更できるかどうかである。

検証の方法は単純である。売り出し前に「どのくらいの期間、反応が乏しければ水準を見直すか」を決められるかを問えばよい。合理的な探索戦略であれば、待つ期間と待つ費用は計算に含まれているはずであり、答えられる。参照点に縛られた高値であれば、この問いに答えられない。値下げの検討そのものが損失の想起になるためである。

6.4 「参照点を意識すれば、影響は避けられる」

第四の反論は、認知的な対処に関するものである。自分がアンカーの影響を受けていると知っていれば、その分を割り引いて考えられるのではないか。

この点について、行動経済学の知見はおおむね否定的である。カーネマンは、バイアスの存在を知ることが自分自身の判断を直すことにはつながりにくいと繰り返し述べている。アンカリングの影響は意識の外側で作動するため、内省によって取り除く対象を特定できない。第4節で見たとおり、実務家自身も自分が影響を受けたとは考えていなかった。

したがって対処は、意識ではなく手順の側に置かなければならない。判断の順序をあらかじめ決めておく、比較の対象を金額から根拠へ移す、見直しの時期を数字が出る前に決めておく。いずれも、判断する瞬間の自分に頼らない設計である。次節ではこれを具体的な手順に落とす。

7. 売主の実務への含意

以上の議論を、売主が実際に取れる手順に落とす。設計の原則は一つである。判断する瞬間の自分の意志に頼らず、判断の前に順序と条件を決めておくこと。順序には理由があり、後の工程で使う材料を先の工程で作っておく必要がある。

7.1 査定を頼む前に、自分で参照点を作る

第3節で見たとおり、参照点は最初に目に入った数字から立ち上がる。したがって、査定を依頼する前に、自分で市場側の数字に触れておくことに意味がある。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の不動産取引価格の情報や地価公示の値を地図の上で確認できる。近隣で条件の近い土地・建物がどの水準で取引されてきたかを、自分の目で見ておく。

ここで得られるのは正確な査定額ではない。目的は精度ではなく、順序の確保にある。他人が示す数字より先に自分で幅を持った理解を作っておけば、後から示される一つの数字がそのまま参照点になる事態を避けやすい。

7.2 査定は金額ではなく根拠を比較する

第5節で述べたとおり、金額そのものを比較する限り、高い数字を示した側が有利になる。比較の対象を移す必要がある。複数社に依頼するときは、次の項目を書面で示すよう求める。

  • 比較に用いた成約事例——所在・面積・築年・成約時期を、少なくとも三件
  • その事例から当該物件へ、どの項目でどれだけ補正したか
  • 何か月で売り切ることを前提とした金額か
  • 現況のまま売る前提か、解体や修繕を行う前提か
  • その金額で反応が乏しかった場合に、次に何をどう変えるか

宅地建物取引業法第34条の2は、価額について意見を述べるときの根拠の明示を業者に義務づけている。上の五項目は、その義務の内容を売主の側から具体化したものである。書面で示すことに応じられるかどうかは、それ自体が判断材料になる。根拠を書き残すには手間がかかるため、手間をかけた側とかけていない側が分かれる。

五つめの項目は特に重要である。これは第6節で述べた、合理的な高値と参照点に縛られた高値を分ける問いにあたる。答えられる相手であれば、その査定額は戦略の一部として置かれている。

7.3 価格を見直す日と幅を、売り出す前に決める

値下げの判断が難しいのは、それが損失の確定として経験されるからである。この痛みは、判断の瞬間に強く、事前には弱い。したがって、判断を事前に移す。

具体的には、売り出す前の時点で、見直しの日付と条件を決めて媒介契約の書面に添えておく。たとえば「売り出しから六週間の時点で、内覧が二件に満たなければ水準を見直す」というように、時期・観測する指標・見直しの幅を先に定める。

見直す日を先に決める
手順で回す
残る金額
値下げの痛みは判断の瞬間に最も強い。だから判断を売り出し前に移す。日付と条件を先に決めておく。

この手順には副次的な効果もある。第4節と第6節で述べたとおり、度重なる小刻みな値下げは売り急ぎのシグナルとして買主に読まれる。あらかじめ決めた時期に決めた幅で動かすなら、その動きは切迫の表現にならない。同じ値下げでも、計画に基づくものと追い詰められた末のものとでは、買主が受け取る意味が違う。

7.4 参照点を手取りに置き換える

第3節で見た四つの参照点は、いずれも売買価格という表面の数字である。しかし売主にとって意味があるのは、最終的に手元に残る金額である。売買価格から仲介手数料、印紙、登記費用、測量費、解体費、譲渡所得税を差し引いた残りが、実際に使える金額になる。

参照点を手取りの側に置き直すと、判断の材料が変わる。たとえば解体して更地で売る案と、現況のまま売る案は、売買価格では前者が高く見えても、解体費を差し引けば逆転することがある。売買価格を基準に考えている限り、この逆転は見えない。表面の数字が高い案が、そのまま良い案に見えてしまう。

手取りへの置き換えは、時間の要素も可視化する。半年早く売れることの価値は、固定資産税、管理費、光熱費、火災保険料、そして遠方に住む相続人であれば往復の費用として金額に直せる。これらを数えたうえで、なお高い水準を待つ価値があるかを判断する。時間を費用に直すことは、確率の歪みに対する現実的な対処でもある。

7.5 相続人が複数いる場合の追加の手当て

相続した不動産では、参照点の問題が人数分だけ複雑になる。相続人それぞれが別の経路で別の参照点を持つ。実家に住んでいた相続人は購入時の価格や思い出を、遠方の相続人は相続税評価額を、近隣に住む相続人は近所の伝聞を基準にしていることがある。金額の合意ができないとき、対立の原因が価格そのものではなく参照点の由来の違いにあることは珍しくない。

この場合に有効なのは、金額の交渉を始める前に、各人が何を基準にしているかを口に出して並べることである。基準の由来が違うと分かれば、議論の対象は「いくらが妥当か」から「どの基準を共有するか」へ移る。後者のほうが合意しやすい。手取りの試算を全員で共有することは、この共通の基準を作る作業にあたる。

8. 結論と今後の課題

本稿の問いは、売り出し価格という一つの数字がその後の売却プロセスをどこまで規定するのか、であった。答えは、規定の度合いは大きく、しかもその数字の由来は多くの場合、売主が選んだものではない、というものである。

議論の骨格を要約する。プロスペクト理論によれば、人は結果を水準そのものとしてではなく参照点からの変化として評価し、損失を利得より重く感じる。不動産の売主にとって参照点となるのは、購入時の価格、税務上の評価額、近隣の伝聞、そして最初に見た査定額である。いずれも現在の需給とは独立した由来を持つ。アンカリング研究が示すのは、こうして与えられた出発点から人が十分に離れられないこと、そして専門知識がその効果への免疫にならないことである。

この構造のもとで、売り出し価格の水準は二重の意味を持つ。買主に対しては交渉の起点であり品質の推定材料であるが、売主自身に対しては、以後のあらゆる金額を損失か利得かに分類する原点になる。この後者の役割こそが、価格を動かしにくくしている。値下げは情報の更新ではなく損失の確定として体験され、確率の歪みが「いつか高く買う誰かが現れる」という小さな可能性を過大に見せる。

時間の費用
買主との出会い
残された課題
参照点は水準の問題ではなく由来の問題である。由来を管理できれば、水準の議論は初めて意味を持つ。

したがって実務上の含意は、価格を高くすべきか低くすべきかという水準の議論ではない。参照点の由来を管理することである。査定を受ける前に自分で市場の幅に触れておくこと、複数の査定を金額ではなく根拠で比較すること、見直しの時期と条件を売り出し前に決めておくこと、そして参照点を売買価格から手取りへ置き換えること。いずれも、判断する瞬間の自分に頼らない設計である。

8.1 本稿の限界

限界を三つ記す。第一に、本稿は理論的枠組みによる整理であり、実証分析ではない。個別の取引において参照点がどれだけ価格に効いたかは、事例に即して確かめる必要がある。理論はどこを見ればよいかを示すだけであり、見るのはその物件を前にした当事者の仕事である。

第二に、参照点が形成される過程そのものについて、本稿は経験的な観察に基づく分類を示したにとどまる。四つの経路のうちどれが強く働くかは、売主の属性——自ら購入したのか相続したのか、居住していたのか否か、売却を急ぐ事情があるか——によって変わると考えられるが、その相対的な強さを本稿は特定していない。

第三に、行動経済学の実験結果を日本の不動産取引にそのまま移せるかという問題がある。本稿が参照した古典は主として英語圏で行われた研究であり、取引慣行も制度も異なる。参照点や損失回避という骨格は文化を超えて観測されるとされるが、その大きさや現れ方が同一であるとする根拠を本稿は持たない。

8.2 別稿に投げる論点

本稿から派生する論点のうち、扱いきれなかったものを三つ挙げる。第一は、値下げの意思決定そのものである。本稿は参照点の形成に焦点を当てたが、いったん形成された参照点のもとで値下げがどう遅延するかは、それ自体として扱うに値する。第二は、保有効果である。自分が所有し居住してきた物件を高く評価する傾向は、セイラー(1980)以来の研究群が扱ってきた主題であり、参照点とは別の経路で売り出し価格を押し上げる。

第三は、同じ数字の見せ方が判断を変えるという問題である。トベルスキー=カーネマン(1981)が示したフレーミング効果は、査定書や販売報告の書式そのものが売主の判断を左右しうることを含意する。報告の様式をどう設計すれば売主の判断を歪めずに情報を渡せるかは、実務に直結する設計問題である。

8.3 薄い市場という条件

最後に、地域の条件について述べておく。本稿は参照点とアンカリングの構造を一般的に論じたが、市場の厚みによって働き方は変わる。年間の成約件数が多い都市部では、価格に対する反応が早く集まるため、参照点の誤りは比較的短期間で表面化する。薄い市場ではそうならない。

静岡県磐田市は人口およそ16万3千人、世帯数およそ7万2千(2026年7月末現在)の市であり、住宅地の公示地価は2026年で1平方メートルあたり50,086円、前年比プラス0.16パーセントとされる。大きく上がりも下がりもしない市場である。周辺の周智郡森町では人口はおよそ1万5千9百人(2026年4月1日現在)、土地の相場は平均でおよそ26,900円と、市場はさらに薄い。

こうした地域では、反応の乏しさが価格の高さによるものか、買主の母数の小ささによるものかを切り分けるのに時間がかかる。切り分けられないまま時間が過ぎれば、参照点は修正されないまま維持され、掲載期間だけが伸びる。薄い市場において参照点をどう更新すべきかは、都市部の知見をそのまま持ち込めない論点であり、別稿で改めて論じる。

参考文献

  1. ダニエル・カーネマン/エイモス・トベルスキー(1979)「プロスペクト理論——リスク下における意思決定の分析」
  2. エイモス・トベルスキー/ダニエル・カーネマン(1974)「不確実性下の判断——ヒューリスティクスとバイアス」
  3. エイモス・トベルスキー/ダニエル・カーネマン(1981)「決定のフレーミングと選択の心理学」
  4. エイモス・トベルスキー/ダニエル・カーネマン(1992)「プロスペクト理論の進展——不確実性の累積的表現」
  5. リチャード・セイラー(1980)「消費者選択の実証的理論に向けて」
  6. グレゴリー・B・ノースクラフト/マーガレット・A・ニール(1987)「専門家、素人、そして不動産——物件価格の決定におけるアンカリングと調整の視点」
  7. デイヴィッド・ジェネソーヴ/クリストファー・メイヤー(2001)「損失回避と売主の行動——住宅市場からの証拠」
  8. ハーバート・A・サイモン(1955)「合理的選択の行動モデル」
  9. ダニエル・カーネマン(2011)『ファスト&スロー』(村井章子訳、早川書房、2012)
  10. 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第34条の2(媒介契約と価額の根拠明示)
  11. 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
  12. 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(不動産取引価格情報等)
  13. 国税庁「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」
  14. 磐田市「磐田市の人口 令和8年度」(2026年7月末現在)
富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役 大石 浩之

大石 浩之

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役
宅地建物取引士(静岡県知事 第027186号)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役。宅地建物取引士(静岡県知事 第027186号)。静岡県磐田市見付5789番地1で不動産業を営む。

自社で買い取る事業を持たず、仲介一本で売主の側に立つことを事業の前提に置いている。買主になれば「安く買いたい人」になり、同じ口で価格の妥当性を説明できなくなる、という理由による。買取・買取保証という売り方そのものは否定せず、売主が選んだ場合は買主にならずに複数社の見積もりを比較する立場に回る。

同社は不動産業のほか、磐田市内で介護事業を営む。高齢期の住み替え、施設入居、実家の処分という一連の局面に事業として接してきたことが、本シリーズの問題意識の背景にある。

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